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「蒼ちゃん、もしかしてご家族に外国の人いたりする?」


水樹さんは私の少し日本人離れした顔を見ながら尋ねた。


「はい。祖父がアメリカ人なんです。でも両親は日本人です」


「なるほどね。どうりで綺麗な顔してるんだね。すごくモテるでしょう?」


「いえ、そんなこと全然ないんです」


私は慌てて首を振った。私の場合モテると言うより、変な人から好かれると言うか執拗にセクハラやストーカーされるだけで、まともな人からアプローチされたことがない。


社長の顔をすぐに思い浮かべるものの、彼から好かれているのかもよくわからないので、彼の顔を頭から追い払う様に首を振った。


「ええっ?嘘だろ。一体どこの会社に勤めてるの?もしかして女性ばかりの会社?」


水樹さんが大げさに言うので、思わず笑いながら答えた。


「違います。わたし今桐生クリエーションという会社に勤めてるんです」


「えっ、桐生クリエーション……?」


水樹さんは少し驚いた様に目を瞬いた。


「はい。コンテンツなどを制作して提供している会社なんですけど……」


「ああ、知ってるよ。社長が桐生颯人だろ?」


「はい……」


すると水樹さんは意味ありげにニヤリと笑った。


「へえ、あの人女好きで有名なんだけどな。蒼ちゃんあの社長に狙われてない?多分君あの人の好みの超ど真ん中だよ」


「えっ……、桐生社長をご存知なんですか……?」


私は驚いて水樹さんを見た。


「ああ知ってるよ。だって昔あの人と一緒に働いてたから。俺たちKS IT Solutionsで働いてるんだ」


── KS IT Solutionsって確か桐生グループの親会社じゃ……


以前彼が桐生グループの御曹司だと知った時にネットで調べたのを思い出した。


「あの人、うちのグループ会社の会長の次男なんだけど、長男の海斗さんは今でもうちの会社で働いてて、おそらく近いうちに社長になるんじゃないかな。今は会長の弟がやってるんだけど、あの人も年だからね。颯人さんもしばらくうちで働いてたんだけどさ、まあお兄さんが継ぐから自分は違うところで社長とかやってみたかったんじゃない?ほら、あの人目立ちたがり屋だからさ。あんなの女にモテる為にやってる様なもんだろ。会長の息子がわざわざ起業なんてさ。どうせ何もしなくてもグループ会社の社長になれるのに」


水樹さんはなんとなく社長に棘のある言い方をした。もしかして少し酔っているのかもしれないが、いつも社長が寝る間も惜しんで一生懸命働いている姿を見ている私は、思わず水樹さんのその言い方にむっとしてしまう。


「……女性にモテる為にやっているのではないと思いますけど……。それに社長には既に婚約者がいると聞いていますし……」


「婚約者?もしかして専務の娘の西園寺瑠花のこと言ってる?」


水樹さんは少し意外そうな顔をすると話を続けた。


「あー、あの人ねそんなんじゃないから。自分ではそのつもりみたいだけど。もしかしたら専務にそそのかされてんのかもな。何としてでも結婚しろとか。ほらなんだかんだで専務もグループ会社で色々と幅を利かせたいんだろうし」


水樹さんはくつくつと笑った。私はその話を聞いてホッとする。やはり姫野さんたちから聞いた話は単なる噂だったわけだ。


しかしその後の水樹さんの言葉に私は凍りついた。


「颯人さんも今は散々女と遊び歩いてるけど、まあ本命は多分結城ゆうきさんだろうな。あの二人何だかんだで結構長いこと付き合ってたし。今は常務の秘書やってるんだけど、昔は颯人さんの秘書やってたんだ。あ、彼女結城冴子ゆうきさえこさんって言うんだけど、すごい美人でさ、仕事もすごいできる女性ひとなんだ。それになんて言っても彼女凄い資産家の娘だからなー。やっぱり色々と何かあるんだろうな」


彼の言葉に記憶を巡らす。確か政治家やタレント、アナウンサーなどが一族にいる昔から代々続くエリート一家が、確か結城だったような気がする。テレビやネットなどで何度か見聞きした事があって、その家の出身なのだろうかと思う。


「もしかして今颯人さんアメリカへ出張とか海外旅行中じゃない?結城さんも二週間ほどアメリカへ行ってるんだよ。あの二人いつも出張とか旅行は一緒だからなー。今回も同じだよ、きっと」


水樹さんの言葉に、私の心臓はギリギリと痛くなり、何となく息も思い通りにできなくて息苦しい。ふと視線を落とすと、固く握られた拳は真っ白で、恐らく私の顔も蒼白に違いない。


「蒼ちゃんも気をつけなよ。君本当に彼の好みのどストライクだから。まあ間違いなく狙われるよ」


あまりのショックでこの場で泣き伏せてしまいたいのを必死にこらえると、水樹さんに何とか微笑んだ。


「アドバイスありがとうございます。彼に狙われないよう気をつけます」




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