テラーノベル
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逆神家が監獄ダンジョン・カルケルに収監されてから、今日で10日目。
すぐに問題を起こすかと思われたが、まさかセミの寿命を越えて見せるとは、驚きしかない。
だが、そろそろ彼らにも変化が現れようとしていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇
こちらは第5層。
逆神六駆の収監されている重犯罪でも軽犯罪でもない囚人たちが巣食う階層。
「銀行強盗さん」
「うっす。なんでございましょうか、逆神さん」
「暇ですよね。普段、皆さんって何して過ごされてるんですか?」
「そうですね。カードを支給されるんで、それ使って飯のデザート賭けたポーカーしたりとか。楽しいですよ?」
「それ、小学生の給食の時間じゃないですか。恥ずかしくないんですか? 大の大人が」
「えっ!? あ、すみません。ヤメます。今日から。はい」
なお、六駆の食事は他の囚人たちが自主的におかずを一品差し出して来るので、割と満足のいく食生活を送っている。
下手をすると実家の食事よりも栄養価が高いまである。
「あの、なにかご不便がありますか?」
「銀行強盗さん。僕は暇だって言ったじゃないですか。これが不便じゃないように聞こえるんでしたら、僕の言い方が悪いんでしょうね?」
逆神六駆、なんだかいじわるな姑みたいな事を言い始める。
いくら相手がどうしようもない犯罪者だからと言って、いじめてやらないで欲しい。
「銀行強盗さんって家族いるんですか? って言うか、名前なんでしたっけ? ああ、そうだ。カット・バック・ドロップ・ターンだ!!」
「故郷に両親がいます。あと、名前はウィリアム・フリードリヒ・フォン・ラングニールです」
六駆は「はぁ」とため息をついた。
「カットバックさん」
「ウィリアムです。あ、すみません。カットバックでいいです」
「あなた、いくつですか?」
「37歳です」
「その年齢でご両親に心痛させちゃダメですよ。独身なんでしょう? 孫の顔も見せないで、裏の顔を見せるとか。とんでもない親不孝ですよ?」
「……すみません」
「刑期ってあとどのくらいあるんですか?」
「8年です」
「うわぁ! 長いなぁ! 小学生一年生が中学生になってもお釣りくるじゃないですか!!」
「……そうやって冷静に諭されると。オレ、何やってんだろうって思います。ローリングフォーメーションとか。バカだなぁ、オレ」
逆神六駆。
どういう訳か、1人の犯罪者の心を浄化する事に成功していた。
◆◇◆◇◆◇◆◇
第3層の様子はどうか。
「逆神さん、すごいなぁ! 構築スキルで家建てられるんですか!?」
「おじいちゃん、一体どこでそんなスキル覚えて来たのさ!?」
「いやいや。大した事ないですじゃ。老いぼれになってからは構築スキルを使う機会もめっきり減りましたからの。今では大きな壁を修復するのが精一杯ですじゃ」
「それでも半端ないですよ! どういう煌気の構成なんですか!?」
「うわ、それ自分も聞きたいな! 先に物質を創るんですか? それとも、いきなり固体を生成するんですか?」
「ほっほっほ。困りましたの。ワシのスキルはちと特別でしてな。創造と生成を同時に行うんですじゃ。ゆえに、煩わしい手順を省いていきなり家を創ったりできると言う寸法ですじゃのぉ」
「す、すげぇ……」
「レベルが違うなぁ」
逆神四郎。彼はいつの間にか第3層の人気者になっていた。
ボブとトムとマイクが四郎の周りから離れず、それを見ていた他の囚人たちも「なんかすげぇ話が聞けるらしいぞ」と集まって来る。
この階層は平均年齢が低い事もあり、それがお年寄りの体験談を貴重がられる要因となっていた。
「こら、貴様ら!! 監獄の中で固まるな! 離れんか!!」
「これはすみませんですじゃ。チュンさん。ワシが与太話をしたばっかりに」
この冬のソナタに出て来そうな名前の男は看守のチュン・ハオラン。
四郎の入牢している房の担当刑務官である。
「違う! お前たちが集まると、四郎さんの話が聞けないだろうが!! そちらの壁側に一列で並べ! そうすればオレも監視しやすいし、話にだって参加できる!」
「ほっほっほ。ワシのような犯罪者の話を聞いても得にはなりませんぞい?」
「四郎さん。あなたからはとても犯罪に手を染めるような雰囲気を感じ取れないんだ。オレの故郷は中国だから、同じアジア人のあなたを見ていると死んじまったじいさんを思い出す。是非、話を続けてくれ」
実のところ、逆神家の潜入作戦で最も期待されていなかった男が四郎だった。
南雲も「逆神くんが言うなら」と、半ば数合わせの感覚で参加をさせていた。
だが、四郎のコミュ力は想像を越えて行く。
伊達に長年ご近所付き合いをしていない。
考えてみてほしい。
逆神大吾を見ていれば、ご近所からは回覧板の順番すらハブられそうなものである。
それを、ちゃんと自治会費を納め、回覧板は濡れないようにビニール袋に入れて隣へ回し、地区の行事には欠かさず参加する事で、逆神家を辛うじて社会のはみ出し者へと転落させていないのは全てが彼の手腕。
既に多くの情報を得て、それをオペレーターの日引春香を通じて本部に報告していた。
◆◇◆◇◆◇◆◇
それでは、第11層。
「てめぇ! この野郎! それ、オレの隠しといた干し肉だぞ! てめぇ、この野郎!! 逆神流舐めんなよ!!」
「うるせぇ! 新入りのくせに!! つーか、干し肉の数が合わねぇと思ったんだよ!! お前、さては余分に2つ取っただろ!?」
「バーカ! 残念でしたぁ! 4つ余分に取りましたぁ!! もう既に3つは食っちゃいましたぁ!!」
「このクソ野郎が!! おい、みんなでこいつ囲んじまえ!!」
「なんだよ? かかってくんのか? 良いんだな? オレ、奥の手出しちゃうぜ?」
「な、なにぃ!? お前、まさかカルケルの中なのに、スキルが使えるってのか!?」
「看守さぁーん! 助けてくださぁーい!! みんながオレのこと、いじめるんですぅー!!」
「や、野郎!! こいつ、最低だ!! 日本人ってのはみんなこうなのか!?」
逆神大吾。
期待を裏切らず、期待値以上の働きをせず、何なら期待値をどんどん下げていく男。
ついでに日本人の評価まで下げている。
重大犯罪者の集まる第11層で軽蔑されるとは、まさに日本人の面汚しであった。
「へへっ! 日本にはな、こういう格言があんだよ! 食える時に食っとかないとねってな!!」
「シット!! こんなクレイジーなくそったれ野郎、見た事がねぇぜ!!」
騒ぎを聞きつけて、看守がやって来た。
「うるさいぞ、お前たち! 何の騒ぎだ!!」
「おおっ、看守さん! 聞いてくれよー! こいつらが新人いびりして来るんだ!!」
「またお前か、逆神……。これ以上の騒ぎを起こすと、懲罰房にぶち込むぞ!!」
「へ、へへっ。すいやせんねぇ。モリーナさん、今日もステキなネクタイで。へへっ」
第11層の看守は、探索員協会の基準に当てはめると最低でもAランク探索員レベルの者が担当している。
彼らは自由にスキルを使えるため、逆らうと痛い目に遭う。
何故それが大吾に分かるかと言えば、もう痛い目に何度か遭っているからである。
「おらぁ! 隙ありぃ! はい、干し肉食べちゃいましたー! バーカ、バーカ!! お前らがとろくせぇから美味いもん食い損ねるんだよ! なぁ、モリーナさん!! あ、どうしてオレの手を取るんすか? あれ? ちょ、ヤダなぁ、冗談ですよ。はい、まだ呑み込んでないから。ゔぉえ。干し肉なら返しますから、ね? あ、あああ! ちょっ、ちょまぁぁあ!!」
モリーナ・ザクダッシュ刑務官によって、逆神大吾は懲罰房にぶち込まれた。
通算2回目。6日ぶりの出来事である。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「逆神ぃ……?」
そんな大吾を見つめる男が1人。
何やら、逆神の名前に因縁があるのか。それともないのか。
無いならややっこしくなるだけだから、思わせぶりに呟かないでほしい。
裏五条
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ウサギ様
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#戦争
コメント
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おお、第372話!まさかのセミの寿命超えからスタートで笑ったわw 収監10日目で六駆が銀行強盗さんの心を浄化し始めてて「姑かよ」ってツッコんだ。四郎じいちゃんのコミュ力ヤバすぎて草。まさか最年長が一番の戦力になるとは思わんかった。大吾は…もうね、ほんと日本人の代表やめてくれw でも最後の「逆神…?」が気になりすぎる。続き待ってるぞ、五木さん🔥