主)10分くらいで暇つぶし程度に書いただけの短編読み切り小説です。独伊です。シリアスです。
それでもええからはよ見せやんかコラって人はどうぞ()
駅のホームは人で賑わい、耳を塞ぎたくなるような騒がしさが頭に響く。
以前来た時よりも煩く、周りが鬱陶しい。
そう思うのは、きっと君がもう居ない所為だ。
「………………寒っ……」
駅から出ると夜風が額をなで、慰めてでもいるかのように静かに音を立てた。
そんな様子が腹立たしくて、悔しくて。
そのせいか、早く目的地へ向かおうと足早になる。
彼はどうしているのだろうか。
彼から貰ったマフラーで熱くなる目頭を覆う。
自分というのは、つくづく最低な奴だ。
こんな奴が彼を望んでいいのか分からない。
分からないけど──────
──────早く会いたい
──────数日前
「ドイツー!!」
「うぉっ……ど、どうしたんだ?」
「えへへ〜呼んだだけ!」
「なんだよそれ……」
こいつはイタリア。俺の友達だ。
そして……
俺の”好きな人”でもある。
でも現状、俺は今のこの関係に満足している。
“イタリアとは友達”。それ以上でもそれ以下でもない。
俺はこの関係を、「友達」を続けたいと思っているから……
……だから、この恋心には少し蓋をした。
「あ、そうだ!ドイツ、こっち向いて!」
「ん?」
そう言われ振り返ると、首元にふわっとした触感が伝わり、凍るような寒さが春の暖かさに変わる程の温もりに包まれた。
「……はい!」
「…………………マフラー?」
首元を見ると、俺に黒いマフラーを巻いている彼の悴んだ指先が見えた。
「そ!ドイツに似合いそうだと思ってね」
「……………………………………………実は」
俺は以前から用意していた、白いマフラーを彼に手渡した。
「……!!」
「てっ………手編みだから……販売品みたいに綺麗じゃないけど………………」
「十分嬉しいんよ!ありがとうなんね!!!」
俺は馬鹿だ
その笑顔を見ると、してはいけないと分かっていても少し期待してしまうから。
これ以上の幸せを求めてもいいんじゃないか、と。
でも俺達は「友達」だ。
そんなことは起こる訳が無いのだ。
自分に現実を押し付けることでしかもう、平常心を抑えきれないようになってしまった
それくらい、好きなのだ。
友達としても、恋愛対象としても。
ある日
「今日はちょっと買いすぎたな…………………ん?」
「〜〜〜!」
「あ、イタリっ………………ぁ…………」
頭が真っ白になった。
彼は……
……………他の女性と2人で歩いていたのだ。
「?……ど、ドイツ!?」
「…………………………っ」
「あ、待っ……!」
逃げ出してしまった
だって、だって……………………………
「だって」ってなんだ?
俺と彼奴は”友達”じゃないか、友達の幸せは喜ばしい事じゃないか。
何言い訳しようとしてるんだ?
“イタリアとは友達”。それ以上でもそれ以下でもない。
俺はこの関係を、「友達」を続けたいと思っている
………思っている…………………………
筈なのに………………
「………………グスッ」
なんで……………………………
……なんで涙が出てくるんだ
その後、沢山考えて、考えて……ようやく気づいた。
俺は俺が思った以上に、彼奴が好きなんだ。
「恋心に蓋をした」……なんて、俺が怖くて隠してただけだ。
彼にバレるのが…………もう今までと同じ、”都合のいい関係”で居られないのが、怖いだけ。
本当に彼は、俺の生きる糧だった。
失うのが怖かったんだ。
彼がいないなら、俺は死んだも同然だから。
「………まぁ結局、」
「もう失ってんだけどな」
そう思いながら、椅子の上に足をかけた。
沢山考えて、考えて………ようやく気づいたんだ。
俺はもう、生きる意味を見失ってしまったということに。
天井からぶら下がるマフラーという紐に、首を通す。
イタリアが巻いてくれた時の感覚に似て、どこか冷たく、それでいて暖かかった。
「…………アイツは、」
「…………………………」
「……幸せになって欲しいなぁ…」
……最期の言葉のつもりだ。
本来はイタリアに伝えるべきだった言葉だったが、もうそれもこれも全部
リセットだ。
「次のニュースです。」
「先日午後11時頃、都内のアパートに住む男性が自宅で亡くなりました。」
「警察は事件の可能性も視野に入れて─────」
…………………………
僕のせいだ。
全部僕のせいだ。
これは
戒めだ──────
────そして今日
駅のホームは人で賑わい、耳を塞ぎたくなるような騒がしさが頭に響く。
以前来た時よりも煩く、周りが鬱陶しい。
そう思うのは、きっと君がもう居ない所為だ。
彼から貰ったマフラーで熱くなる目頭を覆う。
自分というのは、つくづく最低な奴だ。
君から貰った手編みのマフラーに、僕の涙が落ちる。
白い所為で、涙の跡が余計に目立つ。
気が付くと、僕は夜の海を前に、浜辺に立っていた。
「僕……僕ね……」
「君の事、好きだったよ。」
「友達としても、恋愛対象としても。」
───せめて、これだけは伝えておきたかった。
「でも、そんなこと言われても君は迷惑だろう?」
「……だから女の子と関係を持って、君のことを忘れようとした。」
「それが世間に望まれたカタチだから。」
そう返事の無い会話を続けながら、冷たい夜の海へと浸かる。
「………………馬鹿だよね」
「そんなことしたって、君を忘れることなんて出来ないのに。」
「それどころか、最終的には君を苦しめる結果を生んでしまった。」
君から貰った白くて柔らかいマフラーは、水を吸いすぎて薄汚く、重くなってしまった。
マフラーの重さに押しつぶされるように、体が海の底へと沈んでゆく。
水の中は苦しい……苦しいはずなのに、
その冷たさが、その息苦しさが君の心と似ていて
心地良さまで感じてしまう。
「………………僕が何か行動を起こしてたら、変わってたのかな……」
……否、
僕達は「友達」だ。
そんなことは起こる訳が無いのだ。
「……もし来世があるなら、」
「君には幸せになってほしい……」
僕はやっぱり欲張りだ。
君を陥れたくせに、君に幸せになってほしいだなんて。
心底自分が憎くて、気持ち悪くて………
「…………………ごめんね」
空に君が見えたような気がして手を伸ばしても、
その手には暖かくなった雪が落ちるだけで、夜空は君を見せてはくれない。
こんな時まで欲望が出てくる自分はどうかと思う。
けど………この欲を声に出していいなら─────
「来世でもし、逢えることが許されるなら」
「”友達”には、なりたくないなぁ………」
薄れゆく意識の中で、そんなことを思っただけだった。
END
コメント
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表現力と語彙力の塊過ぎて、目から滝のような量の塩水がぁぁぁ゛ッッッッ😭😭😭うぇぇぇぇんドイツゥゥいたりぃぃ!!幸せに、幸せになっておくれぇぇ!!
ぐあぁッッ(吐血)ドイイタってだけでもう好きなのに失恋系ときたら私の心臓がッ