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すかーと夢魔は、部屋の隅から隅まで目を光らせていた。だが、ネグの姿は一向に見つからない。
「……なんでだ。絶対ここにいるはずなのに……!」
すかーは乱暴にタンスを開け閉めし、棚の裏まで覗き込む。
「ふざけんなよ……あのガキ……!」
夢魔も息を荒くしながら、何度も同じ場所を確認する。
だが結局、二人は部屋を出て、別の部屋を探すことにした。
その瞬間を、ネグは襖の奥でじっと待っていた。
──静かになった。
ネグはそっと襖を少しだけ開け、音を立てないように細心の注意を払って抜け出す。
部屋に誰もいないことを確認し、まずはすかーのクローゼットへ向かう。
すかーの上着──手触りのいいもの、あたたかそうなもの──を何着か選んで、両手に抱えたまま再び襖の中へ戻る。そして、すぐさま次の標的、夢魔の部屋へと音を立てずに歩き出す。
夢魔の部屋の扉を静かに開ける。気配はない。
「……ふふっ。」
ネグはその場で夢魔の服やズボンを、ごっそりと何着も抱え込む。特に上着は慎重に、あまり多くは取らないが、手慣れた手つきで数着選ぶ。
そして再びすかーの部屋へ戻り、襖の奥にすべて運び込む。
服を床に敷き、上着の一着を羽織り、身体を包み込むと、さっきまでよりもぬくもりが増す。ネグは静かに微笑んだ。
手元のスマホを取り出し、再び電話をかける。
『……雑魚♡雑魚♡ ざこざこ♡ ざぁこな夢魔くんとすかーくん♡』
その声が聞こえた瞬間、廊下の向こうからすかーと夢魔の怒号が響き渡った。
「はあああああ!? ふざけんな!!!!」
「お前ッ、マジでやっていいライン超えてんだろうが!!!」
二人は再び全力で走って部屋に戻る。
だが、そこにもネグの姿はない。
すかーは荒々しく襖を開けようとしたが、微妙な違和感がまた胸を掴んだ。
──その瞬間。
夢魔がふと、自分の服に手を伸ばし、目を見開いた。
「……待て……服が……!」
クローゼットの中、ズボンや上着がごっそりなくなっている。
「……は?」
さらにすかーもクローゼットを開け直し、上着が何着もなくなっていることに気づいた。
「ッ……!!」
怒りの沸点をとうに超えた二人の声が重なった。
「おい!!!!!」
「服まで持ってっただと!?ふざけんなッ!!」
だぁとマモンが静かにLINEの通知に気づき、
「ネグから……?」と呟く。
だぁ:『ネグ、どこにいるの? 大丈夫?』
ネグ:『♡』
ただそれだけの返信が、だぁのスマホに表示された。
「ネグ……」だぁは困ったように微笑むが、すかーと夢魔はもう止まらない。
「服まで消えるとか……ありえねえだろ!!」
「絶対どこかにいる……絶対……!」
二人は再び部屋をひっくり返す勢いで探し始めた。
だが、ネグはまた襖の奥で静かに息を潜め、羽織った上着に顔を埋めて、笑いをこらえていた。