死ネタ。つAが出てきます。バッドエンド?
inm視点
ベッドから起き上がる。錆びたフレームを無視して、リビングに駆け込んだ。
「みんなおはよー!!」
拠点いっぱいに明るい声を響かせると、7人が一斉に振り向いた。
「おはよ、今日は元気やな?」
「いつも元気でしょ」
「それディティカ基準じゃ」
「はあ?ディティカがいつも元気ない見たいな言い方やめてもらって良いですか??」
「事実だろ」
「ぶっ飛ばすぞまじで」
「物騒なこと言わないでくださいよ」
「お前が始めた物語だろ」
「もーーーうるさい!!!!」
8人も居ると何日経っても会話は絶えない。そこが彼らの良いところでもあるのだが。会話に気を取られていたが、今日は朝からやけにジューシーな匂いがする。
想像通り、ウェンがキッチンで 唐揚げを揚げていた。学生服にエプロンを巻き、片手にハイボールを握り、笑顔でオレに呼びかける。
「おはよ〜!流石にお腹減ったでしょー?朝からガッツリ唐揚げでKPっしょ!」
彼の手元には油と鶏肉。ジュウジュウと揚がる音と、香ばしい匂いが感じられる。空腹を感じていたオレには、涎が垂れそうになるほどの見た目だった。
「お前最高じゃん…。いつもより多めで!」
「了解! 大盛りでいくよー!」
ウェンは笑い、缶を掲げる。オレもグラスを掲げ、彼と一緒に大きな声で叫んだ。
「KP!」
すぐ隣では、カゲツが壁に凭れ、わたくも君を肩に巻いてクナイを磨いている。鋭い目がオレを捉え、静かな声で言う。
「いなみ、朝の情報。東の廃墟で敵が動いとる。多分、仕留められると思うけど」
彼はクナイを軽く投げて受け止め、忍者のように影と一体化する仕草を見せる。オレは真剣な顔で頷く。
「流石、カゲツ。敵の動きは任せた。前線よろしくね!」
「今日もいい動き期待しとるよ」
「カゲツと一緒なら、どんな敵も怖くないし!」
カゲツは微笑み、オレの唐揚げを一つ奪って行った。初期の頃に比べたら、なかなかに 信頼が生まれた方だと思う。
部屋の中央では、リトがダンベルを持ち上げ、汗を拭っていた。
「ライ!朝から気合入れねえと、パワー出ねえぞ?ほら、一緒に筋トレ!」
きりんちゃんを胸に、筋肉を誇示するように腕を曲げる。オレは笑いながら、近くの鉄棒を掴んで懸垂を始める。
「リトのパワーには負けないぞ !」
「それでこそライ! 変身したら、敵なんてぶっ飛ばす!」
ぎゅっと拳を握る。
「よし、今日もパワー全開!」
自分に言い聞かせるように叫ぶ。汗が床に落ちる。リトの熱い息遣いが聞こえた。
その横で、マナは香水ボトルを手にプッシュする仕草を見せ、陽気に歌い出した。
「おはYo、ライ! 朝からショータイムだぜ!」
「は?wwwwwww」
彼はギャグとラップをかまし、くるりと踊る。懸垂をする手が震え、思わず手を話した。
「Check this out! 今日のセットリスト、最高だろ?」
彼のサングラス姿にオレは手を叩き、笑いながら叫ぶ。
「しぬwお腹痛い 」
何処から持ってきたのか分からないマイクを握る。オレはリズムに合わせて体を揺らし、歌う。
「Yeah, let’s go!」
オレの耳にはマナの歌声が響き渡った。
イッテツが部屋の隅でデバイスを振り、叫ぶ。
「ライくん!朝から悪を即斬だ!ハート全開でいくぞ!」
彼はよく分からない呪文を叫びながら、デバイスもどきを華麗に回転させる。感情豊かな声が部屋を震わせる。
「悪をぶった斬る絶好の朝!」
「ライくんも絶好調だね!!」
イッテツの動きに合わせてハンマーを振るふりをすると、彼は満足そうに微笑んだ。
「はは、ライくん最高。付き合ってくれてありがとう」
「オレもこういうの好きだからね」
埃と一緒に、敵が倒れて舞う光景が見えた。
星導は窓辺に立ち、触手を揺らしながら静かに言う。
「素敵ですね、ライ。星たちは俺たちを祝福してる」
彼は穏やかな笑みを浮かべ、空を指差す。
「またテキトーなこと言ってる。まだ星出てないっての」
しかし、窓の外を見上げるとどこか星が見えてしまうような気がした。
「星導、今日の戦い勝てると思う?」
「当たり前じゃん。星が勝利を予言してる」
星導は大きく頷く。曇った空でも、満天の星空が見えたようだった。
小柳は部屋の隅でオトモを撫でながら、ぐうたらな声で言う。
「ライ。朝から妖魔が動いてるらしい」
彼は剣を軽く振り、猫がニャッと鳴く。
「今日も頼むよ!」
「まぁ終わったら寝るわ」
ロウは気楽に笑う。彼の猫に手を伸ばし、撫でた。 柔らかい毛並みだった。
コツン、とオトモが頭に当たる。オトモの反射がオレの顔を映した。
「……もう、居ないんだよね。分かってるよ、オトモ」
本当に?と言わんばかりに首を傾げるオトモを優しく撫でた。
「ホントだって。ちょっとだけでも、夢が見たかっただけ」
オトモに映るオレの髪はボサボサ。自分の顔のやつれ具合があまりにも滑稽で苦笑する。
「ねえ、オトモ、オレが居なくなったら悲しい?」
「そろそろほんとに、しんどくなってきちゃった。皆の元へ行きたくなってるんだよね、オレ」
オトモは反応しない。瞬きをすると、そこにオトモなんて居なかった。
「あー、そっか…笑」
夢の中でも曖昧になってきた彼らとの思い出に、浸っていたいだけだった 。今日こそは、今日こそはって。今日こそは、本当に生き返るかもしれない。そんなのあり得るわけがないのに。
「とっくの昔にもう全部、失っちゃってたんだなぁ…笑」
自分という存在は、この拠点を満たすには小さすぎたみたいだ。
コメント
2件
めっちゃ、切なすぎます、、😭 でも、こういうの大好きです。ありがとうございます!!!