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その日の夜、涼ちゃんが自宅に着くころにはすっかり遅い時間になっていた。肩の力を抜こうとしたとき、すぐ後ろから車から降り「おつかれ」と軽やかな声がする。振り返れば若井が、どこかいたずらっぽく笑いながらついてきていた。
「もう、若井、今日はそろそろ帰りなよ~」と涼ちゃんが言うと、若井は「えー、もう少し休ませてよ」と冗談めかして、勝手に家の中へと入ってしまう。玄関で立ち尽くす涼ちゃん。そのおかしな空気感に戸惑いながら、自然と心臓の音が早くなってしまう。
リビングに入ると、若井はそのまま涼ちゃんをベッドの方へと導く。一歩一歩近づいていく距離に緊張が高まる。
涼ちゃんをベッドに押し付けいつもより真剣な目で見つめながら、ふいに若井が口を開いた。
「ねぇ、俺がゲイっていうの、知ってた?」
突然の質問に、涼ちゃんは一瞬思考が止まる。ただ、その言葉がなぜか胸の奥にストンと落ちた。はっと自分の中を探ってみる。「分からなかった……でも、自分も、そうなのかなって最近気づいたんだ」とぽつりと返す。
若井の表情は一瞬ゆるみ、とても安心したような笑顔を見せる。その安心が伝染して、涼ちゃんも心の奥がすっと軽くなった気がした。
若井はそっと涼ちゃんの腰に手を伸ばし、やさしく側に寄り添う。その指先がズボンにかかったとき、涼ちゃんは思わずびくっとして「え、ちょっと早くない?」と戸惑いながら小さく声を漏らす。
若井はやさしく微笑んで、「大丈夫、焦らないから。嫌だったら止めるから言ってね」とそっと耳元で囁いた——。