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#溺愛
高瀬船
934
#女性向け
常陸之介寛浩
840
黒猫ている
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#ハッピーエンド
黒猫ている
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アーリック族は、王国とは異なる秩序の中で生きている。爵位に興味など持っておらず、国政には関与していない。その血が外に出ることも快く思っていないだろう。それでも、ロックハート家に養子として預けることを長が許したのは、長年の交易を結んできたおかげだった。
ローゼマリア様は執務室を後にすると、そう話しながら静かな廊下を進んだ。
「……つまり、庶子であるヴィンセント様は、爵位を得ても跡継ぎに選ばれない。直系の次男様がいるため、異を唱える家門もないということですね?」
「ふふふっ、ヴェルヘルミーナは本当に賢いわね」
実に楽しそうに仰られるローゼマリア様は、私を振り返った。
「ヴェルヘルミーナ」
「はい、ローゼマリア様」
「ヴィンセントが私の侯爵を継ぐことはありません。それでもこの結婚は貴女にとって、とても魅力的でしょ?」
全てを見透かしているといわんばかりの笑顔に、鼓動が跳ね上がって息を呑んだ。
「ロックハート侯爵家は有能な魔術師を輩出してきただけでなく、領地は交易によって潤っています」
「……存じ上げています」
「特に本邸のあるシェルオーブは、アデルハイム王国の交易の要」
春と夏、秋に行われるシェルオーブの定期市には、国内外から数多の商人が集まる。さらに両替商や高利貸し、商売や金融に関わる人がこぞって集まり、その活気は王国随一とさえいわれている。
我が家はペンロド公爵夫人の顔もあるため、年三回も出展できずにいるが、できれば三回とも市に出向きたいと領内の商人たちに相談を受けているくらいだ。そこを、ローゼマリア様は察しているのだろう。
つい、ため息をつきそうになると、ふふっと小さな笑い声が聞こえた。
「ペンロド公爵領の商業都市トリメインにも引けを取らないと思ってるのよ」
その名を聞いた瞬間、心臓が跳ねて背筋を汗が伝い落ちた。
どこまで私とレドモンド家の内情を見抜かれているのだろうか。
廊下でふと立ち止まったのローゼマリア様は、一枚の絵に視線を向けた。そこに飾られていたのはアデルハイム王国を中心とした、周辺諸国の地図だ。
「レドモンド家が誇る魔法繊維と織物を、あの銭ゲバに牛耳らせるのは、勿体ないと思いませんか?」
まさかローゼマリア様の口から「銭ゲバ」なんて言葉を聞くとは思わず、きょとんとしてしまった。すると、ローゼマリア様は再び楽しそうに笑った。
「レドモンドの魔法繊維はもっと評価されるべき品でしょ」
「……失礼を承知でお聞きします。ローゼマリア様がこの結婚で望まれているのは、レドモンドの魔法繊維ですか?」
「そうね。でも、それだけではないのよ。レドモンド家だけでなく、ヴェルヘルミーナの手助けをしたいと思っているのよ」
「私の手助け……?」
「ええ、忘れてしまったかしら。私の本心はとっくに伝えましたよ」
まるで謎かけのように仰るローゼマリア様は、再び私の手を引いて歩き出す。
出会ってから、どんなことを言われたかしら。
やっと会えたと喜ばれ、人形遊びよろしく着替えさせられ、ヴィンセント様の出生の秘密を聞かされた。その一連の流れを思い出しながら、私は首を傾げた。
「ふふふっ、こんなに可愛くて賢い子が私の娘になるだなんて、この上ない幸せですよ」
朗らかに微笑みながらおっしゃるローザマリア様は、中庭に面するガラス張りの廊下を指さした。その向こうでは、初夏の花々が咲き誇っていた。
中庭に出るガラス戸を開けると、心地よい風が前髪を揺らして吹き抜ける。
ふわりと香る優しさに、ほっと吐息がこぼれ落ちた。
バラの蔦に彩られる中、カモミールやラベンダーなどのハーブも植えられているのが目についた。風が甘く優しい香りを届けてくれるのは、その花々の芳香なのだろう。
美しい庭園を吹き抜ける風が、隠しきれない不安な気持ちを何もかも持っていってくれるようだった。
心地よさに頬が緩んでいく。ここで穏やかにすごせたらどれほど幸せだろう。
「ヴェルヘルミーナ、とても素敵な笑顔よ。ふふっ、花は好きかしら?」
「え?……はい」
花が嫌いな人なんていないと思うんだけど、そんなに見とれていたのかしら。
少し恥ずかしくなって俯いた時だ。ひときわ強い風が舞い上がり、庭園の中にある美しいモザイクタイルの上に、魔法陣が浮かび上がった。
「ヴェルヘルミーナ様!」
声を上げたのは私の後ろで静かに控えたダリアだった。私たちの前に飛び出した彼女は、魔法陣に向かって身構える。
一瞬、緊張が走った。
でも、ローゼマリア様は特に焦りを見せることもなく、ダリアの肩に手をそっと置いた。
「心配には及びませんよ。お下がりなさい」
穏やかな声に命じられたダリアは、私に視線を送ってきた。
ここはローゼマリア様のお屋敷。従うが筋というものだろう。ダリアに下がるよう促すと、彼女は少しばかり眉間にシワを寄せながら後ろへと下がった。
魔法陣が光り輝き、風が渦巻いた。周囲のバラが煽られ、花びらを舞い上がらせる。その中に、人影が浮かび上がった。
コメント
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美月ゆめか🌸だよ〜!第21話読んだよ〜!😭💕 ローゼマリア様の「銭ゲバ」発言、想像してなくて笑っちゃった!笑 あの優雅な雰囲気の人がまさかあんな言葉を…ってギャップにやられたよ🥺✨ それに最後のバラの庭園に浮かぶ魔法陣、めっちゃドキドキした!!ダリアが警戒して飛び出すシーンもカッコよかったし、人物が浮かび上がるところで「えっ続き!!?」ってなったよ…! ローゼマリア様とヴェルヘルミーナの会話の駆け引きも、二人の関係性の深まりも感じられて、毎回キュンが止まらない作品です!次話も楽しみにしてるね🌸