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早速ャオの煽r…お気遣い()が使われてる…と思えば最後のやつ何や、1万??何でそんなに書けるんですかそんな語彙力無いです…分けて下さい…:( ;˙꒳˙;):
大変お待たせ致しました!
…いやぁ……約2ヶ月と2週間くらい…ですかね?
ホンマ……申し訳ないです。
長話もあれなんでね
では、どうぞ……
縺輔∩縺励>
縺輔∩縺励>
縺輔∩縺励>
縺?繧後°
「どうしたんですか?」
やっと
やっときづいてくれた
うまれたときからひとりぼっちだった
だれもおれにきづいてくれない
はなしかけても
めのまえにいても
だれもきづかない
にんげんみたいなからだがあったらなかよくしてもらえるかもとおもって
ふわふわのこーととかわいいぼうりんぐだまでからだをつくった
けどこんどはこわがられて
みんなにげていってしまった
なんで
さみしい
さみしい
さみしい
そうおもっていたとき
「大丈夫ですか?」
あのひとはおれにきづいてくれた
やさしいひとのなまえは、エーミール
エーミールはおれのことがみえたし、ことばもわかった
うれしかった
ずっとひとりだったから
はじめて、あったかいとおもった
エミさんはおれがいろんなヒトとなかよくできるように、ニンゲンのことばをおしえてくれた。
おれの名前は、ヒトごではつおんすると
ゾムと言うらしい
エーミールはやさしかった
オレが言葉をまちがえても、うまく話せなくてもおこったりはしないし、おいしいゴハンをくれた
ホントウはゴハンを食べなくてもイイけど、エーミールと食べるゴハンはすごくおいしかった
エミさんはとてもかしこくて、市長ひしょをやっているらしい
ひしょと言うのはお手伝いさんのようなものだと、エミさんが教えてくれた。
それから、エミさんには家族がいて
弟のトントンと、血のつながってない息子が3人。ウツとシャオロンとショッピって言うのが居るらしい。
エミさんは家族の事が大好きで、家族の事を話す時はとても楽しそうで、じまん気に話す。
オレには家族がいないから、うらやましいと思ったのと
エミさんが家族の話をして笑うたびに、なんとも言えないモヤモヤが心にはりついて、楽しくないキモチになった。
このキモチも、エミさんに聞いたらなんなのか分かるのかもしれないけど、どうしてか聞く気になれなかった。
エミさん
大好きなエミさん
エミさんに色んなことを教わるうちに、おれはとあることに気がついた。
エミさんからほかの種族の気配がするのだ。
エミさんの家族のとも、市長って奴のともちがう。
本当にうっすら
でもこびり付くような気配
種族が何かはわからないが、けして良い気配では無い。
吐き気がする様な、そんな気配
一度、我慢できずにその気配の事をエミさんに話したことがある。
そしたら、
「…やっぱり、消えてへんかったかぁ」
エミさんはそう言って、悲しそうに笑った。
『悲しそうに』
きっと、あの気配の奴はエミさんに嫌なことしたんや
ナニをしたかは知らんけど
多分それは間違いない
ふつふつと
無いはずの腸が煮えくり返る様な感覚がして
やけに視界が冴えていた。
誰かを傷つけるのはいけないこと
エミさんが最初に教えてくれたことで、絶対に守らないといけないルール
でも
しょうがない
これは
エミさんの
エーミールの為だから
その気配の根源は案外簡単に見つかった。
みすぼらしい格好で、性格の悪そうなカオをした異種族の男だった。
その男は声が大きくてうるさかった。
「化け物」だの「なりぞこない」だの、メチャクチャな事を言って騒ぎ散らしていた。
こーんな可愛いボウリング玉にフワフワなコート着てるんやで?
可愛くないわけないやろ
少なくともエミさんはいつも褒めてくれるもん!
エミさんが皆をびっくりさせちゃうから、なるべく隠しておくようにと言われたけど、コイツはまぁ…ええよな
ドロリ
零れた俺の細胞が地面に染み込んで、意志を持って動き出す
それを見た男は血相を変えて走って逃げて行った。
でもそんなんじゃ意味は無い
地面の細胞が『影を掴んで』男の動きをとめて、ピタリと動かなくなった男にゆっくりと近付く。
「ヒッ…!!いっ、嫌だ!っ来るな!!来るなっ!バケモノが……っ!…っあ……た、頼む!助けてくれ!!」
「ンー、ちょっとうっさいわ」
影の中で男の首を絞める
「っガ、はっ……ぁ”!?」
「お、お前みたいなんの気配するだけで、ぃ、イライラすんねん。やから」
ズルり
男を影に引きずり込む
あーあ、ビビり過ぎて声も出てへんわ。カワイソウニ
「ゴミはちゃんと処分しなさい…って、エミさんが教えてくれたもん」
ゴミは塵になって消えりゃいい
これできっと、エミさんの気配も消えるやろ。
明日は、何教えてもらおかな♪
「エーミさん!」
「うわっあぁッ⁉︎……ぞ、ゾムさん…驚かせんといてくださいよ…」
「んふふ、エミさんが鈍いだけやろ」
「酷くない?」
いつものように眉を下げて困ったように笑うエミさん
あぁ、好き
好き
大好き
そんなことを考えていると、急にエミさんが気まずそうな顔をして目を逸らした。
「…あ〜、そういえば、ゾムさん」
「ん?どうしたん?」
「えーっとですねぇ…そのぉ……」
ゴニョゴニョと口籠るエミさんに無言で先を促すと、エミさんが口を開いた。
「その、ね?ちょっとガバって弟にゾムさんのことがバレっちゃったって言うか…息子らも知ってるっぽくて……今すっごい詰められてるんですよねぇ…」
「マジか」
マジか
「ほんでトントン…弟がですね?『その人外を連れて来い』って般若みたいな顔でキレてて…」
「そんな娘の彼氏絶対殺すマンの父親みたいな」
「いやほんまに…しかも何でか息子らもそんな感じで…」
「SEK○Mやんけ」
「みんな過保護過ぎるんですよ…最年長やのに……」
俺そんな頼りない?…と肩を落とすエミさんを見て、弟達の気持ちはめちゃくちゃ解るけどな、と心の中で独言る。
まぁ、でも
俺とエミさんを引き剥がす気なら
その時は…
どろりと流動性を持つナカミが、ボウリング玉の中で波打つ
俺が人間なら、きっとエグい顔してるんやろうな
〜〜〜で…やから、これから時間あります?」
「はっ、え?ごめんエミさん、なんて?」
あかんあかん、ぼーっとしてた。
人の話はしっかり聞くようにって教えてもらったのに
「大丈夫ですかゾムさん…え〜、まぁ…家で弟達が待ち構えてるんで、時間あるならこれから家に来てもらって、誤解といてほしいなぁ…なんて」
「えっ、エミさん家行ってええん!?」
「もうバレてもうたからね…」
「いっ、行きたい!」
「ほんまぁ?ありがとうねゾムさん」
よっっっっっしゃあ‼︎
思わぬ転機についついテンションが上がる
今までは家族にバレるとややこしいからと、エミさんの家に行ったことは無かった。
好きな奴の家に行きたくない漢なんて居るわけがないのだ
まぁ、少し残念な形になってしまったが。
「はぁ〜……大丈夫やろか…」
「まぁまぁ、僕が頑張って弟君ら説得しますやん」
「う〜ん…あ、ここです」
エミさんの家はかなり立派な一軒家で、ガレージには車も停まっていた
(えっと、エミさんと弟君と息子君らで5人かぁ…賑やかそうやなぁ)
俺も、エミさんと暮らせたらなぁ
羨ましいなぁ
ピンポーン
気の抜けた音が鳴る
エミさんはちょっと緊張してるみたいで、深呼吸をしていた。
ガチャリ
ドアが開いて、誰かが出てくる
ハッと、息を呑んだ
「おかえり、兄さん…ほんでそれが『ゾム』か」
「もー、それとか言わんの!あ、ゾムさん、こちら弟のトントン…ゾムさん?」
コイツ
「……き」
「き?」
コイツ…!
「寄生種やんけぇぇぇぇッッッ‼︎‼︎‼︎‼︎!!!」
「はあぁ⁉︎ちゃうわッ‼︎‼︎一緒にすんな!!‼︎」
「嘘つけぇ‼︎がっつりキノコ生えとるやん‼︎」
「はあぁぁぁ⁉︎キレそう!おいまいたけ起きろ‼︎」
「ヤバいって、異常者やん。エミさん逃げるで!」
「あ、えっとゾムさん違くて…と、トントンも落ち着いて…」
エミさんの弟を名乗る寄生種と言い争っていると、焦ってオロオロとするエミさんに止められ、「とにかく」と家に上げてくれた。
中に入るとリビングに通されて、そこにはソファを陣取る3人の男と街のポスターでよく見る青いひよこ(?)が居た。
それを見るとエミさんが
「えっ、し、市長⁉︎なんで家にいはるんですか⁉︎」
「えっ⁉︎こ、コイツが市長なん⁉︎」
てっきり宣伝用のマスコットか何かかと思っていたのだが…
すると
「はぇ〜、えらい世間知らずなんすね。この街でねこひよこさん知らん人がおるとは…」
「バントのサインでホームラン打ちそう(^O^)」
「あ“ぁん?」
そう言ってニヤニヤとゲスい笑みを浮かべる紫のと黄色いの
なんやねんこの生意気なガキは‼︎ホンマにエミさんの息子なんかよ⁉︎
「ピー君もシャオちゃんもそんな煽らんの、トントンが事情説明したら心配やからって来てくれてん。いや〜、市長かわい〜♡」
「は、え?し、市長、お仕事どうしたんですか…?」
『……』フイッ
「市長ぉ〜っ‼︎」
気まづげに視線を逸らす青いひよこ(?)と、ガックリと肩を落として咎めるような視線を向けるエミさん
ポン、と肩に手を置かれる
「まぁまぁ、とりま座ってもろて…色々聞きたいこともあるんで」
ニッコリと貼り付けたような笑みを浮かべるエーミールの弟…基トントンに促され着席する。
横にはエミさん、目の前にはトントンと3人息子のウツ、シャオロン、ショッピ、そしてねこひよこ市長が鎮座する。
4人と1匹の品定めをするかのような警戒を含んだ視線に、少しだけ無いはずの背筋が伸びる気がした。
「……なんか就活時代の面接思い出すわぁ」
「父さんは別にこっち座ったらええやないですか」
「なんか比率変やん」
「そこ?」
コントの様な会話が続く中、長男らしい青色のガキ…基ウツがバッと高らかに手を挙げた
「先鋒ウツ行かせて頂きます!そもそもアンタ種族なんなん?」
「…え?」
「「「「え?」」」」
「あー、そう言えばゾムさんの種族しらんわ」
しばしの沈黙
「はあぁぁぁぁあ!!!?」
「うせやろ!?」
「マジすか…」
「ええぇぇえ…??」
「…え?なんの種族なんですかゾムさん」
「え…?いや、知らん……」
自分の種族なんて考えたこと無かったし…
「えぇ〜…知らんかったんや」
「ちょっ、ヤバいって父ちゃん」
「もうちょっと警戒心持とうぜ親父ぃ!!」
「エグいって…父さん今までよく生きてたな」
「縁起でもないからやめぃショッピ」
「ちょっ、市長!市長は解ります?」
エミさんがねこひよこに話を振ると、少しばかり考える素振りを見せてから、ぴょんぴょんと器用に机を飛び越え、エミさんの手のひらに着地した。
は?ずっる
……いやっ!まぁ、俺もよくエミさんに頭磨いてもらってるもん!!
『…、……!』
「はぇ〜…えっと、まぁ、概念種の亜種か、全くの新種じゃないかって事らしいです。いや〜、概念種ってかなり希少なんやけど…私も何回かしかお会いしたことないし」
「概念種〜!?エグいやん…しかも新種て……」
「ヤバ、ウケる」
「概念種の中のなんなん?自然種?感情種?」
「見た感じ自然種ちゃう…?知らんけど」
「え、エミさん、がいねんしゅって何?」
「え〜と、概念種って言うのは異種族の分類のひとつで、自然現象とか、人間の感情とかの『概念』から産まれるんですね?数は少ないんですけど一人一人の力は強力で、その実個体差が激しいらしいです。」
「個体差?」
「人間とか他種族に友好的かとか害があるかとかですね。ゾムさんは友好的やし、害もなさそうやからなぁ……なんの概念なんでしょうねぇ」
うーん、と人差し指を頬に当て首を傾げるエミさんにキュンとする。あざと過ぎん?
かわよ
「…あっ、そう言えばゾムさん影操れますよね」
「影ぇ?」
「ベタなんやと闇とかか?」
「でも新種なんやろ?」
「亜種かもって言ってた気ぃするけど」
ちょっと考えて、とりあえず見せた方が早いと言う結論に至り、ドロリと細胞を出して床に零して動かしてみる
「うおっ!?何しとんねん!!」
「見せた方が早いやろ?」
「うっわぁ…動いてるぅ……」
「市長なんか解ります?」
『………!!』
またぴょんと跳ねてエミさんに何かを伝えているような素振りをするねこひよこと、それをじっと見つめるその他
なんとも言えない空気が部屋に籠る
「ふむ……市長が言うには、『反』の概念から産まれたのでは無いか、らしいです。」
「『反』?」
「この世界のありとあらゆる『反対』、それらを操ったりできるんじゃないかと。極端なのだと生の反対の死とか?」
しばしの沈もk…あれなんかデジャヴ……
「はあぁぁぁぁあ!!!?」
「はちゃめちゃに危ないやんけぇッ‼︎?」
「流石にそれはあかんって父さんっ‼︎」
「もうちょっと危機感持とうぜ親父ぃ‼︎(泣)」
てんやわんや…阿鼻叫喚と言うのかこの状況は
エミさんの家族が騒ぐのを見て、俺とエミさんはお互いの顔を見合ってキョトンと首を傾げる。
よかった、エミさんも理解できてへんみたいや。セーフ(?)
「えっと…どうしたん四人とも……」
「どうしたちゃうわこのドアホ!!!!!」
「ええぇぇ⁉︎なんでぇ⁉︎」
「今回ばっかは擁護できんて…」
突然怒られて驚いてるエーミール
怒られてるエミさんはレアやな…新スチル!
なんて呑気に考えていたら、衝撃的な言葉が聞こえてきた。
「下手したら死んでたかも知れんねんぞ!!」
「えっ!?」
「いや…ちゃんと気はつけてたし……」
『…!……!!』
エミさんが死んでいたかも知れない
その一言で頭が真っ白になった。
「なっ、死んでたかもしれんってどう言うこと⁉︎」
「自分の能力の危険性も理解してない異種族…それも概念種なんかが不用意に人間に近づいて、万が一能力が暴発したらそれこそ人間なんか一撃でおじゃんや」
「威力が低くても、能力が確認されてないモンやったら回復系の力があったとしても処置が遅れるかもしれんし」
「無自覚で発動するタイプの能力なら、知らん間に原因も解らんまま衰弱死…とかもあり得るっすね」
「俺のチームメイトにも能力暴発事故で大怪我して引退したヤツおるわ…」
衝撃的な言葉がさらに続く
知らなかったと言えどエミさんを危険に晒していたのだ。ヤバい
どうしよう
どうしよう
嫌われる
エミさんに
エーミールに
きらわれてしまう
「え、えみさ…ごめん、お、おれそんなつもりなくて、わ、わざとじゃ…」
「ゾムさん?大丈夫ですから、ね?」
「ごめ、ごめんなさ、おねがいやから…きらわんとって……」
「嫌いになんてなりませんよ…ほら、ね!俺ピンピンしとるし!」
エミさんがぽんぽんと背中を撫でてくれる
「え、エミさん…し、死なへん…?」
「死にませんよぉ、市長が定期的にお清めもしてくれてますし!」
ね、市長、とエミさんがねこひよこに話しかけると、フンスと誇らしげな顔をしてぴょんぴょんと跳ねる。
…なんかコイツ、クセになる可愛さしてんな
まぁ、エミさんには到底敵わんけどな‼︎
すると
『おォ!寝とったらおもろい事なってるやん。今度は概念種かいエミさん!』
「喋んなカス」
「ずいぶん長いお昼寝でしたねまいたけさん、おはよう」
『はいおはよォさん、トントン水くれ』
「無理」
『おォん?』
「喧嘩しない!」
突然寄生種に生えているキノコが喋り出した。
どうやら寄生種の本体はあのキノコで人間部分は本当にエミさんの兄弟らしい
「…ホンマにエミさんの弟やったんや……」
「まだ疑ってたんですか⁉︎」
『お!なァ聞いてくれよ概念種の!』
「ゾムや俺は!」
『ゾムな、傑作やねんコイツら!全員なっがいこと拗らs』
ゾワリ
背中に冷や汗が伝うような気配…いや殺気を感じた
思わずエミさんを庇うようにして構えれば、その殺気はトントンと三兄弟達から放たれていた。
「今すぐお前を引っこ抜いてやってもええねんぞ」
「ちょ〜っと失言が過ぎるでまいたけさん」
「最近鳩の餌のコストダウン悩んでたんすよねぇ」
「俺も!ボールのコントロール練習に的欲しかってんな!」
『あっはァ!血気盛んやなァ!」
淡々と進む問答にポカンとしていたら、また空気がピリピリとしだした。
すると
「皆、なんの話しとるん?」
鶴の一声…にしては威厳がないからインコの一声と名付けよう。
ほけほけと気の抜けるようなエミさんの発言に四人とも毒気を抜かれたようで、揃って「はぁ〜」と深いため息を吐いた。
「…え?俺なんかあかん事言った?」
「いや…なんでもないで兄さん」
「騒いですまんな父さん」
「ちょっと熱なってもうたわ、ごめんな父ちゃん」
「俺も。ごめんなさい父さん」
「えぇ…?なんで謝ってるん…?」
『んははっ!相変わらずエミさんに弱いなオマエら!」
「「「「五月蝿い」」」」
ピッタリと揃った声に
あぁ、コイツらにとっても、エーミールは『トクベツ』な存在なんだと悟った。
『家族』であろうと、変わらないのだな
こういう人のことなんて言うんやろ?『ヒトタラシ』やっけ?
今度、エミさんに聞いてみよ
そんなこんなでその日はそのままお開きになった
エミさんが晩飯に誘ってくれたけど、後ろの四人と一緒だとややこしそうなので渋々ではあるが断った
俺が飯の誘いを断るなんてそうそう無いからエミさんは心配そうにしていた。
「ほななエミさん!また来るわ」
「はい!いつも誰かしら居るのでいつでも来てくださいね」
「いつでもはやめぇ」
にこやかに見送ってくれるエミさんと釘を刺してくるトントン
三兄弟はリビングで何かガヤガヤと騒いでいるようだ。
「……兄さん、俺途中まで送って来るわ」
「「え?」」
思わぬ申し出に二人揃って声を上げる
「んえぇ…え〜っと…」
「まぁまぁまぁ、遠慮せんでくださいよ。」
「それやったら俺も行こうか?」
「いやぁ?兄さんはええよ、もう暗いし」
「でも…」
「ほら、アイツ等も腹減っとるやろし…あと、ちょっと話したい事あんねん」
話したいこと?
なんやろ…嫌な予感しかせんのやけど……
「あぁ、そっか、じゃあ気ぃつけてね」
「ん、ほな行きましょか『ゾムさん』?」
「お、おう…」
エミさんの家を出てしばらく歩くが、俺もトントンも一言も発さず、気まずい雰囲気が充満する
言葉を発していいのかすら分からない
すると突然、トントンが足を止めた。
思わず振り返って声をかけた
「…ぁ、あのぉ、どうしたんすか、?」
「……」
声をかけても何も言わない
ただこちらをじぃ…っと見つめて、赤みがかった茶色の瞳をギラつかせている
まいたけと呼ばれた寄生種はまた寝こけているらしい。
「……アンタが、兄さんを傷つける気がないんは解った。」
「!、じゃあ…!」
「でも」
ギラリと目が、瞳が光る。
真っ赤な、例えるなら血液のような色
確かに人間である筈なのに、なぜか未知の生物と接触したような錯覚に襲われる。
「異種族である以上、そう易々と兄さんに…エーミールに近づける訳には行かん」
「っな!なんでや⁉︎」
「なんでもや。俺はもう二度とエーミールを危険に晒したくない」
「…『二度と』って、どういう」
「俺はもう市長以外の異種族は信用してへん。もちろんお前もな」
「……、」
強い恨みと憤りをあらわにしたトントンに何も言えなくなる
いや、それよりも
エミさんに、エーミールに何があったのか
その事に頭の中を支配される。
「…な、にが……エミさんに…何が、あったん…?」
「…さぁな、アンタにエーミールから話すようになるまで信用されたら態度も考えたるわ」
エミさんに、隠し事をされていた
それも少なからずショックだが、トントンの異種族嫌いから、エミさんに何かをしたのは多分異種族なんだろう。
あ
もしかして
『アイツ』
あの
みすぼらしい、性格の悪そうなカオの…
「…せいぜい、気をつけろよ」
「…っ、は」
「エーミールになんかしたら」
殺すからな
そう言ってトントンは体を翻し、歩いて来た道を戻って行った。
俺は、多分、本当に死ぬことはないけれど
なぜか
本当に殺されてしまう様な気がした。
この出来事から数年
「おっ邪魔しまーす!」
「あ、ゾムさん!いらっしゃい」
「あれ、アイツらは?」
「3人は大学ですね、単位がヤバいらしくて…トントンは市長に呼び出されたらしいです」
「はぇ〜」
珍しい
エミさんが家に一人なんて滅多に無いだろう。
最近は三兄弟やトントンの警戒を解すことに成功したので、最初のような警戒心バッチバチの目を向けられることはなくなった。
攻略成功⭐︎
「せっかくですしご飯食べていきます?」
「うん!食べる!」
二人きりの飯は久しぶりだ
前よりマシになったとは言えまだ警戒はされているらしく、大抵は着けて回られているからだ
俺の想いも勘付かれているようで、四人から釘を刺されている。
だから、まだエミさんに告白はしていない
多分想いを伝えたその瞬間にトントン、三兄弟、ねこひよこ市長から何かしら制裁を喰らうことは目に見えているし
最悪死ななかったとてエミさんから引き離されてしまうだろう。
だから、もう少し
今の関係のまま…トモダチのままでいよう
自分が異端であると言う、どうしよもない寂しさを抱えたまま
「できましたよ」
「はーい」
相変わらず、エミさんのご飯は美味しい
初めて出会ったあの時から、何も変わらない
あったかい味
「……ん?どしたんエミさん」
「え?あぁ、いやぁ…ね?」
「なんやねんw」
「んふふ…」
ついさっきまで、こちらをじぃっと見つめていたエミさんは目を細めて笑い出す
口元に手を当てて上品に笑うエミさんが、とても綺麗に見えて、無い筈の心臓がドクンと跳ねた。
「なんでも無いんですよ?ただ…」
「ただ?」
聞き返すと、エミさんは微笑みを深めて、優しい声で話し出した
「ほら、私ってあんま友達とか居らんからさ…なんか嬉しいなぁって」
お友達になってくれてありがとうね、ゾムさん
あぁ
あぁ、この人間は
一体、どれだけ夢中にさせれば気が済むのか
ぷしゅう…と音が鳴りそうな程にカオが熱い。思わずカオを両手で覆った
ボウリング玉だから気付かれることはないけれど
「……エミさん」
「うん?」
「俺…説得頑張るわ」
「え、なんの…?まぁ、頑張ってください、応援するから!」
また的外れな返答をするエミさんにモヤつきながらもキュンとしてしまう。
早く、あの四人集を説得しなければ
きっと骨が折れるだろうが、どうしても諦められないのだから仕方ない。
いつか必ず、想いを伝えよう。
異種族と人間という大きな壁はあるが、でも
それでも
「エミさん」
「はい?」
「俺、エミさんのこと大好きやで」
「ほんま?嬉しいわぁ…私もゾムさんのこと大好きですよ」
アイツら全員黙り込ませてしまうくらいに愛してやろう
エーミールが、世界一幸せだと思えるほどに
その時、きっと
この謂れもない寂しさを忘れ去れるような
そんな気がするのだ。
ゾム 年齢不詳[役職不明]
ヤバシティに住まう異種族のうちの一人
概念種と呼ばれる少数種族であり、その中でも自然種、『反』の概念から生まれた存在。
この世のありとあらゆる『反』を操る能力を持つ。
本人はまだ気が付いていないが正の反対は反で、反の反対は正なので、実質この世の全てを意のままに操れるという檄強チート能力である。
生まれたその瞬間から強大なチカラを持ち、実態を持たない概念種であったことから言葉すら理解されず数十年間孤独な日々を送っていた。
しかしある時エーミールに出会い、初めて自分を理解してくれる彼にトクベツな想いを抱くようになる。
エーミールに様々なことを教えてもらい、それと同時に長い間エーミールのオーラに当てられていたためかなり人間に近い思考を持っている。
基本的には穏やかな性格だがエーミールが絡むと少し面倒。他人に対しては厳しい。
人間に対するマイナス感情は全く無くとても友好的でなんだかんだ面倒見がいい。よく猫とか拾う。
トントンと三兄弟が持つエーミールへの想いにも勘付いており、この四人をどう説得するかがここ数年の悩み。
エーミールに受け入れられた暁にはデロデロに甘やかす予定である。
はい、お疲れ様でした〜
今回なんと1話で1万字越えでございます。
最初の長男編の2倍以上!
驚きですね〜(棒)
いやぁ、長かった!
次回からは日常編と言うかね、短めのほんわかなお話も書いていこうと思うのでね、もうちょい投稿ペースあげれると思います!
ではこれにて友人編…もとい拗らせ組編終了になります!
いつかエーミール編と市長編も書こうとは思ってるんでね、気が向いた時に更新されてるか確認しに来てくれたらなと思います。
それでは、また次の作品で……