〜太陽side〜
この子なら受け入れてくれる。
俺は全て打ち明けた。
父はきつくて理不尽な性格をしていたので、先輩後輩関係なく、会社の人達に嫌われているような人だった。
帰ってきては俺の目につかないところで母に暴力を振るっていた。
本当は気づいていた。
俺が父を殴っても守りきれないのはわかっていたから、臆病な僕は知らないふりをしていた。
俺が誤ってその場に出てしまった時、
「何してるの?」
って聞いたら、
「父さんは母さんを愛しているんだ、」
なんて言いながら血を垂らして頬が赤紫に腫れた母の顔を光の無い目で見つめた。
お母さんは無理やり笑顔を作っているようだった。
父はいつも朝まで家に帰らなかった。
母さんは、
「私たちのために仕事を頑張っているのね」
って笑顔を見せた。
しかし、ばったり父の同僚に遭遇した時に聞いた話だと、
「いつも定時の午後9:30に仕事を終えて帰っている」
らしい。
父が不倫している事を悟った。
しばらく迷ったが、母に全部話した。
ボロボロの体の母が、帰ってきた父を問い詰める。
「俺のやる事に口答えする気か?」
と母の腫れた顔を踏みつけにした。
それでも母は
「そうよね、ごめんなさい」
って、笑っていた。
「どうして笑うの?」
って聞いたら、
「それがあの人なりの愛情だから、お母さんは殴られても蹴られても嬉しいのよ」
ってまたあの笑顔を俺に向けた。
その顔が不気味で不愉快で、俺はいつも家から逃げ出したい気分だった。
でも、母を見離せないから。
俺は錆びた包丁を父に向けて、でかい体に後ろから覆い被さるように父の左胸を、深く、ゆっくり刺した。
「うっ!!、うぅっ、、!なんのつもりだ、、」
苦しんでいる父の顔を見つめた。
同じ位置に何度も灰色に濁る刃を刺して、ゆっくり抜いて、思い切り体内で刃を回したりしてたら直ぐに死んだ。
死んでもなお、俺は怒りを全てぶつけるように皮膚に鋭い刃を走らせた。
部屋にはビリビリィッという、皮膚が荒い包丁で切り裂かれる音が響いた。
その後も大変だった。
細かくなった父の身体を広い庭に埋めた。
それが俺から父への、最初で最後の愛だった。
母さんは毎日殴られてたくせに父さんの死にボロボロ涙を流した。
許せなかった。
母さんのために頑張ったのに父さんを殺した俺を母さんは罵った。
あの笑顔は作ってなかったんだって気づいた時、腹の奥が燃えるような苛立ちを覚えた。
「そんなに父さんと一緒がいいかよ。」
俺は母さんのこともバラバラにした。
それから、家にいるだけで、家の庭を見るだけであの光景がフラッシュバックするようになって、その度に必死で笑顔を作っている。
太陽「犯罪者なんだよね、俺、」
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