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こうなるとどうも、ただのアホじゃないというか、何というか……。なにかあったんだろうな、と思ってしまう。
どこで、どんな風に生きてきたのか?
それが分かったら、もう少しわかる気がするんだけどな。
彼が、本当にやりたいことを。
涼の謝罪は、やっぱり何についてのものなのか分からないし、それ以上喋る気配もない。
「まぁ……ところで、星見るんじゃなかったっけ?」
「すいませんがそれは口実です」
相変わらずハッキリ言うね……。
そういう正直なところも嫌いじゃないが、脱力してしまう。
「はは、そっか。でも本当に綺麗だと思うけどな。今夜は」
苦笑しながら見上げた夜空には、宝石のような星が幾つも輝いていた。待っていれば今にも降ってきそうだ。
「俺、昔見た満天の星空が忘れられなくてさ。つっても、空以外は何も覚えてないんだけど。やっぱり東京の方じゃ中々見れないなあ」
それでも、今夜は久しぶりに目を奪われるほどの絶景だ。普段は建物が光害となって邪魔してるんだろうけど、今は時間帯が遅いこともあって暗い。
ダイヤモンドのような光の粒を数えた。
「あ、俺が以前住んでた所は毎日星が見えましたよ。この空よりも、ずっと。命懸けます」
「命は懸けなくてもいいけど。星が綺麗に見えるののは良いなぁ」
「えぇ、他に何もない町ですけど……是非見に来てほしいです!」
そこでようやく、彼らは前みたいに笑った。
その表情こそ、暗い夜の中でも明るく輝いていて……できればずっと、笑っててほしいと思った。
「良いじゃん。いつか連れてってよ」
だからか、自然とそんな言葉が零れた。
涼はというと、めちゃくちゃ驚いた顔をしている。
「なんだよ。駄目?」
「い、いえ! そんなことは……」
否定はするが、いまいち歯切れの悪い彼に疑いの眼差しを向けてしまう。
「微妙な反応だなぁ。嫌ならいいよ」
「嫌じゃありません!是非とも一緒に行ってほしいです!」
涼は缶を置いて、今度は全身で行きたい気持ちが表現した。必死な感じはすごい伝わってくるけど。
「叶うなら、本当に行きたいです。今の俺の夢になっちゃいますよ……」
「夢って」
涼のやたら大袈裟な物言いに、冷静に言い返してしまった。
「何言ってんだよ。お前有給消化中だろ。俺も取ろうと思えば休みとれるし。すぐにだって行けるじゃんか」
「いや……そうなんですけどね。でも……」
「でも……何?」
涼は再び空を見上げると、深く息を吸った。