何か が 変わった 。 それ は 、 目 に 見て 分かる よう な こと では なくて 。
「 ね ~ 赫 、 今日 ずっと ぼ ~ っ と してる 、 体調 悪い の ? 」
「 いや 、 違う よ … 」
『 今日 』 の 遊園地 は 、 すごく 遠い 世界 の 煌びやか な 場所 だった 。
いつも と 同じ な の に 、 違う 場所 。
「 あ 、 風船 … ! 赫 ~ … ? 」
桃 は 強請る よう な 視線 を 俺 に 向ける 。 ここ まで は 昨日 … いや 、 『 今日 』 と 一緒 。
「 何色 に す ん の ? 」
「 え 、 買って くれる の ? 」
無邪気 に 笑う 桃 の 姿 を 、 まだ 見て いたく て 。 きっと また 桃 色 の 風船 を 選ぶ 、 そう 思って いた の に 。
でも 、 『 今日 』 の 桃 は 穏やか だった 。
「 この 色 、 すっごく 綺麗 だ ね 。 薄紅 色 って 言う の かな … ? 赫 と 俺 みたい … 」
大人びた 雰囲気 さえ 感じた 。 いつも はしゃぐ 桃 が 、 今日 は 隣 で 微笑み ながら 俺 を 見詰めて いる 。
「 じゃ 、 じゃあ … これ 買う か 。 」
「 やった ~ … ! 」
口 では そう 言い ながら 、 全く 違った 笑顔 を 向ける 桃 。 無邪気 な 声 と 、 大人びた 表情 が 噛み 合わなくて 気持ち 悪い 。
「 こ 、 この 色 1つ … 」
風船 を 受け 取って 、 桃 に 渡そう と した その 時 だった 。
紐 を 握った 瞬間 、 胸 の 中 に 何か 流れ 込んで くる 。 それ は 爆ぜた 。 熱く て 、 痛い 。
「 ぁ 、 ああ … っ … ! ! 」
「 っ 、 赫 … ! ? 」
鋭い 頭痛 が 走って 、 立って は 居られなかった 。
俺 の 視界 に ちらつく の は 、 心配 する 桃 じゃ なかった 。
… あの 日 の … 血 だらけ の 桃 。
嗚呼 、 これ は … 俺 の 、 記憶 だ 。
あの 日 の 桃 と 、 目 の 前 に いる 桃 が 重なって … 記憶 が 鮮明 に なった 。
痛い 。 痛い 、 いたい … っ …
全身 が 軋んだ よう な 感覚 。
視界 の 端 に 流れる 赤 色 。
口 の 中 で 滲む 血 の 味 。
漂う 煙 の 香り 。
人々 の ざわめき 。
… 桃 の 、 嗚咽 。
五感 に 全て が 蘇る 。
やけ に 手 の ひら が 熱くて 、 それ は とても 血 まみれ で 。
でも …
今 にも 消えそう だ が 、 かすか な 桃 の 温もり も 確か に あった 。
俺 が 、 命 を 掛けて 守った お前 の 感触 や 熱 。
もう 目 の 前 は 真っ赤 に 染まって いた 。
その 時 だった 。 桃 の 荒い 息遣い で 我 に 返る 。
桃 が 手 を 握って 、 震える 俺 の 背中 を 撫でて くれて いた 。
「 大丈夫 … 俺 が 居る よ … 」
そう 呟く 桃 の 目 に は 、 涙 が 浮かんで いた 。
「 ず ~ っ と … 傍 、 に … 居る から … 」
涙 声 で 、 桃 は 俺 に 優しい 言葉 を 紡いで くれた 。 桃 は 、 つい に 泣き 出して しまった 。
桃 は 、 俺 に 抱き 着いて 肩 を 震わせて いる 。
また ワンシーン が 見えて 。 大事 な 記憶 な の に 。
俺 は 、 その 光景 から 必死 に 目 を 背けた ん だ 。
事故 の 瞬間 、 きっと 俺 は お前 を 抱き 締めた ん だ 。
トラック に 背 を 向けて さ 。
完全 に は お前 を 助けられなくて 。
風船 は 、 いつ の 間 に か 空 へ と 消えて いった ん だ 。 真っ黒 な 空 に 。
俺 は 、 息 も 絶え ゞ で 。
お前 は 、 途切れ かける 意識 の 中 で 泣いて いて 。
2人 とも 血 まみれ で 。
痛くて 、 苦しくて 。
でも … 最悪 の 結末 は 、 俺 が 覆した 。
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