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部屋に駆け込み、ドアを閉めると同時にベッドに倒れ込んだ。
「……なんなの、もう」
胸の鼓動はまだ早いまま。
亮にからかわれたことよりも、悠真と並んで歩いた時間が頭から離れない。
――髪を払ってくれた仕草。
――「またな」と笑った横顔。
思い出すたびに頬が熱くなる。
子どもの頃から知っているはずなのに、知らない一面ばかりが目に映ってしまう。
「妹ちゃん、だから……そう見えるだけ」
無理やりそう言い聞かせても、胸の奥は苦しくなるばかりだった。
咲は枕に顔を埋め、熱を持った心を必死に隠した。