テラーノベル
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「それにぃ、あたしに抱きつかれてそんなこと思うなんて、それこそおかしいですよねぇ?」
うっ、確かに…
「じゃ、じゃあ日高さんはどんなつもりであんなこと…」
しまった!これは聞いちゃいけない!
「それはぁ…」少し前屈みで近付かれる。
「エッチなことに決まってるじゃないですか」
「エっ!?エッチなことって!?」
「しー!田川さんには聞こえなくても売場のお客さんに聞こえちゃいますよ?」
いけない!
「でも…でも!日高さん、ご家族がいるじゃないですか!?」
「はい、いますねぇ」
「自分も妻と子が…」
「はい、いらっしゃるんですよね?」
「そう、いるんです。だから…」
「だから秘密にしないとですね!」
なぜそうなる!?
「秘密って!…」
「だってバレたら大変じゃないですかぁ?」
「そうですよ!バレたら大変!だから…」
「秘密ですね。とりあえず今日はハグくらいにしておきます?」
な!?話を進めてくる!?なんで?どうして?
思考が堂々巡りする。
そうしてるうちにまた抱きつかれる。今度は正面から!
うぅ…なんか…いい匂いがする…
「ほらぁ、ぎゅっとしてくださいよぉ」
自分は…ぎゅっとした。だめなのに、バレたらまずいのに…
「あははっ、ぎこちないですねぇ」
自分は妻と高校から付き合って結婚した。
妻以外の女性とこんなことをしたことはない。
妻と違って細身の体。初めて抱き締める、妻以外の女性。
「どうしてこんなことを…?」
「ん〜…ハグってぇ、幸せな気分になりませんか?」
なる。とても幸せだ。
「旦那さんとはしないんですか?」
「してますよ。でも幸せなことは誰としてもいいと思いません?」
そう…かな…でもハグくらいなら海外では当たり前って言うし、いいの…かもしれない。
[レジフォローお願いします]突然インカムから声がしてはっとする。
「じゃああたしちょっと行ってきますね」
慌てた風でもなく、ふっと日高さんが離れる。
そして倉庫を出ていった。
まだどきどきしている。一人になった倉庫で立ち尽くす。これからもハグ…するのか…?
それから日高さんがフリーになる日がある度に秘密の抱擁は行われた。頭ではだめだとわかっていながら断ることは出来ない。せめて好きになったりしないようには気を付けよう。
W不倫なんて冗談にもならない。
インカムがレジ応援を呼ぶ。
「あっ、また呼ばれちゃいましたね」
日高さんはすっと離れレジに向かう。
いつも思う、なぜこんなことを…
「お客さん1人でしたぁ」すぐに戻ってきた。
「今更なんですけど、どうしてこんなことを?」
「えっ?ぎゅっとすることですか?前にも言いましたけど、幸せな気持ちになるじゃないですか」
「いや、そうなんですけど、どうして自分と?」
もしかして好きなんですか…?
思ってもそれは聞けなかった。
コメント
3件
私的にかわいい‼️
「なぜそうなる!?」って、思わずツッコミたくなる展開でした(笑)。日高さんの「秘密にしないとですね」の軽やかさと、主人公の「違う、そうじゃない」感のギャップが絶妙で、読んでてすごく楽しかったです。ハグって幸せになるためのもの、という理屈に引きずられていく主人公の心情がリアルで、倫理観と快楽の間で揺れる感じにドキドキしました。この先、どう転ぶのか気になります!