創世のルキエル

一灰色の空が、村を覆っていた。重く、冷たく、湿った空気。

その村の片隅、ひと気のない路地裏で、ひとりの少年が座り込んでいた。

彼の名前はジュラ。

灰色の髪色を持つ

14歳

泥まみれの服。

擦り傷だらけの手足。

血の滲む唇。

彼は、

誰からも無視され、誰からも助けられず、ただ、そこに転がっていた。

今日も、村人たちは、

彼を見ても何も言わず、ただ通り過ぎた。

「またアイツか」

「気味が悪い」

「関わるとろくなことがない」

そんな目で見られるのには、もう慣れていた。

子どもたちは石を投げ、大人たちは軽蔑の視線を向け、

誰一人、ジュラを”同じ村の人間”だとは思っていなかった。

（…..なんで、僕だけ）

（僕だって、ただ、ここにいただけなのに）

声にならない叫びが、胸の奥で静かに軋んだ。

けれど、誰にも届かなかった。

世界は、あまりにも冷たかった。

それでも、

ジュラは、必死に耐えていた。

泣きたくなかった。

叫びたくなかった。

それでも、

拳を握る指は震え、

小さな体は、冷たい地面に押し潰されそうだった。

そのとき。

不意に、

耳慣れない声が降ってきた。

「ねえ、君」

ジュラは、顔を上げた。

そこには、

銀色の髪をもつ少年なのか少女なのか分からぬ“それ”が立っていた。

まるで、

この世界に属さない存在のように。

感情のない瞳。

ただ、静かにジュラを見下ろしている。

「願い事、叶えてあげるよ」

「その代わり

一僕と契約して？」

ジュラは、その言葉を、

まるで遠くから聞いているような気持ちで受け止めた。

泥だらけの手を、ゆっくりと持ち上げる。

ーこのまま、誰にも知られず、誰にも触れられず、消えていくくらいなら。

この手を、掴みたかった。

銀髪の“それ”は、小さく首を傾げたあと、ふっと笑った。

そして、その手を、しっかりと握った。

「……僕はルキエル。

これから、君の”エピルーク”だよ。」

ジュラは、

震える声で、必死に言った。

「ぼ、ぼく……つよくなりたい……！」

ルキエルは、

変わらぬ無表情のまま、うなずいた。

「うん。 いいよ、ジュラ。」

雷鳴が、

遠くで小さく鳴った。

灰色の空が、

わずかに、割れる音がした。

世界が、小さく、んだ。

誰も気づかなかった。

この日、この瞬間。

世界の運命が、静かに動き始めたことを一