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📖 第十七章:「広がる噂」
翌日。
朝の教室は、いつもよりざわついていた。
黒板に朝の連絡事項が書かれている間も、生徒たちはちらちらと互いの視線を交わしていた。
男子 A:「なあ、昨日さ……見た?」
男子 B:「マジで? 冴が○○に?」
女子 C:「やばくない? 付き合ってんのかな、あれ」
○○は自分の席に座っているものの、視線は床に落ちていた。
昨日の放課後の出来事――冴が無意識に答えてしまった“ああ”――それが一晩で、学校中に広まったのだ。
○○:(なんでこんな……)
心臓がざわつき、体が小さく震える。
教室の後ろから、男子たちのざわめきが聞こえる。
男子A:「ねえねえ、最近さ、冴と○○、距離近すぎじゃね?」
男子B:「それな?、 キスするんじゃないかってくらいさ」
○○の頬が赤くなる。
誰もが見ている――そんな錯覚に陥る。
そのとき、教室のドアが開いた。
冴が入ってきた。
無表情。
だが、いつもより少し早い足取りで、そそくさと自分の席に座る。
周りの生徒たちはざわめきを抑えられず、囁き合う。
女子 A:「見て見て、冴の顔、ちょっと赤くない?」
女子 B:「うわ、恥ずかしそう……」
○○は視線を上げられず、心臓の鼓動だけが耳に響く。
昼休み。
廊下に出ると、噂はさらに加速していた。
誰もが二人の存在を注視し、囁きが追いかけてくる。
男子 A:「おい、昨日の“ああ”ってマジなの?」
女子 B:「絶対そうでしょ、あんな言い方……」
○○は息をひそめ、できるだけ目立たないように歩く。
でも、視線を逸らしても、どこからか聞こえる声に胸が締め付けられる。
放課後。
校門前。
友達が集まり、スマホを見せ合う。
生徒 A:「昨日の放課後の瞬間、撮られてる……?」
生徒 B:「え、SNSで回ってる!」
○○は慌ててスマホを確認するが、既に拡散されていた写真や噂のコメントの洪水に圧倒される。
その時。
冴が現れる。
○○の横をすり抜けるように歩きながら、
低く小さな声で──
冴:「……気にすんな」
○○は顔を上げる。
冴の視線はあくまで冷静だが、その声にはほんの少しだけ温度が含まれている。
その瞬間、周囲のざわめきが少しだけ遠のいたような気がした。
○○:「でも、もう……学校中に……」
冴:「……関係ない」
無言のまま、二人は一緒に歩き出す。
廊下の端で、誰かがささやく。
生徒 A:「ねえ、あれって……付き合ってるんじゃない?」
生徒 B:「絶対そうだよ……だって昨日のー」
噂は止まらない。
でも、二人だけの世界――ほんのわずかに
だが、確かにそこには存在していた。
○○の心の中で、昨日の冴の一言が繰り返される。
“
ああ”──否定も説明もない、その一言。
冴の存在は、変わらず冷たく、でも確実に○○を守ってくれている。
それだけで、○○は少しだけ安心した。
夕焼けの光が校舎を染める頃。
教室のざわめきも、廊下の噂も、二人の間
には届かない。
小さく息をつき、○○は心の中で呟く。
○○:(これから……どうなるんだろう)
END
コメント
1件
もう付き合っちゃえよ