そっかぁ、シロがそんなことを言ってたのか。
また涙が止まらなくなったじゃないか。――どうすんだよぉ。
ほんと何言ってんだよぉシロ。泣かすなよなぁ、バカやろう。
こうなったら追っかけて行くしかないよな。
待ってろよシロ、今行くからなぁ!
まずは、どんな世界なのか聞かないことには何も始まらないな。
――異世界――
若干の憧れもあるしなぁ。
魔法とかもあるのかな? ラノベに書いてあるようなところなのかなぁ。
ドラゴンいるのかな? お金は金貨とか銀貨なのかなぁ。
人間以外にも亜人とかいるのかなぁ? 勇者とか聖女とかも居たりして。
ご飯は、黒パンは、エールは…………
「高月様、高月様! 大丈夫ですか。たかつきさ~ま~!」
女神さまは立ち上がって叫んでいる。
「はい、高月 玄です。すっ、すいませんでした~」
また、もの思いに耽っていたようだ。――女神さまごめんね!
「どうかなさったんですか? 涙を流したかと思えば、途中からは何やらニヤニヤされていたようですけど」
ひぇ~、ジト目ですよジト目!
あるスジの方には盛大なご褒美だよなぁ。
しかし、美人さんだと、どんな顔をしても許されるよなぁ。
おっといけない、いろいろと聞いておかなければ。
「すいません、こちらの世界というのは具体的にどのような所なのでしょうか?」
すると、女神さまは未だ『ジト目』のまま話をしだした。
「こちらの世界である ”サーメクス” は地球とほぼ同じ球型の惑星になります。この惑星には大きな大陸が4つあり、交易が盛んなところもあれば、閉鎖的なところもございます」
さらに女神さまは、
「聖獣であるシロさんが転生された地域はもっとも大きな大陸です。そこには大小様々な国が存在します。また、人族をはじめいろんな種の亜人族たちも共に生活しております。それから、このあたりの国々の文化水準は地球でいいますと『中世~近世ヨーロッパ文化』といったところでしょうか」
俺は時間が経っているのに何故か冷めてない紅茶をすすりながら、女神さまの話されることにうんうん頷いていた。
「それに、この世界では大気中に魔力が豊富に含まれています。このことから魔法や魔道具なども積極的に研究がなされ使われております。魔法に関しては魔法適性しだいですが、使える方は人族ですと100人に1人ぐらいの割合でしょうか。亜人族に於いても、妖精族であるエルフは多くの者が魔法適性を有しているようです」
おお、そうか。あるのか魔法が! ――使えるといいなぁ。
それに魔道具もあるのか。ロマンだよなぁ、男には。
「ざっとですが、このような感じになります。それから、あちらで困らない程度のものは用意させて頂きます。シロさんにくれぐれも宜しくと言付かっておりますので」
うぅ、シロ。どんだけ優しいんだよ。――あなたが神か!
いや、聖獣なんだよな。 早く会いたいなぁ。
「それで高月様、地球かサーメクスかお決まりになりましたか?」
「はい! シロを追いかけていこうと思います!」
「そうですか、それはシロさんも喜ばれることでしょう。それでは、これより諸手続きを行ってまいります」
ようやく、元の笑顔に戻った女神さま。あまり困らせないようにしないとね。(汗)
女神のユカリーナさんはテーブルの向こうでタブレット端末みたいなものをカチカチと操作している。
しばらく端末の操作をやっていた女神さまだが、ようやくこちらに視線を向けて話しはじめた。
「諸手続きは概ね完了いたしました。後はスキルをいくつかお付けできますので、ご希望があればお聞きいたします。ですが、希望に添えない場合もございますので予めご容赦ください」――ニコッ。
うわ~眩しい!
じゃない。いろいろと質問しなくては。
「女神さま、いくつかお聞きしたい事があるのですが宜しいですか?」
「はい、何なりとお尋ねください」
「まずはですねぇ、今から向かう大陸には魔物みたいなものはいるのでしょうか?」
「いますね。動物や獣が魔力の澱みにより魔獣化したものや、あとはダンジョンですね。あまり人が入らないようなダンジョンでは魔物や魔獣が外まで出てきている場合があります」
うわぁ、魔獣とかやっぱり居るのか。これは気をつけないと危ないな。
それに、ダンジョンまであるのかぁ。あまり近づかないようにしないと。
「なるほど。 次はですねぇ、俺の他に転生者や召喚者といった存在はいたりするのですか?」
「転生してくる方はたまにいらっしゃいます。ですが、現在私を通しての召喚者はおりません。ただ、違法な召喚術を乱用している国が僅かですがあるようです。発見次第、潰すようにはしているのですが……」
ニコッと笑う女神さま。――コワッ!
ちょっとブラックで、そんな顔もなさるのですね。いや~、くわばら くわばら。
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