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目が覚めた瞬間、
胸の奥がまだ脈を打っていた。
夢の中で影が伸ばした手の温度が、
指先に残っているような気がした。
(……触れそうだった)
姫はゆっくりと身体を起こした。
部屋の空気は静かで、
現実のはずなのに、
どこか夢の森と同じ匂いがした。
胸の奥が、
夢の中と同じリズムで脈を打つ。
(どうして……こんなに)
影の声が、
耳の奥で微かに響く。
──来てほしくなかった。
──でも……来てほしかった。
姫子は胸に手を当てた。
その言葉が、
現実の空気にまで滲んでいる。
(……選ばなきゃいけない)
きのこちゃんの言葉が、
夢の奥から浮かび上がる。
──次に影が手を伸ばしたとき、
姫子ちゃんがどう動くかで決まるよ。
姫子は小さく息を吸った。
夢の続きが、
まだ胸の奥で揺れている。
そのとき──
スマホが震えた。
画面を見ると、
純からのメッセージだった。
『今日、少し話せますか』
姫子の心臓が跳ねた。
(……森川さん)
夢の影の沈黙と、
純の言葉が重なる。
姫子はしばらく画面を見つめたまま、
返事が打てなかった。
胸の奥が、
夢の中と同じように脈を打つ。
(どうしよう……)
そのとき、
またメッセージが届いた。
『無理なら大丈夫です。
ただ……昨日の話の続きがしたくて』
姫子は息を呑んだ。
(続き……)
夢の影が言った言葉が、
胸の奥で重なる。
──触れたい。
姫子は震える指で、
ゆっくりと返信を打った。
『……少しなら』
送信した瞬間、
胸の奥が強く脈を打った。
(……選ばなきゃいけない)
夢の森の空気が、
現実の部屋にまで滲んでくる。
姫子は静かに目を閉じた。
影が伸ばした手の温度が、
まだ指先に残っていた。
#間に合った愛