3話
妊娠期間のお話を大分 省いております
Bad End苦手な方はここでストップ!
なんでもOKの方のみ、お進み下さい
⚠原作フル無視
⚠男性妊娠表現
⚠Bad End
⚠長め
⚠産後うつ…??
⚠創作設定 有
Bad End
妊娠してから数ヶ月
もういつ産まれてもおかしくない時期になった。
十月十日、と言ったか。
冴「しばらく休み取った」
何かあったら心配だから、と思って、俺は仕事とトレーニングを少し休むことにした。
凛は子供が元気に産まれてくるように と、先生に教えてもらったヨガをしている最中だ。
凛の顔色も良く、胎動も確認できた。凛も子供も元気だ。
昼間は少し涼しい風が吹いていた。
散歩に行くには丁度いいくらいだね、と 凛が外を見つめるので、それなら少しだけ散歩に出かけようと提案すると、凛は嬉しそうに準備を始めた。
ここまでは普通だった。
俺が外へ連れ出したのが間違いだった
信号待ちをしていた時だった。
歩行者たちが心配そうに一点を見つめていたから、不思議に思ってそっちに目を向ける。
自動車と自転車がぶつかる事故があったようで、そばに居た通行人たちが駆け寄り、慌ただしく連絡をし始めていた。
だから油断したんだ。
暴走した車の運転手が降りて来ていなかったのを 確認していなかった俺のミス。
事故を起こした車の持ち主は、かなり焦っていたのか、急に車を暴走させ始めた。
俺はそれを見ていなかった。
轢かれた人達の悲鳴が響く頃には、俺らの方に車が向かってきていて、反射で 凛を後ろに投げ飛ばした。
轢かれたのは俺だけだった
凛side
誰かに突き飛ばされたと分かった瞬間、兄ちゃんが車に轢かれた。
俺はすぐに気が付いて、兄ちゃんの元に向かおうとした…
けど、腹が痛すぎて意識を飛ばした。
次に目覚めた場所は、病院だった。
飛び起きて周りを確認すると、腕と顔…いや、顎と頭に包帯を巻き付けられた兄ちゃんと目が合った。
兄ちゃんは目を覚ました俺に向かって、「良かった」ではなく、
「ごめん…」
と、一言だけ呟いた。
理由は分かっていた。あんなに重くて、暖かかった腹の膨らみが…、無くなっていた。
兄ちゃんは俯いたまま声を殺して泣き始めた。
「凛…、ごめっ、ごめん、俺が…突き飛ばした…、からッ、」
罪悪感と 後悔と 無力さからだろうか、兄ちゃんは全身を震わせて泣いていた。
俺はその時には現実を受け止めきれないどころか、涙すら流せず
診察を終え、兄ちゃんがいる部屋に…医師と共に向かった。
医師も俺も明るい顔には なれなかった。
真っ白な部屋。
寝台に寝かされた小さな亡骸と対面した。
帝王切開。
無理やり取り出された赤子。
2人が生き残れたことだけでも、不幸中の幸いだと言う。
大事故だった。
運転手は、認知症を患っていた高齢者らしい。
たった一人の認知症患者に、子供の命を奪われた。
兄ちゃんはずっと、寝台に突っ伏して、俺と子供に謝っていた。
今の俺にとってそれは、呪いの言葉に聞こえた。
幸せにしたかった。ごめんな、俺のせいで…、突き飛ばさなければお前も元気に産まれてきたのに…!!凛とお前を守りたくて突き飛ばしちまったんだ、許してくれ。俺のせいで凛にもお前にも悲しい思いさせて、俺、父親失格だ…ッ ごめんな、ごめんなっ!!
同じ言葉を、同じ文章を、何度も何度も何度も何度も……、繰り返している兄ちゃんの肩に 手を置いた。
兄ちゃんはハッとして振り返り、俺を抱きしめた。
冴「ごめんッ、ごめんなぁ、凛ッ!!俺があの時冷静に対処していれば、ッこんなことには…!!ッッ、ならなかったのに!!!!!」
嗚咽を漏らしながらも必死に謝ってくる兄ちゃんと、綺麗に寝かされた子供を見て、やっと重さを理解し始めた。
俺の目から、どんどん溢れてくる涙。
兄ちゃんの手を握った俺の手に、パタパタと乾いた音を立てたのは、その雫だろう。
兄ちゃんは、弟を不安にさせまい、と 兄ちゃんの顔が見えないように俺の頭を自分の胸に押し付けて「生きててくれてありがとう」と震える声で呟き、今度は声を上げずに泣き始めた。
数分後
警察から説明を聞いたが、当然、2人の耳はそれを受け入れられず、内容は全く頭に入って来なかった。
寝台に眠っているのは、息子だった。
元気に動かしていた足も、腹を殴ってきた拳も、死後硬直のせいで固くなり、動くことはなかった。
冷たい息子の顔を、兄ちゃんと2人で見つめる。
軽くなった腹を撫で、子供はもうこの世に存在しないのだと痛感する。
健康な子になるように、沢山努力したし、兄ちゃんも沢山協力してくれた。
俺が浮かれて外に出たのが悪かったんだ…。
冴「お前のせいじゃないからな」
と、兄ちゃんの掠れた声が静かな部屋に響き、鼓膜を震わせる。
プラスに考えないと、心が破裂してしまいそうだった。
凛「兄ちゃんのおかげで、俺は助かったんだ。兄ちゃん、俺を守ってくれてありがとう…」
と言うと、兄ちゃんは少し驚いたように俺を見てから、
「当たり前だ。お前を守るのは、俺の役目だろ?笑」
と強がって、笑って見せた。随分泣いたのか、目尻は紅く染まっている。
それは俺も同様だろう…。
兄ちゃんは泣いてる俺の隣でずっと手を握ってくれてた。
自分は泣かずに…弟に泣きたいだけ泣け、と声を掛けながら。
本当は自分も泣きたいくせに。
と揶揄ってやると、少し微笑みながら、こんな時までそういうこと言いやがって…と、そっぽを向いて鼻を啜った。
きっと少し泣けてしまったのだろう。
2人で散々泣いたあと、子供を天に見送った。
最後に見たのは、花に包まれ、みんなに可愛いね…、また会おうね…と声を掛けられ
それぞれの贈り物達に囲まれた、青白い息子の姿だった。
息子の顔と姿が忘れられず、完全に鬱状態に陥ってしまった俺が回復するまで、兄ちゃんはずっと傍で支えてくれていた。
兄ちゃんは息子の死を受け入れ、乗り越えて、更に強くなった状態で俺を支えてくれた。
本当、兄ちゃんには頭が上がらない。
それから俺は、精神的ダメージを受け、サッカーを続ける気力を完全に失ってしまった為、プロ活動を引退。
現在はコーチとして、子供たちを指導している。
元々子供は好きじゃなかった。
怖がってすぐ泣きやがるし、そのくせ理由は言えない。聞けばもっと泣くし、声も耳障りだった。
けど今は、元プロサッカー選手という称号を背負って、未来の日本のプロサッカー選手を目指す子供たちを育てている。
それなりに充実してて、それなりに幸せな人生を送っている。
仕事帰り、子供の泣き声が聞こえた気がした。
心配になって声がする方へ向かうと、昔俺たちが2人でアイスを食った場所に、1人の子供が座っていた。
声をかけると、その子供は俺にびっくりして逃げ出した。
逃げたその先には
あ█にカわッ”タ▒✖︎キ…?
きゃははっ!
と、子供は笑った
「凛!!!!!」
あ、兄ちゃん
丁度良かった、その子捕まえてくれない?
なんか俺…動ケナくテさ
目をうっすら開けると、兄ちゃんが膝枕をしている。
てかここ、どこだよ。
真っ白だな。
冴「凛、俺と一緒に迎えに行こうか」
と言って、兄ちゃんはスマホを弄りながら歩き出した。
俺も後に続く。
俺の腕の中で、息子が楽しそうに笑う。
兄ちゃんはこっちにスマホを向けて、シャッターを切った。
5年前に亡くなった父親と一昨年亡くなったはずの母親が、実家である家の前に立っている。
どこか白みを帯びたふわふわとした記憶の中に、一歩ずつ近付いて行く。
兄ちゃんが、「ほれ」とスマホを投げて寄越した。
息子を抱えて微笑む俺と、腕の中で楽しそうに笑う息子の ツーショット。
冴「よく撮れてるだろ笑 次撮る時は俺も混ざるからな」
と兄ちゃんが昔と変わらない幸せそうな顔で笑う。
凛「家の中で撮ろうよ!3人で!」
と言うと、兄ちゃんは嬉しそうに「いいよ」と言った。
両親が息子を見て、2人によく似てる!と笑う。
ふと後ろを振り返ると、
アイスを食べながら去っていく、俺と兄ちゃんがいた。
きゃはは!
と息子が声を上げて笑う。
現実世界で
日本の至宝と謳われ、賞賛され続けた青年と
プロを引退し、子供を親しまれていた若い青年が
二人同時に保育園バスに轢かれて亡くなったと報道されたのは
二人が冷たくなってから2時間後のこと。
目撃者に寄ると、
人が近くで轢かれたにも関わらず、振り返りもせずに
アイスを食べながら手を繋いでどこかに帰る
亡くなった二人と同じ瞳を持つ兄弟が居たのだとか…。
その二人の後を追うと、とある家族が四人暮らしをしていたらしい現在は廃墟だという家に、消えていったという───
きゃはは!と笑いながら
二人を死に導いたのは誰だったのかな?
きゃははっ!!!
あははははははははははははははははは!!!
これで幸せになれるね、未来の”ぱぱ”と”まま”♡
冴 と 凛 ♡
最後まで読んでくれてありがとうございました!
とても楽しかったです(´˘`*)
コメント
3件
BADEND最高でした!! 見てて楽しかったです。 これからも頑張ってください!!