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「え…。」
路地にいたガラの悪い男の人が転校生だった。しかも私のクラス。驚きが隠せなかった。
「では,春夏さん。学校案内は任せましたよ。」
「は,はい!」
生徒会長は新入生や転校生に学校案内をするのが掟。新入生案内の時は沢山人がいたからよかったんだけど,二人きりはちょっと気まずい。しかもあの男の人となると余計に気まずい。海斗…さんはポツンと置かれた座席に着き,いつものように授業が始まった。
「えっと,山猫春夏です。高等部生徒会長を務めてます。よろしく,お願いします…。」
休み時間になり,私の学校案内は本格的に開始した。まず初めに本校舎を案内し,魔法専門特講の校舎を,最後に移動教室を案内した。
「これで最後になります。それと,光属性がその,ピアスに反応してしまうので取っていただけると身の安全も保障されますよ。」
「…。」
海斗さんは何も言わず,素直にピアスを外してくれた。もしも外してくれなかったらどうしようと思ったが,案外素直で無口だったから私のペースで話ができた。仲良くなるのは無理かもしれないけれど,きちんと話を聞いてくれているなら良かった。
「それじゃあ,何かあったら言ってくださいね。」
海斗さんと別れ,私は颯爽と生徒会室に向かった。今日,生徒会では重大な任務が待っているのだ。…書類整理という任務が。
「おはようございます…。」
生徒会室に入ると生徒会メンバーが死んだ顔で書類をまとめていた。ホッチキスの音やため息の音,シュレッダーの音しか聞こえない生徒会室はとても暗く見える。いつもはお菓子パーティーだの開いているのに。
「えっと…。」
「あぁ…春夏さん。居たのか。…はぁ。」
生徒会副会長の千歳颯≪チトセハヤテ≫先輩が大量の学級報告書を抱えやってきた。学級報告書は各クラスの学級代表たちがクラスであったことなどを細かく記すはずのものだ。現状は「何もなかった☆」や「お菓子食べたい☆」など代表の愚痴報告書と化している。本当に紙が勿体ない。
「えっと…ごみ捨て行きますよ。」
「えー!ありがとー!わったしうっれしーな!!!!」
生徒会一の真面目,八神雪那≪ヤガミユキナ≫ちゃんのテンションがおかしくなっている。ついには手にしているものを全てシュレッダーにかけてしまった。雪那ちゃん…それまだ見てないでしょ,絶対に。もしちゃんとしたものが入ってたらどうするの。
「生徒会…大丈夫かな。」
不安になりながらもゴミ捨て場に向かう私なのであった。
「あれ,海斗さん…?」
もうとっくに下校時間は過ぎている。何せ今日は午前授業。早く帰れると思ったのにな。生徒会は地獄の一日がスタートするんだ。あれが終わるまで帰れない。
「ざっけんなよ。家開いてないって意味わかんねぇんだけど。親父が言ってた家でほんとにあってんのか!?」
ちょっと怒っているみたいだ。家開いてないって,鍵忘れたのかな?で,また煙草吸ってるし。…けどあの独特の匂いがしないのはなんでだろう。甘い,匂いがする。チョコレートみたいな。
「えっと,あの,海斗さん…?」
「あ゛?…え,ちょっと切るぞ。」
「…家の鍵忘れたの?家開いてないって聞こえたから。」
海斗さんは頷いた。忘れたというかないみたいで入れないんだってさ。
「えっと,海斗さんはじゃあ帰れないんだね?」
「あのバカのせいで。」
最悪の場合私の家に連れていくことはできる。なんせ私の家は爺やと二人で暮らすには大きすぎるから。部屋も使っていないところが沢山ある。…けど,最近爺やが使ってない部屋を掃除してたような。
「私の家,来る?今日すごく寒いから,家開くまで居てもいいけど。」
「じゃあ,頼むわ。」
ごみを急いで捨て,私は自分の家に向かった。
私の家に着くまでは凄いくらい気まずかったけど,まぁ何とかもうすぐ着くからよかった。
「あの大きいのが私の家なんだけ,ど…。」
私の家の前に3人が居座っていた。誰。え,本当に誰。1人は幼い女の子で,あとの二人は男の人。勇気を出して近づいていくと海斗さんの顔が悪くなった。
「ど,どうしたの?具合悪い?」
「は,はぁ?親父が言ってた家って…。」
ぶつぶつ海斗さんが言っていると家に居座っていた男の人が近寄ってきた。海斗ー!と言って。
「へぇ,この子が春夏ちゃんか~!可愛いなぁ。」
「え,あ,の?」
「…兄貴,マジでここなのか?嘘って言えよ…。」
どうやら海斗さんのお兄さんだったようだ。…てことは?いや,でもどうして私の家に入ろうとしているの?何がどうなっている___。
「あれ,すみません。春夏様,言うの忘れてました。」
爺やが帰って来た。買い物袋を大量に持って。
「何を,言い忘れたの?」
「今日からシェアハウスをこの4人方と,と,明彦様が。」
全身に寒気が走った。