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キルアと×××の夏祭り🩷
夏祭り会場。
まだ屋台の準備音が残る中、
浴衣姿のキルアはもう入口に立っていた。
(……早すぎた)
時計を見る。
集合時間の20分前。
そわそわして落ち着かず、
屋台を眺めてはため息。
「……まだ来ないよな」
そう思った、そのとき。
「キルア?」
聞き慣れた声。
振り向くと、
浴衣姿の×××が小走りで近づいてくる。
「えっ……?」
×××が目を瞬かせる。
「もう来てたの?
まだ10分前だよ?」
キルア、一瞬固まってから視線を逸らす。
「……悪いかよ」
×××はきょとんとしてから、
ふっと笑う。
「私よりはやく来るの初めて見た」
「いつもキルアの方が遅いのに」
「……うるさい」
耳、赤い。
そのまま二人で並んで歩き出す。
金魚すくいでは、
×××が紙を破ってしょんぼり。
「難しい……」
キルアは横からちらっと見て、
「力入れすぎ」
「こうだ」
手本を見せて、
一匹すくう。
×××が拍手。
「すごい!」
「……普通」
射的では、
×××が全然当たらなくて笑い転げ、
キルアは一発だけ当てて景品を渡す。
「はい」
「え、いいの?」
「……別に」
歩き回って、
人混みと音で、
少し疲れてきたころ。
×××が立ち止まる。
「お腹空いた!」
屋台で
たこ焼きと、りんご飴を買う。
湯気の立つたこ焼きを持ちながら、
×××がふと思いついたように言う。
「キルア」
「はい、あーん」
爪楊枝でたこ焼きを差し出す。
「……は?」
キルア、完全に想定外。
「な、なに急に……」
×××はにこにこ。
「一緒に来たんだから」
「ほら、冷めちゃうよ?」
周りは祭りの喧騒。
誰も見てない……はず。
キルアは一瞬だけ周囲を確認してから、
小さくため息。
「……一口だけだからな」
顔を赤くしたまま、
口を開ける。
たこ焼きを食べた瞬間、
「……熱っ」
×××が慌てる。
「ごめん!大丈夫?」
「だ、だいじょ……」
キルアは口を押さえつつ、
視線を逸らす。
「……お前がやると」
「調子狂う」
×××は照れながら笑う。
「美味しい?」
「……」
少し間を置いて、
「……まあな」
りんご飴をかじりながら、
二人並んで歩く。
夜空に、
花火の音が一発。
キルアは横目で×××を見て、
小さく思う。
(……来るの早すぎて正解だったな)
夏祭り会場。
りんご飴をかじりながら、
二人並んで歩く。
夜空に、
花火の音が一発。
キルアは横目で×××を見て、
小さく思う。
(……来るの早すぎて正解だったな)
たこ焼きを食べ終わって、
人混みをゆっくり歩いていると。
キルアがふいに口を開く。
「……なんか」
「甘いの食べたい」
×××が振り向く。
「さっきりんご飴食べてるじゃん?」
「それはそれ」
少しむすっとした顔。
屋台を見つけて、
キルアはベビーカステラを買う。
紙袋から、
ふわっと甘い匂い。
×××が目を輝かせる。
「いいな、それ」
「一個ちょーだい」
自然に手を伸ばす。
キルア、ぴたりと止まる。
「……は?」
「いや、別にいいけど……」
照れながら一つ取って、
×××に渡す。
「はい」
×××は嬉しそうに、
「ありがと!」
ぱくっと食べる。
「美味しい〜」
その様子を見て、
キルアはまた顔が熱くなる。
(……なんで俺ばっか)
少し悔しくなって、
×××の持っているりんご飴を見る。
そして――
何の前触れもなく、
すっと近づいて、
ぺろ。
りんご飴を一舐め。
「……甘いな」
平然とした声。
×××、一瞬固まる。
「……え?」
数秒遅れて、
顔が一気に赤くなる。
「ちょ、ちょっと……!」
「それ……!」
キルアは首をかしげる。
「なに?」
「さっき俺の食べたろ」
「同じだろ?」
×××はりんご飴を持ったまま、
完全に照れてる。
「そ、そうだけど……!」
「急すぎ……!」
キルアはその反応を見て、
ようやく満足そうに口元を緩める。
「……やっと同じ顔」
「ずっと俺だけだったし」
×××は唇を押さえて、
小さく文句。
「キルアずるい……」
「今の、間接……」
キルアは歩き出しながら、
ぼそっと。
「……気にするなよ」
でも、
耳はしっかり赤い。
二人並んで、
甘い匂いに包まれながら歩く。
花火の音が、
また夜空に響く。
さっきより、
距離が近い。
花火が終わって、
会場全体が一斉に動き出す。
「わ……人すごい」
×××が一歩遅れただけで、
すぐに間に人が割り込んでくる。
キルアは前を歩きながら、
ふと後ろを振り返る。
――近くにいたはずの×××が、
少し遠い。
「……っ」
胸が一瞬、ひやっとする。
考えるより先に、
キルアは手を伸ばしていた。
ぎゅっ。
指と指が絡む。
完全な、恋人繋ぎ。
「え——」
×××が声を漏らす。
キルアも、
自分が何をしたかに気づいて、
一瞬固まる。
(……やっば)
でも、
今さら離すのはもっと無理で。
「……離れるだろ」
ぶっきらぼうに言って、
前を向く。
耳が、
真っ赤。
×××は驚いたまま、
握られた手を見る。
それから、
そっと握り返す。
「……うん」
「ありがとう」
その一言で、
キルアの心臓が跳ねる。
人混みの中、
二人の手はしっかり繋がれたまま。
汗ばんでるのも、
少し震えてるのも、
全部伝わる距離。
キルアは離さない。
少しだけ力を入れて、
逃げないように。
(……当たり前だろ)
(こんなとこで)
(見失うわけない)
×××は横顔を見上げて、
小さく笑う。
花火の余韻と、
繋いだ手の温度。
どっちも、
しばらく離れそうになかった。
人混みを抜けて、
少し静かな道に出たところで。
「……あ」
×××が立ち止まる。
「どうした?」
「ちょっと……痛いかも」
ゲタを脱いでみると、
かかとが赤くなってる。
「靴ずれだな」
キルアはすぐにしゃがむ。
「ちょっと待ってろ」
ポケットを探って、
小さな絆創膏を取り出す。
「持ってたの?」
「念のため」
ぶっきらぼうだけど、
動きはすごく丁寧。
×××の足首をそっと支えて、
絆創膏を貼ろうとした瞬間。
「……っ!」
×××がびくっと震える。
「ちょ、ちょっと……」
「くすぐったい……!」
キルア、手を止める。
「……弱いのか?」
「弱い……!」
それを聞いた瞬間、
キルアの口元がほんの少し緩む。
「……」
一瞬だけ、指先で。
こちょ。
「ひゃっ!?」
×××が思わず声を上げる。
「キ、キルア!」
「悪い」
そう言いながら、
明らかに楽しそう。
でもすぐに我に返って、
小さく息を吸う。
(……だめだ)
(今は)
絆創膏を貼り終えて、
そっと手を離す。
「……無理すんな」
「歩けるか?」
×××が立ち上がろうとして、
少しふらつく。
次の瞬間。
「……乗れ」
「え?」
キルアはもう背を向けて、
しゃがんでいる。
「おんぶ」
「家までだ」
×××は一瞬迷ってから、
そっと背中に乗る。
キルアの背中、
思ったよりあったかい。
「……重くない?」
「軽い」
即答。
歩き出すと、
二人とも無言。
近すぎて、
意識しすぎて。
×××の腕が首に触れるたび、
キルアは心臓がうるさくなる。
(……まずい)
(今日、ずっと)
家の前に着いても、
すぐに降ろそうとしない。
「……もう着いたよ」
「……ああ」
でも、
少しだけそのまま。
沈黙。
「……泊まってく?」
×××が小さく言う。
キルアは一瞬驚いて、
それから目を逸らす。
「……いいのか」
「うん」
「今日、遅いし」
「……一人にするのも嫌だし」
その言葉で、
キルアは小さく頷く。
「……じゃあ」
「世話になる」
二人とも、
理由はちゃんとあるのに。
どこか
分かれたくなかっただけ。
夏祭りの夜は、
まだ終わらない。
××の部屋。
「……あ」
キルアはベッドを見て、
一瞬だけ言葉を失う。
「……一個だけだな」
「うん」
×××はどこか申し訳なさそうに笑う。
「ごめんね」
「……別に」
即答だけど、
内心は全然“別に”じゃない。
電気を落として、
二人並んで横になる。
ちゃんと間は空けてる。
触れてはいない。
……はずなのに、
近い。
×××は布団に入った瞬間、
安心したみたいに目を閉じて。
数分もしないうちに、
規則正しい寝息。
「……早」
キルアは天井を見つめたまま、
しばらく動けない。
横を向くと、
×××の寝顔がすぐそこにある。
無防備で、
昼間みたいな照れもなくて。
(……反則だろ)
髪が頬にかかってるのを見て、
直したくなるけど、
触る勇気はない。
代わりに、
そっと視線を逸らす。
でも、
また見てしまう。
今日のことが
次々と思い出される。
待ち合わせで来るのが早すぎたこと。
たこ焼きをあーんされたこと。
りんご飴。
恋人繋ぎ。
おんぶ。
(……落ち着け)
何度も深呼吸するけど、
全然だめ。
横から、
×××が寝返りを打つ。
布団が少し揺れて、
距離が縮まる。
キルア、完全に固まる。
「……っ」
起こさないように、
息を殺す。
×××はそのまま、
キルアの方に顔を向けて、
また静かに眠る。
(……近……)
心臓がうるさすぎて、
自分の音で起こしてしまいそう。
キルアは天井を見上げて、
小さく思う。
(……今日は)
(楽しすぎた)
(だから寝れないんだ)
でも、
その横顔をもう一度だけ見て。
「……おやすみ」
聞こえないくらいの声で呟く。
しばらくして、
ようやくまぶたが重くなる。
×××の寝息と、
夏の夜の静けさに包まれて。
キルアはやっと、
ゆっくり眠りに落ちていった。
朝。
カーテンの隙間から、
やわらかい光が差し込む。
キルアは先に目を覚ました。
……覚ました瞬間、
理解が追いつかない。
(……近い)
いや、近いどころじゃない。
腕の中に、
×××がいる。
ほぼ、抱きしめ合ってる状態。
「…………」
キルア、完全停止。
昨夜はちゃんと距離を取って寝たはず。
でも、いつの間にか。
×××の額が胸元にあって、
呼吸がすぐそこ。
(……寝相、俺か?)
(いや、どっちでもまずい)
下手に動いたら、
絶対起きる。
起きたら、
説明できない。
キルアは息を極限まで抑えて、
像みたいに固まる。
そのとき。
×××が、
小さく身じろぎ。
「……ん……」
キルアの心臓、跳ねる。
そして、
×××がゆっくり目を開ける。
数秒、状況を理解していない顔。
……それから。
「………………え?」
自分の体勢に気づいた瞬間、
×××の顔が一気に赤くなる。
「ちょ、ちょっと待って……!」
反射的に、
ぱっと体を離す。
同時にキルアも、
「っ……!」
勢いよく距離を取って、
ベッドの端まで転がる。
沈黙。
二人とも、
布団を握りしめたまま。
「……」
「……」
先に声を出したのは×××。
「……ご、ごめん」
「寝相……悪くて……」
キルアは顔を背けたまま、
「……いや」
「……俺も、動いてないし」
(動けなかっただけだけど)
耳、真っ赤。
×××も布団の中で、
顔を隠す。
「……なんでああなったんだろ……」
「……知らない」
でも声は、
どこか優しい。
気まずいのに、
嫌じゃない。
二人とも同じことを思って、
言葉にできない。
しばらくして、
キルアが小さく咳払い。
「……起きるか」
「……うん」
それぞれベッドから降りるけど、
目は合わない。
なのに。
さっきまでの距離が、
妙に名残惜しくて。
胸の奥が、
静かにざわついたままだった。
朝の支度を終えて、
二人はソファに並んで座る。
……けど。
昨日みたいに、
だらっと寄りかかることはできない。
少し距離を空けて、
それぞれクッションを抱えて。
テレビはついてるけど、
内容はほとんど頭に入ってこない。
「……」
「……」
沈黙。
でも、
気まずい“嫌な沈黙”じゃない。
キルアは横目で×××を見る。
×××はスマホをいじってるけど、
さっきから同じ画面のまま。
(……意識してるな)
キルアも同じ。
さっきの距離、
体温、
朝の出来事。
全部、頭から離れない。
×××が小さく動くと、
キルアは反射的にそっちを見る。
視線が合って、
二人同時に逸らす。
「……」
また沈黙。
それなのに、
胸の奥は落ち着いてる。
キルアはクッションをぎゅっと掴んで、
ぽつっと言う。
「……昨日さ」
「楽しかった」
×××が少し驚いて、
それから笑う。
「……うん」
「私も」
それだけ。
でも十分。
キルアはそれ以上何も言わないし、
×××も深掘りしない。
ただ、
同じ空間で、
同じ時間を過ごしてる。
たまに肩が触れそうになって、
また少し距離を調整して。
そのぎこちなさすら、
どこか心地いい。
(……悪くない)
キルアはそう思って、
目を細める。
幸せって、
派手じゃなくて。
こういう、
静かで、
ちょっと照れてて、
でも安心できる時間なのかもしれない。
窓から差し込む朝の光が、
二人をやさしく包んでいた。
ソファの沈黙を破ったのは、
キルアのぽつりとした一言。
「……そういえば」
横目で×××を見る。
「お前、こちょこちょ弱いんだな」
×××が一瞬きょとんとしてから、
「え、なに急に——」
その次の瞬間。
「っ、ちょ……!」
キルアの指が、
わき腹あたりを軽く、素早く。
「や、やめ……!」
×××は思わず声を漏らして笑う。
「ははっ、無理……!」
肩をすくめて逃げようとするけど、
ソファの上じゃ動きが取れない。
キルアはちょっと楽しそう。
「……やっぱ弱い」
「反応、分かりやすすぎ」
×××は笑いながら、
「ちょ、ほんとに……!」
「やばい……!」
それに気づいたキルアは、
ちゃんと手を止める。
「……はいはい」
「ここまで」
×××は息を整えながら、
じとっと睨む。
「……今の、仕返しするから」
そう言って、
今度は×××がキルアに手を伸ばす。
「いくよ——」
こちょ。
「……?」
もう一回。
こちょこちょ。
「……それで?」
キルア、無反応。
「え、なんで……?」
場所を変えても、
全然効かない。
キルアは余裕の表情で、
「悪いけど」
「俺、そういうの効かない」
×××が悔しそうにしていると、
キルアはふっと距離を詰めて。
次の瞬間、
軽く×××を引き寄せて、
自分の膝にちょこんと座らせる。
「……っ!?」
×××が固まる。
キルアは逃がさない程度に支えながら、
にやっと小さく笑う。
「……弱点、みっけ」
声は軽いのに、
目は楽しそう。
×××は顔を赤くして、
「ちょ、キルア……!」
キルアはそれを見て、
満足そうに言う。
「安心しろ」
「今日はここまで」
でも、
しばらく離す気はなさそうだった。
ぎこちないのに、
笑いが止まらなくて。
朝の部屋には、
静かで幸せな空気が流れていた。
×××は顔を真っ赤にして、
キルアの服をきゅっと掴む。
「お、降ろして……!」
声が少し上ずってる。
キルアはそれを見下ろして、
どこか楽しそうに小さく息を吐く。
「はいはい」
言い方は軽いけど、
全然その気配はない。
むしろ、
背中に回した手に力を入れて、
落ち着かせるみたいにぽんぽん。
「暴れんな」
「落ち着けって」
×××は余計に赤くなる。
「そ、そういう問題じゃ……!」
キルアはくすっと笑って、
「はいはい」
「かわいいかわいい」
完全に流してる。
そのまま、
髪を軽く撫でる。
指先は雑だけど、
力は優しい。
「さっきまで笑ってたくせに」
「今さら照れるなよ」
×××は観念したみたいに、
小さく息を吐く。
「……ずるい」
「キルアだけ余裕で」
その言葉に、
キルアは一瞬だけ視線を逸らす。
「……余裕に見えるだけだ」
ぼそっと。
でもすぐにいつもの調子に戻って、
「ほら」
「落ち着いたか?」
×××が小さく頷くと、
キルアは満足そうに微笑む。
「よし」
しばらくそのまま、
何も話さず。
テレビの音と、
二人の呼吸だけ。
特別なことは何もしてないのに、
やけに安心する時間。
キルアは内心思う。
(……こういうの)
(悪くないどころか)
(かなり、好きだな)
×××も、
その腕の中で同じことを思っていた。
甘くて、
静かで、
幸せな朝だった。
to be continued….