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◻︎健介の電話
休憩を終えて仕事に戻る。
「あ、森下チーフ、先程、社長付きの新田さんがお見えになりましたけど」
同じチームの岩下雪乃が声をかけてきた。
「え?わざわざ?」
「はい、でもチーフがいなかったので電話番号を教えたんですけど、電話ありませんでしたか?」
会社用のスマホを開いたけど、履歴はなかった。
「ううん、ないけど」
「やっぱりですか?新田さん、俺がかけても繋がらないんだよねっ言ってたんです。なんででしょう?」
_____しまった、着拒してたんだった
入院前に着拒して、そのままだった。
「さ、さぁ?電波が悪かったのかな?こっちからかけてみるね、ありがとう」
イマイチ納得してないような岩下を横目に、私は着信履歴から新田の番号を探してコールした。
『はい、新田です』
「あの、先程はわざわざお越しいただいたようで。森下です」
『あ、もう体調はいいんですか?入院されたと聞いていたので』
口調がビジネスモードなのは、そばに社長がいるからだろう。
「はい、ご心配をおかけしました。で、ご用件は?」
『実は先日、プレゼンしていただいたプロジェクトに正式にGOが出ましたので、それを伝えに行きました。予算は少しタイトになりますが、その中で最大のパフォーマンスを見せてくださいとのことです』
「ありがとうございます。チーム一丸となって真摯に取り組みます。進捗は追ってご連絡しますので」
『あのさ、連絡は、個別に酒でも飲みながらでどう?』
いきなり、声のトーンが変わった。場所を変えたのか、社長がいなくなったのか?
「では、すぐにとりかかりますのでこれで失礼します」
こういうのは無視するに限る。
『えっ、あっ、ちょっちょっ!』
やっぱり油断ならない。隙を見せてはいけない。一体どういうつもりで、無防備に昔の距離感を出そうとするのだろう?
_____アイツの目的がわからない
少しの苛立ちを誤魔化すために、黙々と仕事をこなした。プレゼン資料の予算の項目と内訳を書き直して、本格的な仕様書にしてみんなを集めた。
「ちょっと、集まって!」
男性は結城、三崎、藤堂、女性は日下、岩下、そして私の計6人。
「さっき連絡があって、このプロジェクトが正式に発動されました。予算が少しタイトになるそうなので前もって削れるところは削っておきましたので、これでなんとかやり切ってください」
「「よっしゃあ!やるぞ」」
立ち上げたプロジェクトが成功して、売上が上がると金一封もあり得る。みんなのやる気も上がる。
私もしっかり仕事をするぞと気を引き締めた。