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事務所へ付き、止血だけした傷に適切な処置を行う
幸い、この怪我の中走り回ったにも関わらず、特に後遺症などは無さそうだ
「さて、どうしよっか?
私はもう出ても良いと思うけど」
「そうだな…」
ハンスが顎に手を当て、考える仕草をする
「いや、今日はゆっくり休もう。
こんな戦争の真っ最中に俺らを探してる暇ないだろうしな」
「分かった」
その言葉通り、今日の残りは休息に使った
私は目を閉じて眠ろうとするが、頭の中で今日の光景を思い出してしまう。
今まで聞いたことも見たこともないほどの人間の絶叫、怒り、狂気に人間の首を落とす感覚
全てが今日一日で起こったことであり、それらの記憶が眠りを妨げるのだ
だが
──スミレ!!!!
──スミレ…大丈夫…っか?
──失礼するぞ
「……ふふ」
…気が付けばぐっすり眠れていたようで、昨日の疲れが軽くなっていた
ハンスはもう起きていたようで、私を見て微笑む
「おはよう、スミレ。
よく寝れたか? 」
「うん。お陰様で」
「?」
何故か固まっているハンスを横目に荷物をまとめる
…と言ってもこの事務所には大した物もなく、すぐに終わってしまった
私達は事務所を後にした───
───数年が経った
私達は事務所を離れ、裏路地の隅で生きていた
事務所に居た頃よりかは質素な暮らしで、一日一日を生きることに必死だが、それでも前のように死にたくならない
生きる理由が出来たから
「スミレ、これ見てみろ」
「?」
ハンスが何か手渡してきた
…新聞だ、数日前に発行された物のようで、 その表紙にデカデカと
『煙戦争終結。 L社G社倒産』
と書いてあった
(…負けたんだ)
…もし私達がまだ戦っていたら…
そんなありもしないことを考える
(…ま、その前に死んでるか)
「逃げといて正解だったね」
その時
「…見つけたぞぉ!!!
クソガキ共!!!」
私とハンスは振り返る
そこには何処かで見たことがあるような傷跡塗れの、そして敗戦したL社の服を着た男が居た
「俺らL社は少し前まで殺して、殺して殺して殺して、殺しまくっていた!!
同じ同期は全員死んで、俺もこんな掃き溜めまで来ちまった…」
男は続ける
「だが!!!
何早々と逃げ出したお前らがのうのうと生きてやがんだ!!!
何も苦労してねぇお前らは不幸になんなきゃいけねぇんだよ!!」
…話を聞く限り、L社の残党が逆恨みしてきたようだ
心底面倒だと思う
「…それで俺らを恨むのは違うだろ?俺らは生きるのに必死だっただ…」
「黙れェ!!! 」
話を聞く気は無いようだ
私とハンスは武器を取り出そうとすると、男の後ろからうじゃうじゃと身体の一部が虫になった人間が出てくる
…G社の残党のようだ
「ここに居る奴らは全員最後まで戦った仲間達だ!!!
お前らと違ってな!!! 」
…全員満身創痍だ
とはいえこの人数に勝てるとも思えない
私とハンスは言葉を交わすことなく、同時にに逃げ出した
「おい!!!また逃げる気か!!!
…クソッ!!逃がすな!!!」
私達は逃げ続けた
ただよっぽど頭にきているのか、意地でも追いかけてくる
それでも逃げ続けると、見覚えのある所まで来てしまった
数年ぶりに見る事務所は何も変わっておらず、誰かが新たに使った形跡もない
ハンスも思う所があるようで、事務所を見つめていた
「やべ」
ふと後ろを見れば両脚がバッタのようになった男が追いかけてきている
正直もうしんどいが、私達は更に駆ける
裏路地まで抜け、巣を通り抜け、ついにL社まで来てしまった
巣はL社が倒産したことで機能を失い、裏路地と同程度まで荒んでいた
「はぁっ…はぁっ…」
「クソっ…あいつらもしつこいな…」
あいつらも多少息は切らしつつも、問題なく走ってくる
こちらはもう限界だというのに
仮にも翼職員だということを思い知らされる
(流石に…まずい)
「おいおいおい!!!
俺らがただの死に損ないだとでも思ったか?!
お前らクソガキと違ってな、何回も死線くぐり抜けてきてんだよ!!!」
そう言い走ってきた男に背を向け、更に駆ける
(そういえば…ちょうどこの先がL社のあった所で…)
そう思った所で遅かった
最初に別の方向へ逃げれていれば
事務所に逃げ込んでいれば
L社周辺へ行かなければ
こんな事にはならなかったかもしれない
そうして、2人は見てしまう
煙の根源を…
──L社の特異点を