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むかぁし昔、その昔。あるところに悪知恵の働くキツネがおったそうな。
ある冬の寒い日に、キツネは大層腹を空かせて、どこかに食べる物はないかと探していた。
川辺まで来ると、ひとりの年老いた漁師が川の氷に穴を開けて 魚を釣っていた。漁師が釣り上げた魚を見て、キツネは
「うまそうだなぁ」と、なおも見ていると、漁師は釣った魚を ソリに乗せて帰るところだった。
「よぉし、あの魚を失敬してやろう」
キツネは漁師を先回りして、雪道の上に倒れて、死んだふりをしていたんだと。
すると、漁師は
「おやおや、キツネの行き倒れだ。こりゃ拾い物だ。持って帰って、あとで皮をはぐべ」と言って、キツネをソリに乗せて、また曳いて帰って行ったんだと。
キツネは、ソリを曳く漁師が後ろを振り返らないことをこれさいわいと、大きな魚を一匹くわえてソリから降りて、森の中へと逃げたんだ。
森の中で、キツネがうまそうに魚を食べていると、そこにクマがやって来たんだと。
「キツネどん、うまそうな魚だな。どこで獲ったんだ?」
キツネはクマに
「釣ったんだよ」とウソを教えた。
「おらも、そんなでっかい魚を獲って食いてえな」
するとキツネは
「この道を行くと川に出るべ。氷が張っているけど、丸い穴があいてるよ。お前の尾っぽをその中にたらして、魚がかみつくまで待っていればいい。魚がかみついた時に尾っぽを引き上げれば、造作もねえだろ?」
クマは、これを聞いて喜んで川へと向かった。
川は氷が張っていて、キツネが言った穴があるにはあったが、薄す氷が張って穴がふさがっていたんだよ。
クマは掌(て)で氷をほじくり、丸い穴を開けて そこに尾っぽをたらして 座って待つことにした。
やがて、クマの尾っぽがチクリとした。
「これは小魚だな。おらが釣るのはでっかいのだ」と言って、なおもじっと座っていたら、
今度は尾っぽの根元までズンと痛みがきた。
「これこそでっこい魚だ!」 クマはそう思って 尾っぽを引っ張ってみたが、尾っぽは持ち上がらない。
「これはよっぽどでっこい魚だべ!」
ワクワクして、ありったけの力で尾っぽを持ち上げたんだと。すると、その途端にポキンと音がして、クマはもんどりを打って転がった。
「いて、痛て、痛ててぇ!!」
いったい、どれだけでっかい魚が釣れたのかと、キョロキョロと探してみたが、魚は無かった。
クマは、尻の痛さをこらえながら、よおく見てみると、氷の穴はガッチリとふさがっていて、そこには 凍って根元から折れたクマの尾っぽが ニョキッと立っておったんだと。
クマの尾っぽを見たことがあるかい?
クマの尾っぽが短くなったのは、むかぁし昔に こんなことがあったからなんだそうだよ。
むか〜し、ぽっこり。お話はこれでおしまいだよ ☺️✨