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なんだあれは
足が止まり、息を飲み、
理解する
「…ぅ」
腹からこみ上げてくる物を抑えられず、吐き出してしまう
全身に鳥肌が立ち
あまりの嫌悪感で身体が震える
(あれはこの世の物なの…?
■■■が■■■■で…)
思考のたびに吐き気が襲う
想像も出来ないような『あれ』に対する感情で頭の中がぐちゃぐちゃになる
ふと隣を見ると、同じく吐き気を抑えるハンスがただ立ち尽くして…
その後ろに…
鎌を振り抜こうとする男の姿が見えた
「死ねェ!!!!」
体が脊髄で動き、同時に走り出す
吐き気も
震えも
嫌悪感も、全てを無視して
その人のために
そして
そして
───そして。
間一髪間に合い、勢いのままハンスの事を思いっ切り押した
男の鎌はそのまま振るわれ、
私の身体が真っ二つに裂かれる
私の身体が宙に浮く
そして『あれ』へ向かって吸い込まれるように落ちていく
「──っ!スミレ!!!!!」
我に返ったハンスは咄嗟に手を伸ばすが、すんでの所で届かず
2つになったスミレは落ちてゆく
落ちてゆくスミレはハンスと目が合う。
絶望 恐怖 痛み 嫌悪感
その中でスミレが吐いた言葉は…
「逃げて」
彼のための言葉だった
ハンスはその場で動かず
彼女へ届かなかった手を見つめ、嘆く
「スミレ」
最期まで自分を想ってくれた彼女の名を
「…スミレ」
自分が助けられなかった彼女の名を
「……スミレ」
お前が殺した
彼女の名を
「…仲間が死んだことがそこまでショックか?
だが俺らはそんなもん何度も …」
男も『それ』を目視し固まる
「な…んだよ!!あれは!!
俺らはあんなもんのために殺しあ」
ハンスが男の顔面を殴る
殴る
殴る
殴る
殴る
殴る
動かなくなった男に吐瀉物をぶちまける
スミレが『あれ』に飲み込まれる瞬間が頭の中で反芻する
後からぞろぞろとやって来た奴らと目が合う
ハンスは身体を向ける
恐らく今殺し合えば確実に命を落とすだろう
だが、それは止まる理由にはならない
しかし、彼女の最期の言葉がまた反芻する
「逃げて」
彼女の本心
自分を庇い、最後の最期まで自分の事を生かそうとしてくれた彼女の最期の言葉
「…………」
静寂
今まで、ましてや戦争中ですら向けられなかった視線で睨まれG社の残党が怯む
ハンスは背を向け、逃げ出した
現状から
現実から
何もかもから逃げるように