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「上手くいったな」

「はい。セイさん凄いですね」

「くっ。今回は負けを認めるねっ!」

…一体何を競っているんだ?

「とりあえず、これで盗聴器も回収できるし、後は近くの飲食店で交代で盗聴するだけだな」

俺が提案した作戦(?)は、二重にした木箱に盗聴器を隠しておくというものだ。

カモフラージュの木箱の中身は砂糖と胡椒だ。

それを持たせたミランと聖奈さんを店に行かせて、『新進気鋭の素晴らしい商会様とお近づきになれるのなら安いものです!是非会頭様にお渡しください!』とかなんとか言わせて、木箱を置いてきてもらった。

木箱の中の砂糖と胡椒は、間仕切りされた箱に内張を貼って溢れないようにした。

瓶に入れて渡すと、瓶だけを取り出して木箱は倉庫行きだもんな……

木箱は商売で使うので、3日後に取りに伺うと伝えてもらった。

一先ずの期間は3日だ。

これで何も掴めなければ他の方法を取る。

盗聴の役目は2人になった。

別に俺がサボっているわけではない。

むしろ……

「じゃあ、セイくんはソーラーパネルの取り付けを頑張ってね!」

「気をつけて下さいね。家具職人である父では、あまり役に立てないと思いますので…」

流石に屋根に物を運ぶのに転移だけでは不安なので、バーンさんに手伝いをお願いした。

「3日以内で出来る様に頑張るよ…」

正直今から不安だが仕方ない。

盗聴器のバッテリーが切れる3日が勝負だ!

俺の方は盗聴器関係ないけど……







転移で2人と別れた俺は、バーンさんと土台の取り付けに入っていた。

「こんなもんを屋根に乗せるなんて、変わってるな」

知らない人から見たら、さぞ不思議な光景だろうな。

「まぁ、この家の屋根は丈夫だから耐えられるだろうけどな」

「そうですか。それは良かった」

こんなもんが寝室の天井を突き破って落ちてきたらビビるぞ……



1日目で土台を取り付けた。


2日目でパネルを取り付けた。


3日目で蓄電池までの電気工事を終わらせ た。





「良かった!じゃあ、後はコンセントを繋ぐだけかな?」

工事が終わり合流した後、2人に伝えたところで、聖奈さんから喜びの声が上がった。

2人はちゃんと木箱盗聴器を回収したようだ。

「他にも工事が必要だけど、概ねそんな感じだ」

「ありがとう!これで冷えたビールがこっちでも飲めるね!」

そうだ!俺はその為に、屋根で足を震わせながらも頑張れたんだ!

「ミランちゃんも美味しくて冷たいデザートがたくさん食べれるよ!」

「ホントですか!?ありがとうございます!セイさんっ!」

電気の偉大さを知ったミランが、今までで一番の感謝をくれた。

これまでしてきたことはデザート以下でしたか…?そうですか……

「それで私達の方なんだけど、少しおかしいの」

「もしかして地球が関係するのか?」

俺はずっと考えていた違和感を伝えた。

「な、なんで?!」

「ん?違っていたか?」

聖奈さんが焦っていたので、俺の考え過ぎだったかと思ったが……

「合ってるよ。多分商会の会頭と思わしき人物が、砂糖のことを『この世界にもこれだけの砂糖があったんだな』って言ってたの。

胡椒に関しても同じようなことをいっていたよ」

やはりか……

「なんでセイくんはそう思ったの?」

「店の名前だよ。メイブル・ウィンクルは、オランダ語で家具屋って意味だ」

「そうだったんだ。でも、それなら翻訳の能力ちからかもしれないよね?」

「俺だけにそう聞こえていたのならその可能性はあったけど、意味を知らない聖奈にもそう聞こえていたんだろ?

ならそれは家具屋って意味で使ったんじゃなく、店の名前として使っていたからこそ、そう聞こえたんじゃないかと思ったんだ」

「なるほど。確かに家具屋に家具屋って名前はつけないよね」

「それに家具屋だとしてもそれなら慣れ親しんだ日本語で家具屋と変換されないと違和感がありすぎるしな」

「よく知ってたね!流石セイくん!」

えっへん!と、言いたい所だが…実は最近暇な時に偶々調べていただけなんです……

自分が売ってる商品を検索してたら偶々……

家具売っててよかった……

「まあ、それは良いとして。実際の会頭はどんな人物なんだ?

オランダ人っぽいとか、日本人っぽいとか?」

「うーん。オランダ人の区別がつかないからわかんないけど、こっちの世界の人に見えたよ?

親もいるような口ぶりだったし」

「そうですね。私から見ても会頭はこの国の出身者で間違っていないと思いました」

ミランがそう感じるのならそうなのかもな。

「じゃあ何故、会頭はこの世界以外も知ってるようなことを言ったんだと思う?」

「セイくん。そこまできたら答えは一つじゃないかな?」

聖奈さんが人差し指を立てて聞いてきた。

「まさか…転生か?」

「うん。その可能性が高いと思うよ。本人にどの程度、前世の記憶があるのかはわからないけどね」

それはまずいな……

「セイくんの懸念もよくわかるよ。もし会頭が地球産のモノに固執したら、私達が危険ってことだよね?」

「そうだな。砂糖の出所を調べられたらバレるかもな」

「でも、大丈夫だよ。向こうは所詮転生だから。セイくんみたいに異世界間転移が出来るわけじゃないから、魔道具にだけ気をつけていれば良いと思うよ」

だが、相手は金持ちだ。金にモノを言わせて……

いかんいかん。マイナスな考えしか浮かばないぞ……

「もし、心配なら徹底的に潰せばいいしね!」

「いや…現時点で悪いことをしていないのに、それはな…」

「されてからじゃ遅いよ?ストーカーに襲われた私が言うのもなんだけどね」

いや、それはそれで説得力があるよ。

「それに向こうは白じゃなかったしね」

「ん?それはどういうことだ?」

俺の問いに答えてくれたのは、今まで静かにしていたミランだった。

「会頭は何故かは知りませんが、自分が権力を握ることに固執していました。

今の商会のやり方で困る人が沢山出ることもわかってしていました。

そして、この国で家具を独占販売出来た暁には、次は服を独占する予定のようです」

真っ黒やないかいっ!

俺も砂糖と塩を売ってはいるが、あくまで高級なモノとして売っている。

別に市場を独占しようとも思わないし、それで困る人が出たならウチで雇うくらいのつもりもある。

そもそもそんなものは売らないし、たいして売れない。

まあ長く言い訳したけど、要は俺基準の『悪か善』かが大切なのであって、その基準は人に推しはかれるモノじゃないからな。

ただ嫌いなんだ。人を態々わざわざ不幸に陥れるやり方が。

学生の時にもいたな。態々人の嫌がることをする奴が。

「バーンさんのことは関係ない。俺はそいつが嫌いだから破滅させる」

「珍しいね?セイくんが怒るなんて」

俺は怒っているのか?

「私のことを気遣ってくれているのですよね?ありがとうございます」

いや、気遣ってはいないな……

恥ずかしいから無視しよう。

「じゃあ、作戦会議しよっか?」

「それなんだけど、俺に考えがあるんだが聞いてくれるか?」

「何何!?」

「その商会に家具を売ろう」

「え?どういうことですか?」


二人に話したのはこういうことだ。

先ず、地球産の安い家具を同ギルで商会に売る。

そこで出たギルを使い、宝石や金を仕入れる。

それを売った円でまた家具を買い、商会に売る。

そうすれば少ない資金でも莫大な量の家具を手に入れて、商会の現金を吐き出すことができる。

懸念点といえば家具の値段だけど、流石に機械で作った大量生産品の方が安いので売れるはずだ。

もう一つの懸念点は、家具の構造や使われている部品で地球産がバレる可能性だが、バレたら逃げればいいし、逃げた後にでも他の方法を考えればいい。

それが成功すると、商会にはお荷物が残る。それは自社工場だ。

場所はこれから調べるが、大量生産する為の工場が必ずある。

それを商会が処分した時に、路頭に迷う大量の職人を俺が雇えばほぼ計画は完了だ。

奴には金と在庫のみの家具しか残らない。

後は金を奪えば規模がでかい分、勝手に破産ショートするだろう。

「お金を奪う方法は、家具の取引で行う前金かな?」

流石聖奈さん。言う前に言っちゃったよ……

俺の活躍が……

「そうだ。そこまでで十分な信用は出来ているだろう」

2人が理解と納得をしたところで、作戦の為の準備に向かう。

「私は待つだけなのでなんだか心苦しいです」

俺と聖奈さんは大量の家具を用意する為に、地球へと帰る。

「ミランちゃん。むしろ待つ人の方が大変だよ。

ごめんね。辛い思いをさせて」

何も出来ないのはつらいからなぁ。

「いえ…待っていますね」

ミランに見送られて、俺達は地球へと帰還した。






地球に戻った俺達は、ホームセンターや量販店で値段を調べてから大量の家具を買った。

ついでに異世界向こうの家で使う為の家電も、会社に届くように頼んだ。

俺は両親に宿はとったから当日楽しみにしとくように連絡を入れた。


用事が済み、異世界に戻った俺は、組み立てが必要な家具はとりあえずバーンさんの工房へと置かせてもらった。

置き手紙を添えて。


準備を終えた俺達は翌朝の行動に備えて就寝した。


「お月様。今日もありがとう」






〓〓〓〓〓〓〓あとがき〓〓〓〓〓〓〓

ちなみに作者はオランダ語はわかりませんし、オランダ人の知り合いもいません。

お近くのオランダ人の方。間違っていたら是非訂正を!!

〜ぼっちの月の神様の使徒〜

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