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「そう、隣りの女がくれたんだ……何ていったっけ。あのクソビッチ。同じ袋、山ほど持ってた、キモイ」
(──キモイって言われた……)
隣りの幾ヶ瀬家を覗いているアタシ、ちょっと怯む。
有夏チャンの「キモイ」は意外とクルな、傷付くな……。
まぁね。
壁に穴あけて隣室のゲイカップルを覗いてるアタシは、キモイ以外の何者でもないわな。
「ほんとキモイね! あの女、コソコソ有夏に近付きやがって。袋見せてよ。変な物が混ざったりしてないよね。口にしても大丈夫なやつなの?」
幾ヶ瀬の言い草もあんまりだ。
じっくり見ろよ!
きれいに包装されてんだろうが。
工場出荷時の姿のままだよ。
アタシにってか、そりゃビスコに失礼だろが!
さぁ、有夏チャンよ。気にせず菓子を食ってくれ。
期限はギリだけどな。
アンタにとっちゃビスコは立派な栄養源なんだろ。
食っとかねぇと、ヘンタイメガネのねちっこい攻めに耐えられねぇぞ?
まぁ、アタシとしちゃ耐え切れなくてガクブルってる有夏チャン拝ませてもらうのも、また至福なんだけどよ。ハァハァ。
イカンイカン。
アタシまでこりゃ末期だよ。
「あの女……クソビッチめ。こないだなんて期限切れのスナック菓子を有夏に食べさせやがって。地獄の底に叩き落としてやりたいわ!」
そんなんで地獄──しかも底にまで落とされちゃたまんねぇよ。
(あと、アタシの名前はクソビッチじゃねぇ!)
ヘンタイメガネ、何かすごい怒ってる。
紙袋ひっくり返して、床にビスコぶちまけて賞味期限を調べてる。
ギリって言ったって期限まで2週間近くあるものだし、それにたとえ少々過ぎててもアタシなら平気なんだけどな。
気にする人もいるけど、ちょっとくらい過ぎたって傷むものでもないし美味しく食べられるんだけどな。
「有夏に工場で大量生産された物なんて食べさせたくないぃぃ!」
いやいや有夏チャン、そういうの大好きだよ?
へたすりゃアンタの作った食事よりもお菓子食べてる方が多いよ?
「有夏には厳選した原料を、俺がイチから作ったものを口にしてほしいのにぃぃ!」
ヘンタイメガネ、発狂している。
アタシも大概だけど、いやはやアンタのヤバさには負けるわ。
種類が違うもん。
「幾ヶ瀬、何怒ってんだよ」
床に正座したまま頭を抱えたヘンタイメガネの膝の上に、有夏チャンが腰を落とした。
しなやかな腕が幾ヶ瀬の首筋に回される。
「怒んなよ。ビスコ万能だって。おいしくてつよくなる、ね?」
早速開けたパックから1枚口にくわえて有夏チャン、幾ヶ瀬の唇に自らのソレを寄せた。
パクリとビスコを口に挟んで、触れた唇を吸う幾ヶ瀬。
奴にとってはビスコよりも有夏チャンの唇の方がずっと甘いのだろう。
ちぷちぷ──いやらしい音。
舌を絡め、互いの口の中に侵入しては抜いて。
食べてるんだかキスしてるんだか。
耳たぶまで真っ赤に染めて、チクショウ。カワイイな、有夏チャンよ!
「有夏……今日は優しくしたい」
「ん。して」
低い声で有夏が笑った。
首筋が赤く色づく。
合わせた唇は離れない。
口の中を舌が這い回るのが、頬のふくらみから見てとれる。
トロリ。
2人の全身からは力が抜けていた。
舌を絡める音だけが聞こえる。
アタシは計ってみた。
コイツら、30分繰り返し繰り返し甘ったるいキスをしてやがった。
互いに焦らしに焦らしたせいか、パンツ下ろしてからは3分だったけどな。
「隣りのアタシはクソビッチ!?」完
「中世ヨーロッパの男娼館で妄想シテみる」につづく