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Hayato×Jinto
※「隠した相合傘」の2人のその後です
※「隠した相合傘」を先に読まれることを推奨しますがお忙しい方向け あらすじ↓
高校3年生、サッカー部の佐野先輩に憧れてこっそり自分の机に相合傘を書いていた1年生の吉田くん
ひょんな事から佐野先輩と仲良くなり、はやちゃん、仁人と呼び合う仲に
更に色々あって佐野先輩に相合傘がバレ、お付き合いをすることに…的な話でした
Hayato side
大会なんかで忙しいながらも
俺と仁人はほぼ毎日一緒に昼飯を食べ
時々休みの日にも出かけ…
と言っても、俺の受験があるからってもっぱら図書館で
仁人は熱心に読書をしていて
俺は時々そんな仁人を見ながら勉強して
腹が減ったらファストフード店に行って
他愛のない話をして
俺が笑うとつられるように笑う仁人を可愛いな、と思う
変わらないことが幸せだと思う日々を過ごした
ただ、変わらざるを得ないことはやっぱりあって
テストと塾に行く日数が増えて
伸ばしに伸ばしていた進路を決めなくてはならなかった
サッカーは続けたい
サッカーが強い大学なら近くにある
だけど
このまま将来サッカーがしたいのか、また、出来るのかというと多分…
俺は、いつからか漠然とではあるがスポーツトレーナーになりたいな、と思いはじめ
そのために勉強をしてきた
移動するとしたら新幹線を利用する程度には遠いところにあるのが
サッカーも強くて、今の俺に現実的な体育系の大学だった
まだ仁人は高校生、俺もそれなりには忙しくなるだろうことは予想出来る
会える時間なんてとれる気がしない
あいつを置いていきたくない
ギリギリまで、悩んで、悩んで
結局遠い大学に行く事を決意した
決意というには弱い決心だった
仁人はどんな顔をするだろうか
また泣かせてしまうのだろうか
いよいよ言わなければならない時期までさしかかり、帰り道で切り出した
「…俺さ、大学、ここ出るんだ」
「うん」
「スポーツトレーナーに、なろうと思って」
「うん」
仁人は静かに聞いていた
「色々調べて、ちょっと遠いんだけど、」
大学の名前に聞き覚えがあったようで
「ああ…」
と小さく言った
ほんの少しにじんだ寂しさは、これからの簡単には会えなくなる日々を思っての事だろう
仁人は泣かなかった
「…応援してる」
にっこり、ではない複雑な、でも笑顔だった
俺の方が寂しくなって思わず抱き締めた
「こんな可愛いのに、置いてきたくない」
「…寂しくないって言ったら嘘だけど、はやちゃんがこんなに思ってくれてるってわかってるから、だから大丈夫。頑張れるよ」
やっぱりこんなに可愛い仁人を置いていくの、嫌だなぁと思いながら、しばらく抱き締めていた
体育館に紅白の幕が張られ
卒業式、と大きく書かれた看板が門に立てられた
俺は渡された証書と花を持って屋上を目指した
そこにはすでに約束していたその人がいた
「仁人」
名前を呼ぶとくるりと振り返り、前髪の間からのぞく瞳と目があった
「はやちゃん、卒業おめでとう」
「ありがとう 」
定位置に座る
もう、ここに座ることもないのだろう
「 仁人、これお前が持ってて」
「え?」
手渡したのは、第二ボタン
ベタなことをしているという自覚はあり、少々、いや、大分恥ずかしい
「えへへ…いいの?欲しい人、いっぱいいるでしょ」
「それは知らんけど、俺があげたいやつは一人だから」
「…大事にする」
仁人は本当に大事そうに小さなそれを両手で握りしめた
喜んでくれたようでほっとしていると
仁人の瞳からぽとりぽとりと溢れるもので握った手が濡れて光った
「…泣くつもり、なかったのにな…」
綺麗な泣き笑いだった
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