「春夏ちゃん♡今日も可愛いね。」
「お兄ちゃん,ほんとキモイよ。ねぇ,そうでしょ?春夏さん。」
「ふふ,そんなことないよ。」
~これは,私とその愉快な魔族たちと繰り広げられるごくごく普通の物語~
私は山猫春夏≪ヤマネコハルカ≫,KING高等学校に通う17歳。私のおじいちゃんはあの偉大なる建築家,山猫修三≪ヤマネコシュウゾウ≫。そして私の父は魔族について研究する魔界研究プロジェクトラボ,略して魔研の研究員,山猫明彦≪ヤマネコアキヒコ≫だ。そんなこと言われてもわからないと思うけど,まぁ,なんだかんだですごい人なんです。私は…そんな人のもとに産まれたのに特技も,何にもないただの一般人だ。強いて言えば誰もやらなかったから強制的に生徒会長になったことかな。今日もいつものように学校へ向かう。
「あ,あの…貴方KING学校の生徒?」
学校へ向かっている途中,路地で煙草を吸っている男の人がいた。耳にあるピアスがすごく目立っている。KING学校ではピアスを認められていない。何故なら学校は魔法を扱うため,光属性の魔法がピアスによって暴走してしまうからだ。私が入学したての時にピアスによって校舎が爆発したことがあった。あれは本当に怖かったな。
「そうだけど何?」
虎のような目でこちらを見てくる。いや,睨んでいるといったほうがいいかもしれない。
「えっと,KING学校ではピアスによって校舎が無くなるといった事例があるので取ったほうがいいですよ。それと…20未満は喫煙禁止です。」
「だったらなんだよ。」
いや…不良って怖いなぁ。たまに,こういう人はいる。KING学校に受かって調子こいてこうなる人。KING高校は決して偏差値が低いわけではない。国内3位には入るほどの実力だ。だからこそこうなる人が稀にいらっしゃる。
「す,すみません…。」
あの目と殺気に身を縮め,私はすぐに逃げた。
「あ!生徒会長!おはようござーいます!」
「ルナ,その呼び方やめて?今まで通り春夏でいいから。」
靴箱で元気よく挨拶してきたのは中学生のころから仲がいい水重ルナ。見た目からして陽キャに分類される可愛い女の子だ。私とは全然違うタイプで,猪突猛進!してすぐに失敗する。
「へへ。…あ!そうそう,中等部の可愛い男の子知ってる?」
「え,知らない…けど。」
「えっと,確か名前がなんとかえんまって言ったはず。えんまは,円満って書いてえんまらしい。そんな名前なのに大人しくてすごい何というか可愛いの!」
ルナはこの学校の情報部隊。人の恋愛事情や人の成績まで何でも知ってる。だからこうやって朝一番にいらない情報をくれる。たまにそれで助かることもあるけどほとんどない。相手がどう思っているのか,好きな人がいないのかなど聞きたい人がよくルナのところに集まるのだ。
「あ,それと…海斗っていう転校生来るらしいね。今朝知った。」
「転校生?」
「うん。なんかすごい子らしいよ。海外から来たらしいんだけどこの学校の入試を難なく突破して満点でAクラスに入ることになったとか。」
「それ本当?」
私は疑った。KING高校の入試問題は国内最高クラスのレベルになっていて,私でも頭を抱える問題が多数あったのにその問題で満点を取ったなんて。それに筆記だけじゃなくて魔法の実践だってあったはず。試験監督はどの人も大魔法師。何か不正でも犯して入学したんじゃないかと思う。
「ほら,この席多分その海斗君の。」
私のクラスの一番後ろ,窓側の席にポツンと佇む席。何故だか特別感で溢れている。
「それじゃ,何か聞きたいことあったらいつでもBクラスで待ってる。」
「う,うん。」
私は席に着き,読書を始めた。これは私が大好きな小説,『エルフと慈悲の勇者』。すごく現実味があって実話なんじゃないかと思うほどにリアルに描かれている。この物語の主人公,リリスというエルフがソラという男の人と魔王を討伐するシーンが特に___
「起立。」
チャイムが鳴り,先生が入ってきた。今日はなんだか起立がとても揃っていたから私は少し嬉しかった。そして,なんだか教室が騒がしい。もう授業は始まったというのに休み時間の雰囲気を感じさせる。
「はいはい,そんなに騒がない。皆さんお待ちかねの転校生は今来ますよ。…で,どうして知ってるんだ。」
先生が扉を開け,廊下を見つめる。私は期待の胸でいっぱいだった。男の人なのは分かってるけどどんな人なんだろう。第一印象を良くしないと。
「では,転校生の闇夜海斗さんです__。」
教室に転校生が入ってくる。どんな子なのだろうと思っていると
「闇夜海斗です。」
そこにいたのは路地にいたあの男の人だった。
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