テラーノベル
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終了のベルが鳴った。
同時に床が現れる。
湊は崩れるように床へ落ちた。
全身が震えている。
息ができない。
その時。
パチ、パチ、パチ……
拍手が聞こえた。
顔を上げる。
暗闇の奥に、一人の人間が立っていた。
スーツ姿の男。
口元だけが、不気味に笑っている。
「おめでとうございます」
男は深々と頭を下げた。
「貴方は、“鬼の花嫁”に選ばれました」
静寂が落ちた。
湊は床に座り込んだまま、男の言葉を理解できずにいた。
「……は?」
喉が掠れる。
スーツ姿の男は、まるで結婚式の司会者のような笑顔で拍手を続けていた。
「ですからぁ、貴方は鬼様に選ばれたんですよ。光栄なことです」
「意味がわからない……。生き残ったら、帰れるんじゃ――」
「あれぇ?」
男は首を傾げる。
「そんな説明、一言でもしましたっけ?」
言葉が詰まる。
確かに、アナウンスは“生き残れ”と言っただけだ。
解放するとは言っていない。
男は笑みを深くした。
「鬼様はとても強い。でも数が少ない。だから花嫁を選び、子を残すんです」
「……ふざけるな」
湊は立ち上がろうとする。
だが足が震え、うまく動けない。
鬼は黙ったまま湊を見下ろしていた。
白い仮面。
その奥の視線だけが、異様な熱を帯びている。
「俺は男だぞ……!」
叫ぶ。
「子供なんて産めるわけ――」
「産めますよ」
男は即答した。
「鬼の遺伝子は、人間の常識と違いますから。性別なんて関係ありません」
背筋が冷える。
鬼がゆっくり湊へ近づく。
逃げたい。
だが身体が動かない。
恐怖なのか、疲労なのか、それとも――。
鬼の大きな手が、そっと湊の頬に触れた。
その瞬間。
今までの化け物とは違うと理解した。
優しい。
その手は驚くほど温かかった。
鬼は静かに湊を抱き上げる。
抵抗する力は、もう残っていなかった。
遠ざかっていく廃墟。
暗闇の向こうへ連れて行かれながら、湊は最後に司会者の男を睨む。
男はニコニコ笑いながら、大きく手を振っていた。
「お幸せに〜♪」
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