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シンカスル悪夢⑩
あれから………数日後…
現在の私には彼を救う手立ては何ひとつ無い。
医師として…絶望と不甲斐なさを感じ、それと同時に去来する感覚。
これほど虚しいものは無い。
今日も…また彼の病室から発狂した大きな奇声が聞こえる。
ナースから聞いた話では…彼は浪人してまで合格した有名な大学の卒業を間近に迎えようとしている。
卒業後は…子供が好きだとかで小学校の教師になるとか言う話も聞いている。
そんな未来への希望と情熱に満ち溢れる中で…突然、訪れた悲劇に終焉があるとすれば………
自らの死を選ぶか…アイツに殺されるのを待つのか。
そのどちらかになるのだろうか!?
まぶたを閉じる度にヒタヒタと…にじり寄るアイツが彼を見逃すとは思えない。
いつだったろうか…他の医師から専属のカウンセラーやセラピストやリハビリのトレーナーなどを勧める話もあったが…
そんな次元の話では無い事は…すでに眼前で彼の悪夢に蝕まれていく様子を見た私にはわかる。
否…指をくわえて見ている事しか出来なかったのだ。
そんな腑甲斐ない…私に何が出来るだろうか。
それとは…裏腹に私の尊敬をしていた教授や院長達は…とても『イイ』研究対象が手に入ったと、はしゃいでいたっけか?
正直…反吐が出そうなくらいで医師を辞めたくもなった。
彼と過ごした…あの悪夢との死闘の日々は、私の心に大きく深い影を落とした。
願わくば…彼が悪夢に打ち勝つ日を心の底から祈って、もう一度、私は医師としての人生を歩み続けるのであろうか。
《ホッホッホッホッホ~!
さぁ、如何でしたでしょうか?
…そうです。
現在…過去…あなたは悪夢に、うなされた経験はありませんか?
それも理由もわからずに恐ろしい何者かに必死に追い掛けられる夢を!
今宵あたり…あなたの夢にもアイツが現れるかも知れませんよ?》
「フフフフフ、ツギハキミトアソビタイナ。」
この悪夢には…やはり出口など無いメビウスの輪のようにグルグルと永遠に廻るだけだろうか。
悪夢の感染者は…今尚、増え続ける。
~終~
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