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橘有香子は、毎晩、肌にシートパックを貼る。
毎日するほうが効果的だと聞き、また、自身が乾燥肌であるがゆえに。
一週間で、強烈な効果を実感した。なんというか、肌の透明度が爆上がりなのである。
美容は日々の努力なのだと思った。有香子は5~15分間筋トレやヨガをすることを日課としており、休みの日には一時間近く運動をすることも。
なお、彼女自身、再婚したばかりなので別の激しい運動を重ねることもしばし。夫である広岡才我も筋トレ〇鹿であるがゆえに、相性がいい。一晩中盛り上がってしまうこともしばし、である。
女性は四十代頃から体力ががくんと落ち始める。そこで運動をするかしないかが運命を分ける。幸せな五十代を迎えるために、有香子は日々運動を続ける。
こころの健康を手に入れるのなら先ずはからだの健康からである。ジム通いを続けていますが鬱です、なんてひとは聞いたことがない。それだけ運動が大事だということだ。
瞑想も、ヨガも、筋トレも、有香子は大好きである。自分の内面を豊かにしてくれている。
日々、満たされている。正直彼女自身、離婚直後は思った以上にショックを受けて。あんな浮気性の夫であれど、いないことに寂しさを感じる自分に愕然とした。
それでも――いまは昔。愛するパートナーがいて、息子がいる。これ以上の幸せなどない、と思っていたのに。
急に吐き気がこみあげて、まさか、と思った。四十三にしてそんな、と。リスクが高いし出産なんてもう懲り懲りだと思っていたはずなのに……。
洗面所で顔を洗い、有香子はつぶやいた。「あーあ。妊婦でも出来るヨガに切り替えなきゃだね」
この予感はきっと本物。そしてこの事実をいったいどうやって愛するひとに伝えよう……そのことを考えながら、ドラッグストアへと魔法の検査薬を買いに行くのだった。
―完―