テラーノベル
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──────Sれいまり視点──────
私は、今回のルートであるSルートの物語に足をつけた。その瞬間、私の存在がこの世界の一員として登録される。だが、その前にこの世界の自分を殺さないといけない。まだ、九尾の前───妖狐の自分を。まだ妖力と呼ばれる力はあまりなく、私が今まで培った魔法を使えば殺すことも造作もないことである。物語通りであれば、この森にいるはずだ、と狙いを定めていざ、狩りに行く。
「ら〜ら〜♫」
どうやら鼻歌を歌いながら森の中を駆け回っているらしく、容易く見つけることができた。私は、油断することなく背後から奇襲を仕掛ける。自身にサイレントの魔法をかけて存在を消し、素早く上位魔法【紅蓮華】を放つ。
「ぁ゛ッ!?」
そんな短い断末魔の後にそいつはぽっくり亡くなる。死んだことを確認してから、私はその死体の化けの皮を被り、この物語中のルートの名前、【Sレイマリ】として数千年生きることへの覚悟を決める。そう、ここが私の一番の正念場。本命のルートである。これで無理だったら諦めた方がいい、と思うレベルにはここが私にとって最後の砦であった。
とりあえず今のうちに妖狐が使える技を体感しておく。技名を知っているだけでは本番は使えないし、理屈だけで妖力というものが使えるとも思わない。理屈よりも体感。自分さえできていればいいのだから言語化する必要も無い。私は妖狐として使える力を一通り使ってみることにした。
───よし。最後に大抵の人外の変化を終えて、私はいつもの姿にもどる。うん、やっぱりこの姿が一番いい。だけど…
「この狐の耳としっぽはなぁ…。」
そういいながら私の頭上に生えた異物───耳を触りながらそうつぶやく。悪魔の角と違って威厳も恐ろしさの欠片もなく、どちらかと言うと愛玩動物のような、親しみやすさすら感じるほどモフモフの耳が私の頭についていた。触れば触られている感覚がしっかりと会った。元々人間であった私からしたらこんな耳みたいなお飾りなんて若いやつがやるものだ。流石にこの年齢で、なおかつ自認人間の私からすれば恥ずかしいの一言に限る。だが、これがなければ人間と勘違いされて、森の妖怪や人外たちに勘違いされて殺されかけるのは困る。何故ならばほかのめめ村メンバーと合流するのはこの森であり、この森の奴らと仲良くしなければこの森から追い出されてしまうからだ。しばらくは私が妖狐であることを周知させてからこの耳をしまうべきだ。そう断じて私はしばらく森を漂流する。
さて、私はこの森についてもそりゃぁ覚えているわけで。で、そろそろガンマスさんが何故か森にいてここで出会うはずだ。私は物語通りに、いつもの散歩というていで、私はその森の角を曲がろうとしたとき──────
「───ぁ」
そう、黒髪の長髪の人が私の目の前にへたり込んできた。なぜだか赤と黒の服を身にまとった、森に合わないその人物こそ、ガンマスさんであった。このルートでは、顔を隠していないらしい。久々の素顔を拝んでやるかと、私は心配するふりをしてガンマスさんの顔を覗き込む。その瞬間私の意識は明るすぎる光に当てられたかのように真っ白になっていく。けれど、それでもなお、体が、目が、そのガンマスさんを覗くのをやめない。いや、私が見ているのはガンマスさんではなくその【瞳】であった。よくあるガンマスさんの瞳のように深紅の色ではあるのだが、その瞳の中央にどす黒く、闇を凝縮したかのような【光】が見えたのだ。感情で歪められた瞳は不安と焦りでいっぱいであるが、私はそれに対して心配の声をかけることなんてできず、ただ放心状態で、けれどすがるようにその瞳を見ていた。
私の身体の全てを、心を、行いを全て赦してくれるかのような、人を殺してしまった私の行いを許してくださるかのような、私の壊れきった心を全て元通りに直してくだるかのような、全身に溜まりきった穢れをその【瞳】を用いて浄化してくださるかのような、まるで、私の願いに応じて神様が舞い降りてきてくださったかのような───。
言葉には表しきれない幸福感と、救いを与えられたかのような解放感。私の悪い部分を全て剥がしとってくれて、綺麗な私を愛してくださるかのような、私が求めていたものを全てくれる、偉大な存在を目の当たりにしてるように感じる。
知っている。情報でガンマスの瞳を見たものに【救済(歪)】を与える、という能力を持っていることを。だからこそ瞳を興味本位でわざわざ覗き込んでみたのだが。けど、それを知っているのと、体感するのではわけが違う。それは想像以上だった。生きていく中でこれ以上の幸福はない、とすら思えるこの感情を全身いっぱいに取り込んでもゆるされて、私の罪すらも価値のあるものにしてくださるような、今までの無意味な足掻きを、認めてくださるような───。
「神…様。」
そう、このガンマスというお方を現す言葉は簡潔ながら、無欠である【神】というものこそ相応しかった。いや、神ですら失礼だ。このお方はそれ以上であり、それを超越するお方なのだと、私の細胞に至るまでが理解しつくし、納得し、承認してしまった。全身の力が抜けていくというのに、私はそのお方から目が離せなかった。心臓がバクバクとなり、もしかして恋?なんてやましい気持ちにすらなってしまうほどに私はこのお方に全てを捧げたいと思ってしまった。
知っている。この気持ちは能力によって塗りつぶされて、塗り替えられた偽りの考えであり、幸せだと。でも、私はそれでも。希望を抱いしてしまったから、求めていた救いを得てしまったから。【愛】を欲してしまったから。
だから、私がたとえどれほど歪になったとしても。私は、私の全てを、この方に全てを注ぎ込んでしまいたい。
誰も、誰も私のことを見向きもせず、助けもしてくれなかったのに、この方は意図せずとも私を救ってくださったのだ。私にできる最大限のことをしなければこのご恩は返せない。本命ルートだから?みんなの幸せ?───それがどうでもいいとすら思える。この方が幸せに過ごせるならば。私は脇役でもいい。みんなを救う、なんてこともしない。私は、この方だけに尽くす。だって、思い出してみろ。同じように他のやつにやったって裏切ってきたじゃないか。でも、この方は絶対に裏切らない。と、いうよりこの方の意思で裏切られたとしてもそれはそれで本望だ。私は、ただこの恩に報いたいだけなのだ、と自身で悟る。
こうして、私は本命のルートを容易く捨ててしまった。
ここで切ります!昨日投稿できなくてすみません!!いや、未だに私習い事やってまして、それが長引くとどうしても小説書き終わらないんですよね。
てことで今回はれいまりさんがガンマスさん中心に動いていた理由について語られましたね!本編でもれいまりさんは常にガンマスさん中心に動いてましたが、こういう理由だっていうのが書けてよかったです!…1年?2年ぶりの伏線回収、ですかね?あと数話でれいまり編が終わりになります!さて!れいまり編だけで80話行くんでしょうか?こわぁ…。
それでは!おつはる〜!
コメント
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ガンマスさんってそんな能力なんだ
ゆかボンド
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