アルカ side
トウカに貸してもらった部屋。
カバンに、メス何本かを詰める。
「あ……これ持って行こうかな………」
目に入ったのは、赤い髪飾り。
トウカに渡そうと思って、作った髪飾り………
結局、渡せなかったなぁ………
星を見に行った時、渡す予定だったんだけど
…今日……渡そうかな……
大丈夫…きっと…生きて帰って来れる…
大丈夫………大丈夫だよね………?
メスを持つ手が小さく震える
「アルカー? 準備できた?」
隣の部屋にいたあすかが尋ねた。
「んー……まだ…かな?」
「あぁ…よかった。私もまだなのよ……」
「ねぇ、覚えてる?」
「何を?」
ふと、アスカが尋ねる。
その目は、どこか遠くを見つめているように見えた。
「トウカが来た時のことよ………」
「………うん……覚えてる。」
忘れるわけない………この世界にやってきた初めての転生者。
突然僕の部屋に押しかけて、研究所をめちゃくちゃにしたっけ……
「懐かしいわねぇ……あの子、いっつも冷たくて、何考えてるかわからなかったわ……」
確かに……そうだったかも…いつも無表情で無口。
トウカの涙なんて、見たことなかった。
「そんなトウカが友達のために動くなんて……思ってもみなかった………」
「……そうだね……」
「ふふ……何だか親になった気分よ……それじゃ、私はそろそろ行くわね……」
そう言って、部屋を出て行った。
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