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放課後の音楽室。
夕日が差し込む中、元貴と滉斗はピアノとギターの前に並んでいた。
目の前には、僕らが昨日作り上げた曲——“BFF”の譜面。
あれから一晩、ふたりとも何度も音源を聴き返して、
それぞれのパートを頭の中で何度も繰り返してきた。
「……よし、やってみようか」
元貴がギターのストラップを肩にかけると、滉斗も深く頷いた。
「いける。絶対いい演奏にしよう」
—
ピアノの前で、ゆっくり指を置く。
縁に帰る匂いがした
覚えているかな?
僕たちは
夢中に描いたんだ
大きな宇宙のような瞬き
元貴の声が静かに流れていく。
滉斗のギターがそれに重なり、
音楽室の壁に、優しく響いた。
バカみたいな僕の夢を
バカみたいに信じてくれて
やるせないそんな今日でも
僕には君が居る
弾きながら、目の奥が少し熱くなる。
滉斗も、歌い終わったあとしばらく口をつぐんでいた。
「……やばい。これ、絶対泣くやつだ」
「僕も。先生の前でちゃんと歌えるか、もう心配になってきた」
ふたりとも笑ったけど、その目は少し潤んでいた。
—
そのあとも、何度も何度も繰り返して練習した。
声の入り、ギターのストローク、ピアノの余韻。
細かいところまで擦り合わせていく。
「……あのさ」
練習の合間、滉斗がぽつりと言った。
「俺さ、昔、音楽なんて“授業のひとつ”くらいにしか思ってなかったんだ。
でも、先生と出会ってから、音って……人を繋げてくれるんだなって思った」
「うん。先生、よく言ってた。“音楽はコミュニケーションだ”って」
「“話せなくても、音を出せば伝わる”って、言ってたね」
元貴はその言葉を思い出しながら、ピアノの鍵盤に手を乗せた。
「じゃあ、僕たちの“ありがとう”、ちゃんと音にして届けよう」
「うん、絶対」
—
日が傾き、音楽室にオレンジ色の光が差し込む。
ピアノとギターの音は、ゆっくりと、でも確実に“想い”を形にしていった。