突然だが異世界転生である。
……異世界転生である。正直自分でも何がどうなってこのような経緯に至ったのか全く事態が把握できていない。街中を歩いていて、北風と共にクソでかい落ち葉が顔面にヒットしたと思って咄嗟に目をつぶったあと、瞼を開けると見覚えのない場所に自分は立っていた。
ついさっきコンビニで買ったホットコーヒーを手に持って。
なぜ異世界転生したという事を理解できたって?それは自分が明らかに日本ではない街のど真ん中に立っているからだ。日本ではないというか、今の世界にもこんな町はきっとないと思う。
そして異世界転生なんで常識的に考えて有り得るはずがない、普通ならそう考えるだろう。
_遡ること何週間か前。
この前愚弟がゾロゾロとお仲間を引き連れて家に遊びに連れてきた時、奴がいたのだ。奴が。ロン毛小僧である。
ロン毛小僧からの自分へのアプローチをどうにかこうにかして妨げることは出来ないかと考えた挙句、俺は画期的な方法を思いついたのだ。
そして俺は髪を黒く染めた。
その結果ロン毛小僧の反応は薄くなった一方、三郷とかいう弟の友人から
「俺の運命の相手って綾人の兄ちゃんやったんか!?(うろ覚え)」
というセリフを引き出してしまい、黒髪になることで弟に見た目が寄ってしまったせいか、別の厄介事を引きつけることになってしまったのだ。
どういう訳だと困ったものの、まあ一旦俺はその日寝た。しかし、だ。翌日目を覚まして洗面台へ向かうと、なんと染めた俺の髪は元に戻ってしまっていたのである。
怖すぎるだろ。そして俺の購入したスプレーの代金は、財布を確認したところ戻っていなかった。
ということは、だ。世界が強制的に何らかの力で俺がロン毛野郎とのフラグを阻止ししようとしたことを、阻止したのである。そんなわけでこんな風に有り得ない力が働く世界だ。まず絶対BLになる世界というもの自体がもうおかしい。なら異世界転生という事象が起こっても何ら違和感はないのである…………と言っても自分が受け入れられるかは別だ。
待て待てまずは今の自分の状況を整理しよう。
分かりやすくいえば街の住人全員がどこを見渡してもロールプレイングゲームに出てくるような衣装を身に纏っているのである。自分の今の格好は黒のタートルネックにグレーのジャンパー、黒のスキニーパンツにブラウンの靴。そしてニット帽まで被っている。手にはコンビニの袋をぶら下げている。もう片手には熱々のコーヒー。もうお分かりのはずである。
…自分だけ物凄く目立ってしまっているのだ。
街の中にぼけっと立ち尽くしている暇はない。街の住人がどんどん自分に目を寄せ始めている。これは不味い。状況整理は後にしてまずはここから立ち去らなければならない。






