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「少し飲んでみて。気分が良くなるかもしれない」
大樹……もしかしてこれを買いに行ってくれてたのかな?
「ありがとう……」
大樹がキャップを空けてくれたペットボトルを受け取り、口に運ぶ。
二口程飲むと冷たい水が喉を通って行くのを感じた。それから思っていた以上の喉の渇きも。
ゴクゴクと一気に飲むと私はホッと息を吐いた。
座れたのと、外のひんやりした空気のおかげも有ってか、ようやく一息つけた。
さっきより大分気分が良くなって来ている。
心配そうに私の様子を見ていた大樹が、ホッとした様子で言った。
「もう少し休んだらタクシーで家に帰ろう」
「うん。ありがとうね、助けてくれて」
大樹が一緒に居てくれて本当に良かった。
あのどうする事も出来ない程気分の悪かった時、もし一人だったらと考えると恐くなった。
「そんなの気にしなくていいから。ほら少し目を瞑って休んでて。多分貧血だろうからしばらく安静にしてないと」
「貧血?」
あの急激な眩暈はそのせいなのかな?
今まで経験が無いから思いつかなかったけど。
そう言えば美野里はたまになるって言ってたっけ。
「そう思うけど素人判断は危険だから後で病院に行った方がいいな。それから会社に連絡も入れないとな」
大樹は頭の回らない私に代わって次の行動を決めて行く。
私はすっかり安心した気持ちで大樹にもたれかかっていたんだけど、段々気分が落ち着いて来るとハッとなり身体を起こした。
「大樹、仕事行かなくちゃ!」
そうだ、私頭が回らなかったけど、私のせいで大樹まで遅刻になっちゃったんだ!
焦る私とはうらはらに大樹は落ち着き払って言う。
「行くよ。花乃を家まで送った後にね」
「私は大丈夫だよ。もう大分良くなったから一人で帰れる」
だから早く仕事に行かないと。
だけど大樹は即刻否定して来た。
「だめ」
「な、何で?」
「一人でなんて帰せない。途中でまた具合悪くなったらどうするの?」
「大丈夫だよ?」
「もう会社に連絡したから慌てなくていいんだよ。俺今日は半休」
大樹はサラリと言い、タクシー乗り場に行く為、私の身体を支えてそっと立たせた。
途端にフラリと眩暈がする。
「ほら、俺がいないと駄目じゃん」
大樹は優しく笑ってそう言いながら、私の身体を支える手に力を込めた。
「……ごめん」
迷惑かけて。大樹の仕事は決して暇なはずは無いのに突然休ませてしまって。
私が体調管理が出来なかったせいで。
もう社会人だって言うのに、私何をやってるんだろう。
自己嫌悪に陥りながら大樹と一緒に階段を降りる。
タクシー乗り場は並んでなくて、直ぐに乗れた。
大樹がうちの住所を告げると車がすっと走り出す。
「いいよ、寝てて」
大樹は私の肩を引き寄せながら言う。
タクシーの揺れのせいなのかもしれない。
目を開けていられない。
「大樹……ごめんね」
私はゆっくり目を閉じた。