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一月十日 土曜日
ボクは、何処かに送られるようだった。何人かの大人がボクを連れて黒い箱みたいな車にボクを入れた。他の人も乗ってった。車の窓から親を見たけどもう居なかった。まぁいいやと思って窓を見てみるとどんどんボクの知らない世界が通り過ぎて行った。ずっと窓の外を見ていたけどキラキラ光る建物が無くなって来て人も少なくなって来た。つまんなくなってきた時にまたちらほらと建物が見えて来た。「窓を開けてもいい?」と大人に聞くと「いいぞ。」と言われたので窓を開けて頭を出すと少し古そうな大きな建物が見えた。「あれは、なに?」と聞くと「今日から君が住む所だ。」と返してくれた。その建物の前に着くと白い服と黒いズボンの格好をした大人が立っていた。車が着くと降ろされてその大人に渡された。ボクを降ろした大人がその人に向かって「よろしくお願いします。」と言うと「おまかせください。」と返した。すると大人は、車に乗って来た方向に向かって帰って行った。その後白い服を来た人は、ボクの頭に手を置いて前後ろに動かした。「何してるの?」と聞くとその人は驚いた顔をして「撫でているんだよ。」と返したので「へぇ…なんで?」と聞くと「君が来たからだよ。」と返した後「まずは自己紹介からだね。私は、鵜山光忠と言います。この四葉院の院長をしています。皆からは、先生と言われてる。君の名前は?」と聞かれたけどボクは首を横に振って「忘れた。」と応えると鵜山先生は、少し悲しそうな顔をして「そっか……。」と言った後あっと声を上げて「じゃあ、私が君の名前を考えてあげるよ!」と言った。そう言って鵜山先生は「じゃあ、外は寒いし中に入ろっか?」と言って入って見ると中は、僕と同じくらいの子供や年下の子供が色んなところで遊んでいた。それを眺めていると鵜山先生が「君のお部屋に案内するね。」と言って進んで行った。廊下で色んな子が遊んでいる。キョロキョロと見たけどボクの知ってる遊びは無かった。そもそもボクは、遊びをあまり知らない。そんな事をしてるある子供が鵜山先生に走り寄ってきて「先生っ!オリガミでツルさんを作ったんだ!見て!」と言って鵜山先生に見せると「おぉ〜!凄い!上手に折れたね。立派立派!」と明るく返した。するとその子は「でしょ!このツルさんね。お姉ちゃんにおしえてもらったんだよ!いちばんキレイに折れたからはやく見せたくって!」と言うと「嬉しい、ありがとう!こんなに立派なツルを見せてくれて。」と言った後「あげる!」と言って差し出した。先生は「いいの?ありがとう!大切にするよ…。」と言って受け取った。あの子は「じゃあ、また出来たら見せにくるね!」と言って手を振りながら帰って行った。「あの子は、誰?」と先生に聞くと「あぁ、あの子は鼓君って言うんだよ!三年前位にここにやって来た子でね、鼓君も名前が無かったから私が名前を付けたんだよ。鼓君が言っていたお姉ちゃんは、四つ葉ちゃんって言う子であの子より七つ上なんだ。仲良くしてあげてね!」と嬉しそうに答えた。ボクは、「うん」と答えた。しばらく先生と歩いていると引き戸が見えた。どうやらここがボクの部屋になるんだろうと思っていると先生が「今日からこのお部屋が君のお部屋だよ。五時位になったら迎えに来るから。それまでゆっくりしててね。」と言って元来た方向へ帰って行った。部屋に入ってみると一人で過ごすには、十分な広さの部屋だった。入って真っ直ぐ見てみると窓が着けられていてその下に寝台が置かれていた。窓の先には深い緑色の波と薄い青色の和紙の天井が広がっていた。今まで見たことが無い綺麗な世界があった。その世界を見ながら寝台に乗って座った。寝台に横になってみるとふかふかで良い香りがした。こんなのは、初めてだ。身体全体を寝台の布団に預けても痛くないし、寒くないし、冷たくも無かった。眠くなってそのまま寝た。
誰かに揺さぶられて目を開けると鵜山先生がボクを起こしに来たようだった。「起きて!もう五時だよ。其れに君の名前、決まったよ。」と言われたのでゆっくりと起き上がって先生に向き直った。「鳳花。今日から君の名前は、鳳花だよ!」とボクの頭を撫でながら言った。その後「よし、じゃあ行こうか?これから此処に居る皆と顔合わせだ!」と言ってボクの手を引いて歩いた。鵜山先生は、優しい人と言う種類の人だと何となく思った。しばらく歩いていると先生が立ち止まって「此処が食堂だよ。皆此処で食事をするんだよ。じゃあ、入ろっか?」と言って扉を開けると食堂の机で色んな子が話したりしながらご飯を食べていた。賑やかだった。キョロキョロと周りを見渡していると先生が「はーい!皆ちゅうもーく!」と言った後皆は、少し静かになった。「今日から新しい子がやって来ました。鳳花ちゃんです!皆、仲良くね!」と言った。皆は、様々な返事を返した後、ある子供がボクの方までやって来て「鳳花ちゃん、始めまして!わたしは、すずらん。一緒に座ってご飯食べよ!」とボクの手を引いて小走りで机まで来てボクを椅子に座らせた後どこかに行って何かを持って来てボクの前に置いた。器に見た事無い食べ物が置かれていた。ボクがジィっとそれらを見ているとすずらんが「どうしたの?食べないの?」と聞かれたので「食べていいの?」と聞くと「食べていいんだよ!」と言われたので箸を持って食べようとすると先生が横にやって来て「器を片手で持って食べるんだよ。」と言ってくれたので器を片手で持ってもうひとつ片手で箸を持って食べてみた。驚いた。温かいし、優しい味がしたから。「美味しい?」と聞かれたから「うん。」と答えた。こういう時は、美味しいと言うんだと思った。すずらんと先生がボクの横に座って食べ物を食べていた。ボクは、美味しい美味しいと思い乍もくもくと食べた。食べ終わっても温かさが残っていた。他の子達もたべおわったらしく手を合わせて何か言った後で器を下げて行った。ボクも見よう見真似をしたが何を言っていたのか分からないので手を合わせた形で固まって居ると横に座ったすずらんが「どうしたの?」と聞かれたから「手を合わせた後、何を言ったらいいのかなって…。」と言うと「あぁ!手を合わせてごちそうさまでしたって言うんだよ。食べる前は、いただきますって言うんだよ。」と教えてくれた後ですずらんも手を合わせて「一緒に言お?」と言うみたいに笑ったからこくりと頭を縦に振って二人で「ごちそうさまでした!」と声を合わせて言った後、器達を片付けてすずらんと別れて先生が付いてきてくれた。先生が自分の部屋に入って来て「どうだった?皆と仲良く出来そうかい?」と聞かれたから「はい。」と返した。「あの先生、聞きたいことがあるんですが?」と聞くと「あぁ、敬語は使わなくていいよ。」と言ってくれたから「分かった。」と言った後「先生に聞きたい事はね、この窓から見える緑色の波と青色の和紙の天井は、なに?」と聞くと先生は「緑の波…山の事かな?和紙の天井は、空の事かな?それにしても綺麗な表現をするね!鳳花は、それらを今迄見た事あるのかい?」と聞かれて頭を傾けて「いつ見て聞いたのか忘れた。けど、知ってるものと知らないものが半分半分で。」と返すと先生は、不思議そうな顔をした。「また知りたい事が出来たら何時でも聞いてね。」と優しい顔で返して頭を撫でてくれた。その後先生がボクを持って寝台の上に乗せて「さっそく今の空について少し教えるね。」窓の外を指差して言った。「今空は、夜になっているから今の空の色は、海と言われる場所の深い所の色に似ていてその上にある散りばめられた硝子は、星と言うものでね、夜の上に浮かぶものが月という星なんだよ!」と言って説明してくれた。説明をしてる先生の顔は、とても楽しそうな顔に見えた。その顔と窓から見える空を見上げながら先生の説明を聞いた。初めて知った事がいっぱいだ。説明が終わって先生が「聞いてくれてありがとう。今日は、ゆっくり休んでね。おやすみなさい。」と言って部屋を出た。その後布団に入って横になってみた。本当に温かい。安心する感じがした。今までなかったなぁ。初めてだらけだ。