テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
もう会えないと思ってた。
「おれあそびにいってくる!」
太陽の日差しが強すぎるほどの夏。
俺は祖母の家に来ていた。長期休みの時にしか来れないので、従兄弟や近所のヤツらと一生遊んでた気がする。
今日もアイツらとサッカーをしよう、とボールを持って公園へ走っていたところだった。
ばぁちゃん家から公園に行くまでの道のりで、神社の前を通る。
そこの空間は、夏なのに夏じゃないみたいな、涼しい風が吹いていて俺は好きだった。
今日もそこを走って通り抜けようとしたら、誰かいた。
ゆうれい?……にしちゃ、くっきりと見え過ぎている。
「きれい……」
思わず足を止め、じっと見つめてしまった。
幸にも、相手は俺に気づいていない。
一瞬、時間が止まったかと思った。
「こんにちは」
ゆうれいさん(仮)がこちらの熱視線に気付き、声をかけてきたのだ。
ぶわわわわっと顔に熱が集まる。俺は生まれて初めてこんなに綺麗な人を見た。
陶磁器みたいな白い肌に、スカイブルーのビー玉みたいな瞳。スッと長い鼻に、プラチナグレーのサラサラの髪。
もちろん、小学生の頃の俺はすっごくビビって気の利いた返事ができなかった。「あ」とか「う」とか母音だけを発していたと思う。
「…?
大丈夫?」
彼は腰掛けていたベンチから離れ、こちらに向かってきている。
じゃり、と下駄と石の擦れる音が聞こえ俺は正気に戻った。
そして走り出してしまった。
だめだ、だめだ。俺はあの人を前にどうにかしてしまっている。
なんで、なんでこんなに顔が熱いんだ?
でも、また_____
「あいたいなぁ」
今度は、気の利いた話題が話せるように。
今度は、逃げ出さないように。
今度は、顔を熱くしないように。
今思えば、俺の初恋はあの時だったのかもしれない。
「いっちゃった……」
さっきからこちらをじっと見つめてきて、声をかけたら「あ、ぅ、あ…」としか発さないし、顔が真っ赤になってるし…。
熱中症か!?と思って駆け寄ろうとしたら、すごいスピードでどこか行っちゃうし。
「また会えるかなー、面白い子だったな。さすが現世、面白い!」
僕の現世留学は始まったばかりだし、夏はまだまだ続いていく。
また会えたらいいな。
そんな期待を胸に、僕は部屋へ戻った。
夏はまだ始まったばかり。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!