テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
2,212
深い傷を抱えながらも、必死に「強い自分」を演じ続けてきたグク。彼が限界を迎え、テテにだけその弱さを見せるまでの物語です。
グクside
冷たい汗で目が覚める。心臓の音がうるさくて、耳の奥で誰かの怒鳴り声がリフレインしている。
また、あの頃の夢だ。
「……はぁ、はぁ……っ」
喉の奥までせり上がってきた吐き気を、無理やり飲み込む。
親に怯えていたあの頃の僕は、泣くことも、助けを呼ぶことも許されなかった。弱さを見せれば、さらにひどい言葉が飛んでくるだけだったから。
大人になり、大切なヒョンたちに囲まれても、その「癖」は抜けない。
昨日から体が重い。頭は割れるように痛いし、視界がぐらぐらする。
練習中、激しく踊るたびに胃がひっくり返りそうになるけど、カメラの前では笑ってみせた。食事の時間も、喉を通らない肉を無理やり口に運んで、バレないようにトイレで吐き出した。
大丈夫だ。僕は「黄金マンネ」だから。
弱音なんて、吐き方も忘れちゃったよ。
その日の夜、熱はさらに上がった。
ベッドに入っても、暗闇がそのまま過去の記憶に繋がっている気がして、怖くて目を閉じたくない。でも、意識は朦朧として、抗えない眠りに引きずり込まれる。
(やめて、ごめんなさい、助けて——)
体が勝手に跳ねる。逃げようとして、足がもつれた。
大きな衝撃と共に、僕は床に叩きつけられた。
テテside
喉が渇いて、水を飲みに部屋を出た時だった。
廊下の突き当たり、ジョングギの部屋から「ドンッ」という鈍い音が聞こえた。
「……グガ?」
返事はない。ただ、ドア越しに漏れてくるのは、今まで聞いたこともないような、ひどく苦しそうな荒い呼吸音。
胸騒ぎがして、迷わずドアを開けた。
「ジョングガ! 大丈夫か!?」
床に倒れ込んでいたあいつは、全身汗びっしょりで、髪が額に張り付いていた。
体はガタガタと震えていて、虚空を掴むように指先が彷徨っている。
慌てて駆け寄り、その肩を抱き寄せた。
「おい、しっかりしろ! グガ、僕だよ、テヒョナだよ!」
声をかけても、ジョングギの目は泳いでいて、焦点が全く合っていない。
まるで今この場所ではなく、どこか遠い、恐ろしい場所に閉じ込められているみたいに。
「はぁ、っ、はぁ……っ……ごめん、なさい……っ」
謝らなくていい。そんなに苦しそうに呼吸しないでくれ。
熱を測るまでもなく、肌に触れた瞬間に火傷しそうなほどの熱さが伝わってきた。
こんなになるまで、お前は一人で何を抱えてたんだ。
「大丈夫だ、ここにいるよ。もう怖くないから」
僕はあいつを床から抱き上げて、背中をゆっくりとさすり続けた。
どれくらい時間が経っただろうか。
ジョングギの瞳に、少しずつ、僕の姿が映り始めた。
グクside
視界がゆっくりとクリアになる。
目の前にいたのは、僕を責める誰かじゃなくて、泣きそうな顔で僕を抱きしめるテテヒョンだった。
「……ヒョン、」
声がかすれて、うまく出ない。
体中が熱くて、内臓がぐちゃぐちゃにかき回されているみたいだ。
ずっと、隠さなきゃいけないと思ってた。心配させちゃいけない、迷惑をかけちゃいけないって。
でも、ヒョンの手の温もりに触れた瞬間、糸が切れた。
「……気持ち悪い……っ」
生まれて初めて、自分から口にした「弱音」。
ヒョンは少し驚いた顔をした後、すごく優しく笑って、僕の頭を撫でた。
「……うん、辛かったな。もう我慢しなくていい。全部、吐き出しちゃえ」
その言葉を聞いた瞬間、目から熱いものが溢れた。
高熱のせいか、それともずっと止まっていた時間が動き出したせいか、涙が止まらない。
僕はヒョンの服をぎゅっと掴んだまま、子供みたいに声を上げて泣いた。
今夜だけは、あの頃の小さな僕のまま、甘えてもいい気がしたんだ。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!