テラーノベル
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もうすっかり、季節は秋になった。
家を出て、二人で並んで歩くのも久しぶりな気がしているのは、目黒だけだろうか。
目黒が「今日も楽しもうね」と声をかければ、阿部から「もちろん」と返ってくる。たったそれだけのことが、目黒は嬉しかった。
今、やっと日常が戻ってきたから。
そして、ある場所に近づいたのが分かって、目黒は阿部を見下ろした。
🖤「阿部ちゃん。ちょっと目、瞑って」
💚「え、なに?」
🖤「いいから。手、繋いでるからさ」
💚「わかった」
素直に目を瞑った阿部の手を掴んで、ゆっくり歩く。ワクワクとした気持ちが抑えきれなくて口元がにやけてしまうけれど、今は阿部にその顔が見られることもないので、隠さなくてもいいかと思ってそのままにする。
そうして少し歩くとその場所に立ち、止まった。
🖤「阿部ちゃん、目、開けていいよ」
ゆっくりと開かれた目。
その目は、そのまま大きく丸く開かれた。
💚「うわぁ! すごぉい!」
一面の黄色に、阿部の目がキラキラと輝いている。
💚「あ、ここ」
🖤「そう。前に来たとこ。ね、綺麗でしょ」
💚「うん! うわぁ、今、めっちゃテンション上がってる!」
🖤「だよね。めっちゃキラキラしてる」
💚「いやだってこれ、凄いよ。深緑の時も綺麗だったけど、この黄色の感じがね、いいよね」
やっぱり連れてきて良かった、と目黒は思った。
いろいろなことがありすぎて、その後の処理やら何やらも相まって、ここ一ヶ月ほどは目まぐるしかった。新たに決めなければならないことも山積みだったので、特務調査局での仕事は一時中断もしていたし、それに伴ってカフェも休業をしていた。
その間、阿部が申し訳なさそうにすることも少なくはなかったのだ。前よりも遠慮は減ってきたとはいえ、全部を受け入れるわけでもない。謙遜もするし、遠慮もする。そこまでしなくていいよ、と言うことだってある。
特に今回、阿部に関することでの変化が多かったのだから。
それでも、一ヶ月の時間の中で自分の中でも整理がついたのかもしれない。だからこうして誘って、笑顔が見られて、正直ホッとしている。
💚「めめが、秋にまた散歩しようって誘ってくれたおかげだね」
🖤「思いついただけだったけど、言って良かったって俺も思う」
💚「でも、こんなに色づいてると思わなかった。今年、早い?」
🖤「そうかもね。でも、割とこのくらいの時期には黄色いかも。他よりも早いんだって、ここ」
💚「へぇー。今年は涼しくなるのも早かったけど、元々なんだ。気候なのか土なのか、何で早く色づくのか気になるね」
🖤「阿部ちゃんらしいね。俺はそんなこと、考えたこともなかったよ」
💚「え、だって興味そそられるよ。ラウと一緒に、ちょっと解明したいかも」
🖤「ラウール、絶対乗ってくるね」
💚「でしょ」
そんな話をしながら、並木道を歩いて行く。
地面も黄色一色になっていて、康二がいたら写真撮りまくってたね、なんて笑っている阿部。どんな時でも、他のメンバーの話が出てくるのは、なんだか嬉しい。
あの時、仲間ではなく家族と言ってくれていたから。
それは目黒にとっても同じだ。SnowManのみんなは家族。毎日一緒にいるからとか、そういうことではなくて、距離感や空気感がもう、そうだった。一緒にいるのが当たり前で、離れるなんて予想もできなくて、これから先、この九人で過ごす日々しか存在していないような、そんな感じがしている。
シェアハウスをこんな大人数でするとは思ってなかったけれど、皆がすぐに受け入れたのはそれもあったのかもしれない。
💚「家、慣れた?」
🖤「一緒に暮らし始めて一週間くらいだしね。少しだけ。事務所でも一緒で、家に帰っても一緒っていうのがちょっと不思議な感じはするけど」
💚「確かにね。でもさ、ふっかも照も言ってたでしょ? 仕事は事務所で、家ではその話はしないって。俺も、その分け方でいいと思う。一緒にいるからって、家でまで仕事の話してたら休めないからね」
🖤「それはそう。帰ってのんびりしたいし。でも、佐久間くんとか康二は意外だった」
💚「何が?」
🖤「家でさ、もっと部屋とか勝手に入ってくると思ってたけど、そんなことなかったから」
💚「ああ。プライベートは守るってルールね。その分、共有スペースのリビングだとめっちゃテンション高いし絡んでくるけど」
🖤「だからしょっぴー、ヤバいと思ったらすぐ部屋行くもんね」
💚「速いよねー、あの判断。でもいいと思う。俺も勉強の時間、ちゃんと取れるし」
🖤「今、何の勉強してるの?」
💚「FP。ファイナンシャルプランナー二級だね」
🖤「こないだは、世界遺産検定一級だっけ?」
💚「そうそう。よく覚えてるね」
🖤「凄いなぁって思ってるから。俺もなんか勉強してみようかな」
💚「お。なんか興味あるの?」
🖤「うーん……栄養、とか」
💚「じゃあ、食生活アドバイザーとかいいかもしれないよ。栄養学だけじゃなくて、食文化とか食生活とか、結構幅広く知れるし。それに、資格が取れなかったとしても、ちゃんとめめの知識にはなるからさ。やってみてもいいと思う」
🖤「なら、できるかも。絶対合格! みたいにすると気負っちゃうし。そっか、勉強して覚えるだけでもいいんだよね」
💚「そもそも、勉強ってそういうものだからね。資格を取ったりテストでいい点数を取ったりするのは、結果として持っておくっていうだけだよ。自分の身に付くのが重要だから」
🖤「うん、やってみよう」
💚「今から図書館行くし、他のもいろいろ見てみたらいいかもね」
🖤「そうだ、図書館。俺、図書館も初めてだからどうしたらいいか分かんないんだけど」
💚「好きな本を探して読むだけなんだけど……」
🖤「どこに何があるか分かんないし、探せるかすら自信ない」
💚「ああ、そういうこと。大丈夫だよ。なんとなくで見てって、興味ある本があったら手に取る、くらいでいいと思うし。めめが読みたいと思える本、一緒に探すよ」
🖤「阿部ちゃんの邪魔にならない?」
💚「ならないよ。俺も、違う分野の本のとこ見れるし。たまにいいよね、そういうの」
少しワクワクとしたような表情の阿部に、目黒は微笑を浮かべる。
こちらに気を遣わせないようにしてくれているのは分かっている。そういう言葉の選び方をする人だから。けれど本心なのも事実なのだろうと思う。
そうやって、楽しいことが増えていけばいい。
今よりももっと好きなことが増えていってほしい。
それを手伝えるようになりたい。
💚「ねえ、めめ」
🖤「なに?」
💚「来年もここ、一緒に歩こうよ」
思ってもみなかった言葉に、心臓がドクンと跳ね上がったような気がした。この間は目黒からした約束を、阿部からされるなんて。
返事は一つしかない。
🖤「もちろん。約束だね」
💚「うん、約束」
差し出された小指に、目黒は小指を絡ませる。
また一つ、小さな約束ができた。
まだ歩いている最中だというのに、もう来年が楽しみになってしまって、目黒は必死でにやけそうになるのを抑えていた。
コメント
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yuka @1週間猫メイド
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