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その日以来、涼ちゃんは毎日、無言で天井をぼんやりと見上げているだけだった。朝が来ても、昼になっても。
部屋の壁と天井の隅をただ目で追い続ける。
何かを考えているようでもあり、何も考えていないようでもある、曖昧な時間が静かに流れていく。
時々、看護師が部屋にやってきては、体温を計ったり脈をとったり、淡々とした声で「お薬飲んでくださいね」と言う。
優しい声も、白衣の気配も、涼ちゃんの表情にはほとんど反応がなかった。
細く、動かない指先。
枯れた声で返事をすることもなく、天井の一点を見つめたまま、
まるで周囲の全てが遠くに霞んでしまったかのように、無気力なままでいた。
食事の時間になれば一応トレーは運ばれてくるが、
涼ちゃんは箸を持とうとしないことも多かった。
𓏸𓏸が「少しでも食べよう?」と優しく声をかけてみても、
瞳は空虚なまま、ただ静かに首を横に振るだけだった。
生きている実感も、時間の流れも、
涼ちゃんにとっては、もう何も意味を持たなくなっているように――
そんな、重たく停滞した空気が部屋に満ちていた。