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ああ、第2話すごく良かったです……! 翡翠くん、めちゃくちゃ男前ですね。「めちゃくちゃに可愛がってあげましょうか」の反撃が痛快で、こんな高校生に絢人さんがたじろぐシーン、何度も読み返しました。あの計算尽くの大人が素で「は?」ってなるの、最高です。でも絢人さんの「逃がさない」発言でまた立場が逆転しかけてるのも、二人の駆け引きが楽しくて仕方ないです。次が待ち遠しい……!
絢人…「」 翡翠…『』
ガラス張りのスタイリッシュな建築事務所兼カフェ。夜の8時を回り、店内には閉店作業をするふたりだけの音が響いていた。
『絢人さん、これ明日の分の仕込み終わりましたよ。……って、またそんなところで書類見てる』
エプロンを外した千石翡翠が、カウンター奥のオフィススペースを覗き込む。
デスクには高級そうなスーツのジャケットを脱ぎ捨て、腕まくりをした鷹司絢人がPCに向かっていた。知的なシルバーフレームのメガネの奥で、整った眉がかすかにひそめられている。
「ああ、翡翠くん。お疲れ様。……うーん、この図面、もう少し修正が必要かな」
『ダメですよ、今日もう何時間ぶっ続けで作業してるんですか。ほら、温かいスープ淹れたんで飲んでください。ちゃんと胃に入れてから仕事!』
翡翠がマグカップをコトンとデスクに置く。世話焼きで根がお人好しな彼は、こうして無理をする年上のオーナーを放っておけないのだ。
絢人はメガネを外し、目元を指で押さえながらふっと柔らかく微笑んだ。
「ありがとう。君は本当に気が利くね……俺の可愛いお世話係さん」
『なっ……! 子ども扱いしないでください。俺だって17歳ですし、男ですよ…?』
ムッとしつつも苦笑いをする、翡翠。その瞬間、彼の鮮やかな緑色の瞳が、室内灯の光を反射してエメラルドのように煌めいた。
(……本当に、無防備だな)
絢人の瞳の奥で、暗い熱がフッと灯る。
仕事で疲れたフリをすれば、この少年は必ず自分を心配して距離を詰めてくる。それが絢人の計算通りの「罠」だとも知らずに。
「ねえ、翡翠くん」
低く甘い声で名前を呼ばれ、翡翠が『はい?』と顔を上げた瞬間――ガタリ、と椅子が鳴った。
気づいたときには、絢人の長い手が翡翠の腰を抱き寄せ、そのままデスクの上に押し留めていた。
『わ、絢人さん……!? 距離、近くないですか!?』
「君が可愛すぎるのが悪いんだよ。……ねえ、知ってる? 君のその緑色の目、見つめられていると吸い込まれそうになる」
絢人の顔が至近距離まで迫る。大人特有のシトラスと煙草の香りが漂い、翡翠の心臓が跳ね上がった。
いつもは完璧で頼れる大人の絢人が見せる、執着に満ちたドSな目つき。
(っ……またこれだ。この人、すぐこうやって余裕ぶって俺を呑み込もうとする)
普通なら怯えるか、真っ赤になって逃げ出す場面。しかし、翡翠はただ流されるだけの「器」ではなかった。
『……絢人さん』
翡翠は一瞬だけ赤くなった顔をキュッと引き締めると、逃げるどころか、あえて絢人の胸板をぐっと押し返した。そして、不敵にニッと笑ってみせる。
『余裕ぶってますけど、あんた相当疲れて焼きが回ってますよね? ……そんなに俺に構ってほしいなら、別にいいですよ。なんなら今夜は、俺が絢人さんをめちゃくちゃに可愛がってあげましょうか?』
「……は?」
思わぬ反撃に、あの完璧な鷹司絢人が一瞬だけ素で目を見開いた。
翡翠には「攻め」だの「受け」だのという概念はない。好きなら自分が抱くのも抱かれるのも、どちらでも構わないのだ。自分の緑の瞳を真っ直ぐ絢人の網膜に焼き付けるように見つめ返し、翡翠は絢人のネクタイに手をかける。
『たまには俺に甘やかされて、翻弄されてみたらどうです?』
「……っ」
完璧な大人の理性のタガが、音を立てて外れかけた。
自分だけが支配していると思っていたのに、この17歳は無邪気に自分の懐へ飛び込み、あろうことか「男として」攻め立ててくるのだから。
絢人は深々とため息をつき、逃げ場を無くすように翡翠の両手をデスクの上に押し留めた。その口元には、狂おしいほどの愛しさと独占欲を孕んだ笑みが浮かんでいる。
「……本当に、君は俺をどうにかするのが上手いね、翡翠くん」
『あ、ちょっと……絢人さん、目が本気――』
「生意気な口を利いたお仕置きだ。今夜は絶対に逃がさないから、覚悟して?」
深くなった絢人のキスが、翡翠の言葉を甘く塞いでいく。
翻弄しようとして返り討ちに遭う男前な高校生と、彼に狂わされ続ける激重な大人の、長くて甘い夜が始まろうとしていた。
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