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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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「あとは特別棟で終わりか」


階段を上り終えた赤羽が軽く肩を回した。


「ポスター貼りはなんてことないが、無駄に広い学校だから回るのに疲れたな」


「ああ、うん」


次いで階段を上り終えた青木は、赤羽の広い背中に隠れながら、特別棟の気配を窺った。


変な音は――しない。

変な声も――しない。


「何してんだよ」


赤羽が肩越しに振り返りながら迷惑そうに顔を歪める。


「いや……昨日ここにあいつらがいてさ」


「あいつら?」


「ほら、2組のカップル。あいつらが生物室でさ、ヤッてたんだよ」


「はあ?」


赤羽が呆れたように口をあんぐりと開ける。


「学校でぇ?」


「そうだよ。ズッコンバッコンさあ!」


青木はまるで怪談を話すように肩を竦めた。


「終いには『混ざる?』とか聞いてきやがって、『明日もここで待ってる』とか言ってたからさー。いるかも」


「……んなわけあるか」


赤羽はふっと鼻で笑った。


「見られたからバツが悪かったんだろ。お前、からかわれたんだよ」


「……そうかなー」


青木はまるで見られているのを初めからわかっていたかのような、桃瀬の目つきを思い出した。


「……わざわざ学校でヤラなくても寮でヤレばいいのにな」


「つか、男女関係なく他人のセックスって萎えるよな」


「…………」


「必死になってて阿保くせーつうか」


萎えるどころか昨日痛いまでに勃ちあがった青木は何も言えないまま、ただ赤羽について行った。


「――どこの教室だって?」


「生物室」


「ここか」


赤羽は扉の前で足を止めた。


「あ、おい……!」


赤羽はろくに確認もしないまま、ガラリと扉を開けた。


「…………」


中を見た赤羽の身体が硬直する。


「……ど……どうだった?」


青木が後ろから小さく聞くと、


「お前ら。ここをどこだと思ってんだよ」


赤羽の低い声が響いた。


「さっさとその汚ねえものをしまえアホ」


「………やっぱり!性懲りもなくあいつら!」


青木は赤羽の前に回り込んで生物室をのぞき込んだ。


「あれ……?」


暗幕が光れたままの生物室は暗く、人の気配はなかった。


「なんてな」


赤羽が笑う。


青木はため息をつきながら振り返った。


「なんだよ、騙しやがって!マジビビっ――」



その瞬間、誰もいなかったはずの生物室から4つの手が出て、青木の身体を掴んだ。



「……んんッ!」


その一つに口を押えられたまま、青木は生物室に引きずり込まれた。


「……!!?」


仰向けに引き倒された後は、自分よりも一回りも二回りも大きな体が、圧迫するように乗ってきて、息もできなかった。


もがいている間に後ろ手を拘束され、うつ伏せに押さえつけられたまま背中に乗られ、身動きが取れなくなった。


「やあ。覗き魔くん?一日ぶり!」


青木の黒髪を掴み上げたのは――。


「……桃瀬!!」


ピンクブラウンの肩までの癖毛をうねらせた桃瀬だった。

今日はちゃんとブレザーまで着ているのに、どこからどう見ても女性にしか見えない。


「お前なら来るって信じてたよ。この変態野郎が」


桃瀬は笑いながら顔を寄せ、青木の唇にキスをした。


「…ングッ!?」


何か小さな錠剤が口の中に入ったと思った瞬間、やけに細く長い舌で喉元まで突っ込まれた。


「お口に入れて、はい、ごっくーん♪」


背中に乗った黒崎が、薬嚥下ようゼリーのCMを真似て歌う。

青木の肩口を掴み大きく上下させると、錠剤はあっという間に喉奥に流れていった。


「……何を飲ませたんだよ!?」


「さあ?」


桃瀬は青木の髪の毛を離すと、前方にしゃがみながら楽しそうに頬杖をついた。


「でも飲んどいたほうがかえっていいと思うよ。シラフだと辛いから」


桃瀬のピンク色の唇がニヤリと笑う。



「……ッ!!赤羽!!!」


青木は悲鳴のような声を上げた。


「助けてくれ!!やっぱり桃瀬と黒崎がいたっ!待ち伏せしてやがった!!」


必死で叫ぶ。


しかし廊下にいるはずの赤羽の声は返ってこない。


「まだ気づかないの?サイコパスって頭がいいイメージだけど、例外もいるんだな」


桃瀬が少し鼻にかかる声で言う。


「あいつは――赤羽は僕らの仲間だよ?」



「……仲間……?」


青木はいつまでたっても開けてもらえない扉と、相変わらず頬杖をつきながら楽しそうにのぞき込んでいる桃瀬に視線を往復させた。


「そ。あいつも僕らも死刑囚」


桃瀬の大きな目が見開かれる。


「てめーを今すぐぶち殺したい同志だよ?」


「――――」


頭を鈍器で殴られたような衝撃が走った。



桃瀬や黒崎が死刑囚?


いや、そんなのはどうでもいい。



あの赤羽が、死刑囚?


俺を恨んでいる人間の一人?



「……ぐっ!」


突然、頭が割れるように痛くなった。


顔が熱い。


いや顔だけじゃない。身体が燃えるように熱い。



「効いてきた?」


桃瀬が視線を送ると、黒崎はやっと青木の背中から下りた。



「……ウッ!……ぐッ……!!」


自分への重圧が消えたのにも関わらず、青木はろくに動くこともできずに、生物室の床を這いずった。


「はは。どこ行くの、死にかけの蟻さん?」


桃瀬の笑い声が遠くで聞こえる。



「……ア゛……ア゛ッ!!」


股間が熱い――。


むしろ痛い――。


全身が溶けてしまいそうだ。



「……俺は……」


掠れる声を出す。



「このまま死ぬのか……?」


「……ぷっ」


桃瀬が吹き出す。


「まあ、天国か地獄かのどちらかにはイケるだろうね」



黒崎が青木の上半身を引き上げる。


「赤羽―。誰も来ないように見張りよろしくー」


黒崎が間延びした声で扉に向かって言うと、


「了解」


聞き違えるはずのない赤羽の声が返ってきた。


「……赤羽……なん……で……ッ!」


正座で座らされた青木を、桃瀬が覗き込んでくる。


「どうした。まるで失恋でもしたみたいな顔して」


桃瀬は両手で青木の顔を包み、楽しそうに笑った。



「しょうがねーから、僕と黒崎でたっぷり慰めてやるよ」


その白く小さな手が桃瀬のベルトにかかる。



「もう男なんて見たくもなくなるくらい、徹底的にな」


ボクサーパンツから、華奢な身体にしては大きなソレを取り出すと、桃瀬はニヤリと笑った。



ボーイズ・デッド・ラブ

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