テラーノベル
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昨夜、山本に「ただの恋です」とド直球な正解を突きつけられてから、僕の頭の中は完全にパニックを起こしていた。
家に帰ってからも一睡もできず、ベッドの中で過去の自分の過保護な言動を思い出しては照れ狂い、枕に顔をうずめて悶絶するだけの夜を過ごした。
おかげで、ひどい寝不足のまま迎えた翌朝。
ふ どうしよう……どんな顔して河村に会えばいいんだよ……!
ガチガチに緊張しながらオフィスのドアを開けると、すでに自分のデスクで作業を始めている河村の姿が真っ先に目に入った。
その横顔を見ただけで、心臓が爆発しそうなほど跳ね上がる。
河 「あ、ふくら。おはよう」
いつも通り、優しく微笑みながら僕を振り返る河村。
いつもなら「おはよう!」と笑い返せるはずなのに、意識しすぎた今の僕には、その笑顔が眩しすぎて直視すらできない。
ふ 「 おは、おはようっ河村……!!」
思いっきり声が裏返り、僕はロボットのようなギクシャクした動きで自分の席へと滑り込んだ。
河村が「え……?」と不思議そうにパチパチと瞬きをしているのが視界の端に見えて、さらに冷や汗が出る。
そんな二人の様子を、デスクの端からマイボトルを片手に見つめている人物がいた。
山 あーあ、わかりやすすぎる。本当にガチガチになってるよ、ふくらさん……
昨夜の飲み会でふくらに気持ちを気づかせた山本は、予想通りのポンコツっぷりを披露するふくらさんを見て、デスクの陰でニヤニヤしていた。
しかし、このふくらのパニックが、思わぬすれ違いを生むことになる。
・・・・・
すっかり夜も更け、オフィスにメンバーが数人しか残っていない退勤の時間。
いつもなら、このタイミングでふくらから「河村、行こっか」と声をかけ、並んで同じ駅へと帰るのが当たり前の日常(ルーティン)になっていた。
けれど、今日のふくらはパソコンの画面を凝視したまま、ピキッと固まったように動かない。
早く声をかけなきゃいけない。
でも、今一緒に帰ったら、あの電車の狭いスペースで、こんなに赤くなっている顔を至近距離で見られてしまう。
家までずっと一緒の帰り道なんて、今の僕の心臓では確実に持ちこたえられない。
ふ 無理だ……! 今はまだ、二人きりになるのは刺激が強すぎる……!
恥ずかしさと緊張が限界を迎えたふくらは、結局、いつもの時間になっても声をかけることができなかった。
隣のデスクで、河村は静かに視線を落としていた。
いつもなら絶対に声をかけてくれる時間なのに、ふくらは目すら合わせてくれない。
今日の朝から、あからさまに避けられている。
河 ……僕、ふくらに嫌われちゃったのかな。
何か怒らせるようなこと、しちゃったのかな……。
いつもの帰り道で、何か変なこと言っちゃったっけ……
これ以上この空間にいるのが耐え切れなくなった河村は、寂しさを押し殺すように静かに帰る支度を調えると、逃げるようにそっとオフィスを出ていってしまった。
パタン、と閉まったドアの音に、ふくらがビクッと肩を揺らす。
ふ あ……帰っちゃった……。あんな態度とっちゃったんだから、当然だよね……。俺のバカ……!
自分のヘタレっぷりに、ふくらは誰もいない会議室へと駆け込み、頭を抱えて激しい自己嫌悪に陥った。
一方、デスクの端でその一連の流れをすべて見ていた山本さんは、小さくため息をついた。
山 あーあ、ふくらさんが意識しすぎて声をかけられないだけなのに、河村さんは自分が何かしたと思って大ショック受けて帰っちゃったじゃん。……よし、ちょっとフォローしに、
二人の状況をすべて把握している山本は、そこから驚異的なスピードで手元の仕事をテキパキと終わらせると、荷物をまとめてすぐにオフィスを飛び出した。
エレベーターを降り、駅へと続く夜道を少し早歩きで進むと、すぐ前方に、トボトボと力なく歩く河村の背中が見えた。
いつもの楽しそうな足取りとは違い、ひどく肩が落ちて小さく見える。
山 「河村さ〜ん、お疲れ様です! ちょうど僕も今終わったんで、駅まで一緒に行きましょ」
河 「あ、山本……。うん、お疲れ様」
振り返った河村さんの顔は、今にも泣き出してしまいそうなくらい暗かった。山本はそんな河村の様子を隣で窺いながら、並んで歩き始めた。
駅へと向かう道すがら、静寂に耐えかねたように、河村がぽつりぽつりと小さな声で相談を始めた。
河 「あのさ、山本……ちょっと聞いてもいい?」
「 僕、ふくらに何か悪いことしちゃったみたいで。」
「今日の朝から、急に目も合わせてくれなくなったんだ。」
河 「それにさっきも、いつもなら一緒に帰る時間なのに、ずっと無視されてるみたいで……」
「僕、ふくらに嫌われちゃったのかな……。何か、怒らせるようなことしちゃったのかな」
山 違うんです河村さん! 嫌われたんじゃなくて、ふくらさんが自分の恋心に気づいて、恥ずかしすぎて照れ狂ってるだけなんです……!!
全てを教えてあげれば一瞬で解決するのに、山本はぐっと言葉を飲み込んだ。
二人の状況を唯一すべて把握している立場として、ここで自分が答えを教えてしまうのは違う気がしたからだ。
クイズの答えをすぐに教えられたらつまらないのと同じで、この不器用な二人が必死にもがいて、自分たちで正解に辿り着くのが一番綺麗だという、山本なりの優しさだった。
山 「ああ、そんなに深く悩まなくても大丈夫ですよ。ふくらさんが河村さんを嫌うわけないんですから。……まぁ、ふくらさんにも色々、心の準備というか事情があるんじゃないですか?」
河 「心の準備……?」
山 「はい。だから、大丈夫です。安心してください」
山本の言葉に、河村は少しだけ安心したように小さく微笑んだ。
でも、やっぱりいつもの帰り道がなくなってしまった寂しさは消えなくて、電車のホームで別れる時も、どこか名残惜しそうに遠くを見つめていた。
お互いに、隣にいたはずの相手の温もりがないことに、耐えられないほどの寂しさを感じていた。
本当の気持ちを自覚した瞬間から、皮肉にも二人の距離は、泥沼のすれ違いへと向かっていく。
それぞれの家で、二人が別々に「もうあの時間は戻ってこないのかな」とウジウジ悩んでいる頃。
自分の部屋でスマートフォンを眺めていた山本さんは、ベッドに寝転びながら、ニヤリと不敵な笑みを浮かべていた。
山 あーあ、思ったより重症だな、あの二人。ふくらさんがチキンすぎて、このままだとギクシャクしたまま数ヶ月経ちそう……
画面のメッセージアプリには、伊沢さんや須貝さん、東兄弟たちの入っているグループチャットが開かれている。
山 ……そろそろ、手伝ってあげてもいいかもなぁ
二人のもどかしすぎるすれ違いに決着をつけるべく、唯一すべてを知る存在である山本が、裏でプロデューサーのように動き出す、、、、
コメント
3件
え、もう最高です マジで続きが気になりすぎる…!!
うわああ、ふくらさん、もうダメだ…! 自分の恋心に気づいた途端に♡♡♡一直線で、もう抱きしめたくなりました(笑)。でも河村さんの「嫌われたのかな…」の落ち込み方が切なすぎて、胸がぎゅっとなりました。山本さん、ナイスフォローと同時にクイズは自分たちで解かせる派なのがまた渋い…! 次、どう動くんだろう。ああもう、もどかしい! 続きが気になります。
Nozomi💜
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#QK
あお
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