-雪斗side-
約1年前。
その日は梅雨入りで、土砂降りの雨だった。
中学3年生だった僕らは、いつものように学校が終わり蒼と家に帰っていた。
蒼「雪、お前中間テスト大丈夫なん?」
雪「大丈夫やと思とん?ってか蒼、このあいだ開けたピアス穴、大丈夫か?痛ないか?」
蒼「ちゃんと消毒してんで、へーき」
しょーもない会話をしながら。
雨が傘に当たってうるさい。
水たまりを頑張って避けるが、どうしても水飛沫が飛ぶ。
家に帰ると、お母さんも帰ってきたばかりなのか、ずぶ濡れで玄関に立ってた。
母「蒼、雪斗。琴ちゃんから郵便届いてんで。何やろな?」
濡れた手でお母さんが僕らに郵便物を渡してくる。
それを受け取り、僕らは2階の自分の部屋で開けてみることにした。
琴は僕らのいとこ。小さい頃から仲が良いけど、遠いから夏休みと冬休みくらいしか会えない。
早速郵便物を開封してみる。
そこには三角形のチャームがついたネックレス。
と1通の手紙。
「雪くんへ。
お誕生日、おめでとう。プレゼント遅くなっちゃってごめんね!許してちょ。
今度会う時は夏休みかな?楽しみにしてるね!ぜひともそのネックレスをつけてきて、きっと似合うから!
琴より」
僕らの誕生日は5月27日。確かに少し遅れた誕生日プレゼントだった。
でも別に僕ら連絡手段あるんやから、手紙じゃなくてもいいのにな。
蒼「なぁ雪、俺このピアスだった。琴って俺がピアス開けてんの知ってたっけ?」
雪「あーそれ僕が琴に言うたんよ」
蒼「ふーん」
雪「次、琴と会うのは夏休みかぁ。キャンプでも行きたない?」
蒼「受験あんねん俺らは。てか琴も。勉強会やな。琴に英語教えてもらえ」
2人で話しているとお母さんが割り込んできた。
母「誕生日プレゼントもろたん?ちゃんとお礼の電話しときや〜」
電話、するか。
スマホで琴に無料通話を発信してみる。
3コール目くらいで琴は出た。
琴「はいはいもしもし〜」
雪「僕ら双子からの電話やでぇ」
琴「わかってますでぇ」
蒼「琴、誕プレありがとなぁ」
琴「絶対あんたら2人に似合うから!それで女の子にモテまくり!良かったね!」
雪「好きでもないやつにモテても嬉しくないねん」
蒼「まぁ、でも、大切にする」
琴「大切に、してね」
次の日、琴は学校の屋上から飛び降りた。
自殺だった。