コメント
1件
最高過ぎてヤバイ私の作品とは大違いだ、、、
side.Mz
俺の腕の中でガクリと意識を落としたけちゃ。愛らしいその顔は痩せこけて目の下には隈がくっきり浮かんでいる。限界ギリギリを生きるけちゃに少しやりすぎたかと思ったがけちゃの下腹部に浮かぶ淫紋を見てその思いはすぐに消え失せる。
こいつは俺のもの。身も心も全て俺に堕ちてきてしまえ。いっその事俺の手で……。
「まぜたーん?何怖い顔してんのさ」
「”ちぐさ”か……」
「何その反応!!なんかもうちょっとないの?!」
「いや、特に何も」
「なにそれーー!!」
深すぎず浅すぎない独特の碧髪に海のような瞳の悪魔…ちぐさがひょっこり現れる。よく連む奴らの中で1番小さいものの上流と呼ばれるだけの身分と力を持った悪魔。彼は好奇心旺盛で落ち着いていないことが多く、魔界にも人間界にも出没する。普通、魔界に住まうモノは人間界への出入りは固く禁じられているが上流悪魔のうちのほんのひと握りのみ自由に人間界へ行くことを許されている。俺もその1人だ。
「てかその子、契約結んだ子?人間っぽいけど」
「そうだ。取るんじゃねぇぞ」
「取らないって〜。ようやくまぜたんが契約したいと思えた子でしょ?それとも俺が親友の番を寝取る奴だと思ってるの?」
「思うわけねぇだろ、信用してんだから。あとこいつの家とか調べてくんね?いつまでもここに閉じ込めとく訳にもいかねぇし」
「悪魔使いが悪いんだから〜。”あっとくん”の方が詳しそうだけどね」
「4日会社に来なかった言い訳考えさせてるから無理」
「やばwwwwしょーがない、やってあげますか〜」
そう言い残し、ちぐさは窓のからひらりと飛び降りて空に消えていった。
本当は人間界になんか返したくない。一生魔界で一緒に過ごしたい。けちゃを苦しめる奴らと同じ空気を吸わせたくない。なんて言ったらけちゃはどんな反応をするのだろう。
「ただいま〜!!見っけたよ〜!!」
数分前に出かけたはずのちぐさがもう戻ってきた。恐ろしいまでの早さである。
「その子の”命の足跡”を辿ったらすぐに分かったよ〜!!まぜたんがどこで拾ってきたかもね」
ちぐさは死神族。人の生死を司り、死にゆく者の魂を天へ届け、魔界への案内をする彼は人がどの道を歩いたかすらわかってしまう。
命の足跡とは人の歩く道に落ちる跡…落し物のようなものである。死神族のみその命の足跡を辿ることができる。
「着いてきて!!人間界への扉からかなり近くてびっくりしちゃった!!」
「了解」
ちぐさと共に人間界への扉を通る。その先には俺がけちゃを助けた交差点。そこから線路沿いに数キロ進んだところにあるマンションの5階。そこがけちゃの家らしい。表札には”桃野”とあった。無防備にも鍵は掛かっておらず、そのまま上がらせてもらう。
家具は最低限、服も少ない。どれだけ限界生活を続けていたのだろう。寝室を見つけたのでベッドにけちゃを寝かせる。もちろん服は着せてる。
「んーー、やっぱ生活感ないね。というか…生きることを義務にしてる感じの部屋?」
「義務?」
「人にはそれぞれ生きる理由があるんだ。家族といたい、友達と遊びたい、恋人と幸せになりたい、推しを追いかけたい…とかね。でもこの子は”生きなければならない”になってる。そう考えるのは命を投げ出したいと思っている人の特徴。ねぇまぜたん」
「なんだ?」
「その子、絶対救ってね。俺、この子の魂を運ぶ役はしたくないよ」
「当たり前だろ。けちゃを俺以外の誰かに渡す訳がない」
ベッド横のローテーブルに書き置きを残しておく。そして窓から俺とちぐさは外に出て魔界へと戻って行った。
『トんだから運んどいた。なんで家が分かったかはそのうち知るから今は話さない。
ちゃんと飯食えよ まぜ太』
✂︎—————–㋖㋷㋣㋷線——————-✂︎
ちぐさ
死神族の上流悪魔。好奇心旺盛で人間界にも頻繁に現れる。