叫んだレイブの頭に飛び乗った小さい猪が流暢な声を発す。
『了解したわよ、アタシの出番ね! ふうぅ~行きますっ! 『微回復(プチヒール)』『微回復(プチヒール)』『微回復(プチヒール)』『微回復(プチヒール)』『微回復(プチヒール)』『微回復(プチヒール)』『微回復(プチヒール)』『微回復(プチヒール)』『微回復(プチヒール)』『微回復(プチヒール)』『微回復(プチヒール)』『微回復(プチヒール)』『微回復(プチヒール)』『微回復(プチヒール)』『微回復(プチヒール)』『微回復(プチヒール)』『微回復(プチヒール)』『微回復(プチヒール)』『微回復(プチヒール)』『微回復(プチヒール)』『微回復(プチヒール)』『微回復(プチヒール)』『微回復(プチヒール)』…… ふうぅ~、コレで治ったでしょぉ? ふううぅぅ~』
レイブの横でペトラの連続スキルを見守っていたギレスラが声に出す。
『ンガァッ! レイブ、チ、チガトマッタヨォ!』
『よ、良かったぁ~、ブヒイィ~』 カクッ
「ほっ…… 何とか間に合ったかぁ~、ケホッケホッ、うっ! 痛たたた…… ぐぅ……」 カクッ
微(プチ)とは言え、回復スキルを限界越えで使用し捲ってしまったペトラと、腹部にダメージを受け咳き込みながらもヴノを守り抜こうとしたレイブの二者、とうに限界を越えていたのであろう…… 皆が見逃していた出血が停止された事を聞いた瞬間、揃って安堵の言葉を口にして意識を失うのである。
この昏倒(こんとう)に依り、この場で意識を保っている存在は、大きなシャイヤーのザンザスと小さな稚竜、ニーズヘッグのギレスラ、二者のみとなるのであった。
ザンザスは足元に立つ豆粒みたいな竜に言う。
『なんとかなって良かったなぁ、小さなニーズヘッグ、ギレスラだったかな? 約束通り、皆が目覚めたら背に乗せて草原を疾駆(しっく)してやろうな♪ 何にしても良かった良かった! 眠りに落ちたばかりのお嬢や北の魔術師バストロ、フルダークネスのペトラ嬢やレイブ少年より、恐らくは我が兄、ヴノが目覚める方が早いだろう! それまでは私達も暫(しば)し休もではないか、小さなニーズヘッグよ…… 此度(こたび)はそなたの観察力と慧眼(けいがん)に助けられてしまったな、礼を言わせてくれ、ありがとう』
豆竜はその身を覆った真紅の鱗を更に鮮やかな物に変えて答えた、照れているのだろうか?
『エエェッ、ソ、ソンナコトナイヨォ-、グウゼン、ホントウ、ニ、グウゼン、ヴノガチヂンダコトニキガツイタダケナンダァ、グワァ! デモ、ヨカッタ、ヨ、コウシテ、ヴノガブジダッタカラァ、アレ、アレレ? ヴ、ヴノ? エ……』
『むむっ? どうしたんだギレスラ? まだ何か気になる事でも有ると言うのか?』
ギレスラは全身の鱗をやや青褪めさせながら答える。
『イ、イキシテナイヨ! ヴ、ヴノジイッ! アアアァッ、コドウ、モ、トマッチャッテルヨオゥ……』
『な、何ぃっ! 何だとぉっ! それ、やばいじゃないかっ! え、えっとぉ、ええっと、ど、どどどど、どうすればぁーっ?』
なりはデカイがザンザスさんはどうやら頼りにならないらしい、素早く判断をしたギレスラは、大きな声で頼りになりそうな存在に対して、この危機を報せる事としたのである。
『グラアァーアァー! グログラアァァー! グウゥララアァァー!』
うん、あれだ。
危急である事と、自分だけでなく仲間たちも含んだ危機を伝える竜語の叫びである。
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