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104 - 青春は、まだ始まったばかり17

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2025年06月02日

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文化祭が終わって、少し日常が戻ってきたある日。


昼休み、廊下を歩いていた時に聞こえた何気ない会話が、僕たちの時間を静かに揺らした。





「…ねえ、知ってる? 藤澤先生、今学期で異動なんだって」


「うそ……あの先生、いなくなるの?」





耳に入った瞬間、心臓が一度跳ねた。


元貴と滉斗は、顔を見合わせた。






「……マジで……?」


「……嘘だろ…」






放課後、職員室の前で待っていた僕たちに、先生は少し驚いた顔をした。





「……どうしたの、ふたりとも」


「先生、異動って……本当ですか?」





しばらくの沈黙の後、先生は静かに微笑んだ。





「うん。年度末で、少し遠くの学校に行くことになったんだ。春から、また新しい場所で音楽を教えるよ」





言葉が出なかった。

文化祭で一緒に音楽を作って、あんなに笑っていた先生が、もうすぐいなくなるなんて。


滉斗も、珍しく俯いたまま何も言えなかった。


先生はそんな僕たちを見て、優しく言った。





「ふたりには、本当に感謝してるよ。音楽の授業以上に、たくさんの“気持ち”を学ばせてもらったから」







その夜。

2人はいつものように元貴の部屋にいた。


だけど、ギターに触れる手は、どこか落ち着かなかった。


ぽつり、と滉斗が言った。





「……作る? 曲」





元貴は、ふっと顔を上げる。





「先生に……“ありがとう”って伝える曲」


「……うん」





元貴はゆっくりと頷いた。









「先生との思い出って、どこから始まったんだろうな」


「僕は最初、ピアノの話をしたとき。

“自分の音楽は自分で広げていいんだよ”って、言ってくれたのが印象的だった」


「俺は、“恋と吟”のときだな。……一緒に音を鳴らした時、先生って感じじゃなくて…なんか、本当に“仲間”って感じがした」


「うん……あれ、すごく嬉しかった。音楽で先生と繋がれた感じがして。」





会話を交わしながら、元貴はギターを抱えた。


ふたりで、メロディを探す。






「Bメロ、ここちょっと寂しげにしたい。

“先生がいなくなる”っていう実感が、ここに出てくるように」


「じゃあ、こんなコード進行は?」


「……それだ!」





音を重ねながら、ふたりで静かに進めていく。

パズルみたいに、でも心の奥にある景色をそっと並べるみたいに。









やがて、ひとつのフレーズが生まれた。





縁に帰る匂いがした

覚えているかな?

僕たちは

夢中に描いたんだ

大きな宇宙のような瞬き





「……これ、歌ってると泣きそうになるな」


「うん……先生との全部が、よみがえってくる」






文化祭前、楽器を3人で囲んで笑ってた日。




先生の手が添えたピアノの温かさ。





先生が“音楽って、自由でいいんだよ”って言ってくれた声。





全部が、この曲の中に滲んでいった。









「曲名、どうする?」





僕は迷わず、口に出した。





「“BFF”。Best Friends Forever。

……音楽を通して出会えた、先生への、永遠の“ありがとう”」





滉斗は、静かに頷いた。





「それ、いい。……めちゃくちゃ、いい」









夜が更けるまで、ふたりで音を探した。


言葉が出ないときは、音が語ってくれた。


そして、ようやく、ふたりの“ありがとう”が、形になった。






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