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#兄弟パロ
かの
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#暁山瑞希
ねる
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101
まふゆは最終手段に出ることにした。できることなら、自分の言葉で類を、類の心を動かしたかった。でも、時間がなかった。
まふゆ「類、これ」
取り出して、取り落としそうになる類に、しっかりと持たせる。自分の手の中にあると、実感できるように。
類「だい、ほん…?」
類に持たせたのは、以前母さんに破り捨てられた台本だ。ゴミ箱から拾い上げて、テープで修繕したもの。希望も、絶望も詰まった、継ぎ接ぎだらけの、もの。
心も、同じだ。
継ぎ接ぎだらけでも、いいじゃないか。
壊れていないのなら、それで。
だから、崩れた心を、継ぎ接ぎの縫い目を残して、再生して。
まふゆ「不格好でも、不完全でも、そこにあるのなら、それで良いと思うの。」
類の瞳から零れ落ちたそれを、見ないふりをした。
そして、台本を抱き締めた類の手を、もう一度取った。
まふゆ「私と、行こう」
姉さんが、台本を拾ってくれていた。燃えて灰になる前に。
類「完璧じゃなくても、いいの…?」
姉さんは返事の代わりに、強く頷いた。
それでも、まだ、こわい。姉さんが手を取ってくれているのに。誰よりも救いたかった姉さんを救えず、逆に救われようとしているのに。僕が臆病だから、怖じ気付いてしまったから。
救われたいと、姉さんの手を取って、失敗したら?台本の時のように、司くんの家の時のように。そんなことに、またなったら…。僕は、耐えられるだろうか?そんなタラレバを考えて、勝手に沈んでいく。
ごめんなさい。
類「僕はもう、耐えられないんだ。」
僕は今、どれだけ酷い[[rb:表情 > 顔]]をしているのだろうか。
頬に、絶え間なく温いものが伝う感覚がした。
姉さんは、そんな僕の頬に手を当てて雫を拭った。
まふゆ「私を、私たちを信じてほしい」
“一度だけなら”
そう何度思って、何度失敗しただろう。これ以上傷付くくらいなら、もう手を伸ばさないでと、何度諦めただろう。
でも今なら、失敗しても、姉さんは僕の手を離さないと分かったから。姉さんの手を握り返す、ほんの少しの勇気を出したい。
失敗しても、絶望も、傍観もしないと、させてはくれないと、思ったから。
この勇気が、失敗しても全てが無に帰すことの無い、証だ。
類「僕を、連れ出してよ…姉さん」
僕は、姉さんの手を握り返した。
まふゆ「…任せて」
途端、グンと引っ張られる。力強く、けれど優しく、僕を家の外まで導いた。
まふゆ(時間が…結構時間かかったな…。)
私の役割は、類を説得して連れ出すこと。タイムリミットは母さんが風呂に入っている間。なんとか、ギリギリで間に合う事ができた。
台本を抱えたままの類を、家の前に停めてある車の中に誘導する。
類「え、車…?なんで…」
まふゆ「説明するから、とにかく入って」
車内では、運転席に父さん、助手席に奏、後部座席に司が座っており、私と類もそこに乗り込んだ。
事前に、タイムリミットは30分程だと聞いていた。だが、そのくらいが経ってもまふゆは出てこない。
─奏「この要の“説得役”は…」まふゆ「私にやらせて」─
あれだけ大口を叩いておいて、説得できなかったなんて、辞めてくれよ…。
何も起きず、時間だけが過ぎていく。だからこそ、車内の緊張は張り詰めていった。
司(冷房が効いているからか、少し寒いな)
まふゆが類の手を引いて出てきた。奏が吐いた安堵の息が聞こえた。
類の手には、テープで補修されている、少し歪な台本。まふゆから、聞いてはいた。類の母親が破り捨てた台本を修復したと。その時は、言ってもらえれば新しいものを用意したのに、としか思っていなかった。
でも、違った。
オレがあの日、手渡した台本だから意味があるのだ。歪でも、形より思い出が深いのだと。そのことを、類の手中にある台本を実際に見て、実感した。
まふゆと類が車に乗り込んだ。まふゆとオレで、類を挟むように座る。
司(…暖かい)
困惑する類を横目に、オレが一番に感じたのは、類の体温だった。
コメント
1件
うわ、この話…すごく良かったです。継ぎ接ぎだらけの台本、それを見た類の「完璧じゃなくてもいいの?」って問いかけが、心に刺さりました。まふゆが自分で説得役を名乗り出て、時間ギリギリまで粘ったところも泣けます。司くんが類の体温を「暖かい」と感じたラスト、二人の再会が温度で表現されてるのが素敵だなと。家族みんなで類を迎えに行く構図も良かったです。