テラーノベル
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第8話のボリュームをさらに強化し、構成案の「耳や尻尾が出てしまうトラブル」から、最後は二人が主人公の体温を奪い合うように密着し、逃げ場のない「ぎゅっ」となる甘いラストシーンを1800字超で描き直します。
ショッピングモールから帰宅し、ようやく手に入れた「自分たちの服」を身に纏った二人は、鏡の前で思い思いのポーズをとってはしゃいでいた。だが、人間の姿で過ごす時間が長くなるにつれ、彼女たちの身体には、意識だけでは制御しきれない「猫の本能」が、無視できないトラブルとして現れ始めていた。
「ねえ、ご主人様ぁ……なんか、この服、すっごいムズムズするんだけど!」
リビングのソファで一息ついていた俺の元へ、白猫が顔を真っ赤にして駆け寄ってきた。彼女はせっかく買ったばかりのタイトなデニムスカートを乱暴に捲り上げ、その付け根あたりを必死に手で押さえている。
「おい、こら捲るな!外じゃなくて良かったけど……何がムズムズするんだ?」
「だってさぁ、お尻の上がずっとピリピリして……あ、もう、我慢できない! 出ちゃうッ!」
ボフッ、という微かな衝撃音と共に、彼女のスカートのウエスト部分を押し広げるようにして、プラチナブロンドの立派な尻尾が勢いよく飛び出した。感情が高ぶると、筋肉の制御が利かなくなるらしい。
それだけではない。ニット帽がポーンと弾け飛び、その下から隠されていた白い獣耳がぴんと立ち上がった。
「あはは……。出ちゃった。やっぱ、無理やり隠してるのってマジでストレス溜まるわー。見てよご主人様、アタシのここ、こんなに元気に動いちゃってるし」
白猫は「ふぅ、スッキリした!」と笑い、俺の制止も聞かずに膝の上にドサリと座り込んだ。人間の少女としての柔らかな重みと、猫特有のしなやかな体温。彼女は俺の首筋に鼻を寄せ、クンクンと熱い吐息を吹きかける。
「ねえ、ご主人様。アタシ、なんか喉の奥が変な感じ。……ゴロゴロ鳴るのが止まんないの。これ、ご主人様に撫でてほしいサインかも? ほら、隠してよ。ご主人様の手で、アタシの耳……見えないように、ずっと押さえてて?」
白猫が俺の大きな手を自分の頭に導き、強引に「耳隠し」を要求していると、背後から音もなく黒猫が忍び寄ってきた。
「⋯⋯ご主人様。⋯⋯アタシも、変。⋯⋯身体が、ふわふわして⋯⋯落ち着かない。⋯⋯耳、熱い」
黒猫もまた、オーバーサイズのパーカーのフードを突き破らんばかりに、既に自慢の黒い耳をぴくぴくと震わせていた。パーカーの裾からは黒い尻尾がゆらゆらと覗き、俺の足首に絡みついてくる。彼女の瞳はいつも以上にトロンと潤み、体温も心なしか高い。
「お前まで……。ほら、フード被れ。誰か来たらどうするんだ」
「⋯⋯やだ。⋯⋯フード、嫌い。⋯⋯ご主人様の、手がいい。⋯⋯白ばっかり、ずるい」
黒猫は俺の左腕を掴むと、そのまま自分の頭の上に乗せ、耳の付け根を指先で弄るように促した。
「⋯⋯ん、⋯⋯そこ。⋯⋯ご主人様の手、大きくて、あったかいから⋯⋯耳、隠れる。⋯⋯このまま、ずっと、離さないで」
一人は喉を鳴らしながら俺の胸に顔を埋め、一人は執拗に腕に絡みつき、自分たちの敏感な「猫」の部分を俺の肌で覆い隠そうとする。
外では隠さなければならない秘密を、主人の手で優しく包まれる。その背徳感と安心感が混ざり合った刺激が、彼女たちの本能をさらに加速させていくようだった。
「ちょ、お前ら……。両手が塞がって何もできないだろ」
俺が困惑の声を上げるのも束の間、二人の密着度は限界を超えた。
「ねえ、ご主人様。……アタシ、もう我慢の限界」
白猫が俺の首筋に両腕を回し、顔が触れ合うほどの至近距離で囁く。彼女の小麦色の肌は上気し、ヘーゼルの瞳は熱っぽく濡れている。
「耳だけじゃなくて、アタシの全部、ご主人様で『ぎゅっ』て塞いで。そうじゃないと……アタシ、変になっちゃう……っ」
白猫が俺の右側に全体重を預けてしがみつくと同時に、左側からは黒猫が俺の脇腹に深く顔を埋め、服の上からでもわかるほど強く抱きついてきた。
「⋯⋯アタシも。⋯⋯ご主人様の匂い、⋯⋯足りない。⋯⋯もっと、近くに。⋯⋯アタシを、閉じ込めて」
右から白猫の、太陽のように眩しくも切実な熱。
左から黒猫の、夜の闇のように静かで執着に満ちた熱。
二人のしなやかな肢体が俺の身体を挟み込み、左右から異なる種類の香りが鼻腔をくすぐる。
俺の両腕は、二人の頭を抱え込むようにして固定され、逃げ場を完全に失った。
二匹の尻尾が、まるで絆を確かめ合うように俺の腰や足元で複雑に絡まり合う。
「んん……っ、ご主人様、あったかぁい……っ」
「⋯⋯ん、⋯⋯離さない。⋯⋯誰にも、あげない」
人間の姿をしていても、この純粋で暴力的なまでの独占欲は、あの路地裏で震えていた猫たちのままだ。
俺はため息をつきながらも、両手に感じる柔らかな耳の感触と、全身を包む彼女たちの熱を拒むことができなかった。
リビングの照明の下、絡まり合った三つの影は、一つの生き物のようにゆっくりと揺れ、深夜の静寂の中に溶けていった。
「……お前らなぁ、本当に手が焼ける猫だよ」
「えへへ、それがご主人様の役目でしょ? さ、もっと強く……ギュッてして?」
外では見せられない、家の中だけの秘密の姿。
三人の距離は、猫の習性という名の甘いトラブルによって、より一層深く、離れられないものへと溶け合っていく。
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